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25.【7日目 -6-】
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【7日目 -6-】
「みんな来てくれてありがとう。実は、緊急で全員に伝えたい事があって呼んだんだ。」
シーンと静まりかえる中、僕は緊張しながら話を始めた。
「今後は、なるべく1人を避けて過ごして欲しい。理由は2つある。1つは、ベーンケイル人にとってルリカルラ人は伴侶にしたい対象として人気だと知ったこと。そしてもう1つは、すでに襲われた被害者がいるということ。」
仲間達に一斉にどよめきが走り、キーダは顔を真っ青にして、なぜ話すんだと裏切られたような目で僕を見ていた。
「サキーラ。僕がジムのシャワー室で倒れたのは知っているよな?」
「…え、ええ。」
不安そうに僕の話を聞くサキーラ。
「僕はその時、未遂だが、ベナーデン隊長に襲われていたんだ。」
「…っ!?」
サキーラは、まさかという表情で僕を見ていた。
「シャワー室の前に部下を配置して、他に誰も入れないようにしていたらしい。でも彼らの誤算は、あの時、たまたまカラン様が見回りでジムに立ち寄った事。もしカラン様が来てくれなければ、僕はそのままベナーデン隊長に犯されていただろう。」
「……え?…では、もしや昨日の、医務室へネモを連れて行こうとしたのは、彼の優しさからではなく…?」
「そうだ。もしあのままベナーデン隊長に連れて行かれたら、間違いなく僕は……。それに、言うことを聞かなければ、みんなにシャワー室でイタズラされた事をバラすと脅されただろうしね。」
「…そ、そんな…!?」
サキーラは絶望した表情をしていた。
僕に医務室へ連れてってもらえと促し、彼に感謝までしていたであろうサキーラは、真実を知って罪悪感を抱いたに違いない。
「サキーラのせいじゃない。あの時も、階級トップのカラン様が連れて行ってくれなければ、僕はずっとベナーデン隊長に弱みを握られたまま、従っていたかもしれない。誰が敵で誰が味方なのか分からなくて。信じられなくて。みんなに知られたくなくて。誰にも、助けてと叫べない状態だったから…。」
「ネモ…。」
苦しそうに僕を見たサキーラは、すぐに下を向き、唇を噛んで震えていた。
「でも結局のところ、僕はカラン様と関係を持ってしまった。」
サキーラ達はぎょっとした表情をして、僕とカランを見ていた。
「昨日、医務室からの帰りに、カラン様の部屋で少し話をすることにしたんだ。部屋に着くと、そこには誰が用意したかは分からないけど、タイミングよく飲み物と夕食がセッティングされていたんだ。喉も渇いていたし、すぐに2人で飲み始めてさ。でも、お互いが変だって、飲み物の中に強い媚薬が入っているって、わりとすぐに気づいたんだ。だから、急いで部屋から出ようとしたんだけど、カラン様の部屋なのに、その時はカラン様のIDでも扉のロックが外れなかった。そうこうしている内に、2人とも耐えきれなくなってそのまま……。誰が黒幕かは分からない。でも、明らかに誰かに嵌められたんだ。」
カランが僕を見て驚いた顔をしているのがわかった。医務官達のことを言わずに話を作ったからだろう。だが、お互いが強制的に発情させられて抱き合ったことは本当だ。しかも嵌められて。
仲間達を見たが、彼らは侮蔑的な表情はせずに、じっと僕の話を聞いてくれていた。そのことに少し安堵しつつ、話を続けた。
「それにベーンケイルでは、一度誰かに抱かれた者は一生メスとして扱われるらしい。しかも一妻多夫制だから、自分も夫になれると、そのメスに手を出しやすくなるって話だ。僕らのように一夫一婦制ではない。男達に共有されるんだ。僕らの意思は関係なく。もし、既に経験があると周りにバレたら、恐らく襲われる確率は格段にあがるだろう。」
これには仲間達も初耳だったのか、全員血の気が引いたような顔になっていた。キーダにいたっては、もう倒れそうなくらい絶望した表情をしている。
「…俺も、ついさっきまで襲われてたんだよ。」
ポツリとハゼリが呟いた。
「クロント、お前があの部屋で待ってろっていうからさ。」
ハゼリは射殺すようにクロントを見た。
クロントはビクッと体を揺らし、顔を真っ青にして怯えている。
「お、俺は、俺はそんなつもりじゃっ!だって…俺が戻ったら…あんな…あんな事になってるなんて…ッ」
「じゃあ何か?お前が部屋を出てからものの数分で、都合よくあの大人数が入って来たって?」
ハゼリはクロントが嵌めたのだと思っているようで、すごい迫力でクロントに問い詰めている。
「ネモが…。カラン様達が助けに来てくれるまで、ずっと…ずっと!俺は相手をさせられてたんだぞ!あいつらに!入れ替わり立ち替わり、何度も、何度もっ!!」
泣きながら、最後は絶叫しながら、痛いくらいの気持ちが溢れ出す。
クロントも泣きながら、立ち上がってハゼリと向き合った。
「ご、ごめん、ハゼリ。でも、俺は決して君を嵌めたわけじゃない!それは信じてくれ!ただ、俺が戻って来た時、君が襲われているのを見て…怖くて…俺、逃げたんだ。あの人数で。もしも俺の存在に気づいたら、俺も…。だから…君を見捨てた。本当にごめん…ごめんよぉっ。」
嗚咽を漏らしながら、深々と頭を下げてハゼリに謝罪した。
胸がズキリとした。
僕も…クロントと同じだ。
あの時、カランと出会わなければ、あのまま見捨ててしまっていたかもしれない。
我が身可愛さに、逃げた事に変わりはないのだ。
カランがゆっくりと立ち上がった。
「こんな状況になってしまったのは私のせいであって、君たちのせいでは決してない。被害に遭われた者達に心から謝罪させてほしい。本当に申し訳ない。」
カランが僕らに頭を下げて謝罪すると、他のベーンケイル人も急いで立ち上がり、同じく頭を下げて謝罪してくれた。
「こちらの統制がとれていないばかりか、取り締まる側の隊長クラスまでが襲うという暴挙だ。私も、不覚とはいえネモを傷つけてしまった。そして、他にも被害が出ている。謝って済む問題ではないのは重々承知しているが、必ず償いと、これからの対策で責任を果たしていくと約束する。」
真剣で深く、凛と通る声に、僕も仲間達も安心感に包まれたのがわかった。
「明日、迅速にシステム変更等を行い、明後日には全員がサファイア第9小隊への配属を完了させる運びとする。そして、今後は必ず2名以上での行動、及び、明後日以降は食堂や娯楽エリアから自室までの間を、我々の執行部隊が護衛させてもらう。」
「あ、あの…なぜ、その、全員サファイアに配属なんですか?サファイアなら本当に襲われないんですか?」
シトリン第2小隊、キーダの相棒であるシャウゼンが、恐る恐る手を挙げて、不安そうにカランを見た。
「ああ。その事についてだが、サファイアの第9小隊は、ここにいるアダンとセイロン以外は既に伴侶がいる者で構成されている。我々ベーンケイル人は、生涯にたった1人しか愛せない星のもとに生まれ、その相手以外とは体を繋げたいとは思わない。それにここの隊長と副隊長も夫夫だから、きちんと対応するはずだ。そうだな?」
ジュームとフリジンを見て確認を取るカランに、2人共敬礼して答える。
「はっ。もちろんであります!ルリカルラよりお越しの皆様を、必ずやお守りすると誓います!」
「それにしても…まさか他の隊長達まで自らの欲に負けて強引にコトにおよぶとは。紳士の風上にも置けませんね。相手を愛しているからこそ、一層大切にしたいもの。ねえ?」
「……こっちを見るな…!」
ジューム隊長は目を閉じて顔を背けるが、その頬は赤く染まっていた。
おそらく仲間達が驚いているのは、2人が夫夫という事実よりも、強面の隊長が優男の副隊長の前だと乙女化するのを目の当たりにしたからだと思う。
「では、申し訳ないが、急ピッチでシステムを変更し、執行部隊にも説明を行ったり、配置の変更をする為、1日だけ待って欲しい。明日、慈愛の同胞達は丸1日休日とする。もし弱みを握られて呼び出しをされても、応じる必要はない。私にその旨を報告するのみで大丈夫だ。あとはこちらで対処する。必ず2名以上の行動、何かあれば直ちにここにいるメンバーに助けを求めるように。」
カランの真摯な言葉に、みな安心したようにホッとした表情を見せた。取り敢えずこれで大丈夫だ。何とかここから1年が平和に過ぎる事を願うばかりだ。
「みんな来てくれてありがとう。実は、緊急で全員に伝えたい事があって呼んだんだ。」
シーンと静まりかえる中、僕は緊張しながら話を始めた。
「今後は、なるべく1人を避けて過ごして欲しい。理由は2つある。1つは、ベーンケイル人にとってルリカルラ人は伴侶にしたい対象として人気だと知ったこと。そしてもう1つは、すでに襲われた被害者がいるということ。」
仲間達に一斉にどよめきが走り、キーダは顔を真っ青にして、なぜ話すんだと裏切られたような目で僕を見ていた。
「サキーラ。僕がジムのシャワー室で倒れたのは知っているよな?」
「…え、ええ。」
不安そうに僕の話を聞くサキーラ。
「僕はその時、未遂だが、ベナーデン隊長に襲われていたんだ。」
「…っ!?」
サキーラは、まさかという表情で僕を見ていた。
「シャワー室の前に部下を配置して、他に誰も入れないようにしていたらしい。でも彼らの誤算は、あの時、たまたまカラン様が見回りでジムに立ち寄った事。もしカラン様が来てくれなければ、僕はそのままベナーデン隊長に犯されていただろう。」
「……え?…では、もしや昨日の、医務室へネモを連れて行こうとしたのは、彼の優しさからではなく…?」
「そうだ。もしあのままベナーデン隊長に連れて行かれたら、間違いなく僕は……。それに、言うことを聞かなければ、みんなにシャワー室でイタズラされた事をバラすと脅されただろうしね。」
「…そ、そんな…!?」
サキーラは絶望した表情をしていた。
僕に医務室へ連れてってもらえと促し、彼に感謝までしていたであろうサキーラは、真実を知って罪悪感を抱いたに違いない。
「サキーラのせいじゃない。あの時も、階級トップのカラン様が連れて行ってくれなければ、僕はずっとベナーデン隊長に弱みを握られたまま、従っていたかもしれない。誰が敵で誰が味方なのか分からなくて。信じられなくて。みんなに知られたくなくて。誰にも、助けてと叫べない状態だったから…。」
「ネモ…。」
苦しそうに僕を見たサキーラは、すぐに下を向き、唇を噛んで震えていた。
「でも結局のところ、僕はカラン様と関係を持ってしまった。」
サキーラ達はぎょっとした表情をして、僕とカランを見ていた。
「昨日、医務室からの帰りに、カラン様の部屋で少し話をすることにしたんだ。部屋に着くと、そこには誰が用意したかは分からないけど、タイミングよく飲み物と夕食がセッティングされていたんだ。喉も渇いていたし、すぐに2人で飲み始めてさ。でも、お互いが変だって、飲み物の中に強い媚薬が入っているって、わりとすぐに気づいたんだ。だから、急いで部屋から出ようとしたんだけど、カラン様の部屋なのに、その時はカラン様のIDでも扉のロックが外れなかった。そうこうしている内に、2人とも耐えきれなくなってそのまま……。誰が黒幕かは分からない。でも、明らかに誰かに嵌められたんだ。」
カランが僕を見て驚いた顔をしているのがわかった。医務官達のことを言わずに話を作ったからだろう。だが、お互いが強制的に発情させられて抱き合ったことは本当だ。しかも嵌められて。
仲間達を見たが、彼らは侮蔑的な表情はせずに、じっと僕の話を聞いてくれていた。そのことに少し安堵しつつ、話を続けた。
「それにベーンケイルでは、一度誰かに抱かれた者は一生メスとして扱われるらしい。しかも一妻多夫制だから、自分も夫になれると、そのメスに手を出しやすくなるって話だ。僕らのように一夫一婦制ではない。男達に共有されるんだ。僕らの意思は関係なく。もし、既に経験があると周りにバレたら、恐らく襲われる確率は格段にあがるだろう。」
これには仲間達も初耳だったのか、全員血の気が引いたような顔になっていた。キーダにいたっては、もう倒れそうなくらい絶望した表情をしている。
「…俺も、ついさっきまで襲われてたんだよ。」
ポツリとハゼリが呟いた。
「クロント、お前があの部屋で待ってろっていうからさ。」
ハゼリは射殺すようにクロントを見た。
クロントはビクッと体を揺らし、顔を真っ青にして怯えている。
「お、俺は、俺はそんなつもりじゃっ!だって…俺が戻ったら…あんな…あんな事になってるなんて…ッ」
「じゃあ何か?お前が部屋を出てからものの数分で、都合よくあの大人数が入って来たって?」
ハゼリはクロントが嵌めたのだと思っているようで、すごい迫力でクロントに問い詰めている。
「ネモが…。カラン様達が助けに来てくれるまで、ずっと…ずっと!俺は相手をさせられてたんだぞ!あいつらに!入れ替わり立ち替わり、何度も、何度もっ!!」
泣きながら、最後は絶叫しながら、痛いくらいの気持ちが溢れ出す。
クロントも泣きながら、立ち上がってハゼリと向き合った。
「ご、ごめん、ハゼリ。でも、俺は決して君を嵌めたわけじゃない!それは信じてくれ!ただ、俺が戻って来た時、君が襲われているのを見て…怖くて…俺、逃げたんだ。あの人数で。もしも俺の存在に気づいたら、俺も…。だから…君を見捨てた。本当にごめん…ごめんよぉっ。」
嗚咽を漏らしながら、深々と頭を下げてハゼリに謝罪した。
胸がズキリとした。
僕も…クロントと同じだ。
あの時、カランと出会わなければ、あのまま見捨ててしまっていたかもしれない。
我が身可愛さに、逃げた事に変わりはないのだ。
カランがゆっくりと立ち上がった。
「こんな状況になってしまったのは私のせいであって、君たちのせいでは決してない。被害に遭われた者達に心から謝罪させてほしい。本当に申し訳ない。」
カランが僕らに頭を下げて謝罪すると、他のベーンケイル人も急いで立ち上がり、同じく頭を下げて謝罪してくれた。
「こちらの統制がとれていないばかりか、取り締まる側の隊長クラスまでが襲うという暴挙だ。私も、不覚とはいえネモを傷つけてしまった。そして、他にも被害が出ている。謝って済む問題ではないのは重々承知しているが、必ず償いと、これからの対策で責任を果たしていくと約束する。」
真剣で深く、凛と通る声に、僕も仲間達も安心感に包まれたのがわかった。
「明日、迅速にシステム変更等を行い、明後日には全員がサファイア第9小隊への配属を完了させる運びとする。そして、今後は必ず2名以上での行動、及び、明後日以降は食堂や娯楽エリアから自室までの間を、我々の執行部隊が護衛させてもらう。」
「あ、あの…なぜ、その、全員サファイアに配属なんですか?サファイアなら本当に襲われないんですか?」
シトリン第2小隊、キーダの相棒であるシャウゼンが、恐る恐る手を挙げて、不安そうにカランを見た。
「ああ。その事についてだが、サファイアの第9小隊は、ここにいるアダンとセイロン以外は既に伴侶がいる者で構成されている。我々ベーンケイル人は、生涯にたった1人しか愛せない星のもとに生まれ、その相手以外とは体を繋げたいとは思わない。それにここの隊長と副隊長も夫夫だから、きちんと対応するはずだ。そうだな?」
ジュームとフリジンを見て確認を取るカランに、2人共敬礼して答える。
「はっ。もちろんであります!ルリカルラよりお越しの皆様を、必ずやお守りすると誓います!」
「それにしても…まさか他の隊長達まで自らの欲に負けて強引にコトにおよぶとは。紳士の風上にも置けませんね。相手を愛しているからこそ、一層大切にしたいもの。ねえ?」
「……こっちを見るな…!」
ジューム隊長は目を閉じて顔を背けるが、その頬は赤く染まっていた。
おそらく仲間達が驚いているのは、2人が夫夫という事実よりも、強面の隊長が優男の副隊長の前だと乙女化するのを目の当たりにしたからだと思う。
「では、申し訳ないが、急ピッチでシステムを変更し、執行部隊にも説明を行ったり、配置の変更をする為、1日だけ待って欲しい。明日、慈愛の同胞達は丸1日休日とする。もし弱みを握られて呼び出しをされても、応じる必要はない。私にその旨を報告するのみで大丈夫だ。あとはこちらで対処する。必ず2名以上の行動、何かあれば直ちにここにいるメンバーに助けを求めるように。」
カランの真摯な言葉に、みな安心したようにホッとした表情を見せた。取り敢えずこれで大丈夫だ。何とかここから1年が平和に過ぎる事を願うばかりだ。
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