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第一章 恩人

恩人

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目が覚めると見知らぬ天井が見えた

(どこだ…ここは?)

そう思いつつゆっくり体を起こすと

「あっ、目が覚めたんですね!」

声のする方へ顔を向けるとそこには
160cm前半ぐらいの金髪の少女が顔を覗いていた

「誰だ?」
「あ、すみませんっ私ゼシカ・フィーナスと言います。ゼシカと呼んでください」

彼女はそう言うとニッコリと微笑んだ

「あなたの名前は?」

ゼシカにそう聞かれ答えようと思ったが自分の名前が無いことに気づく
ここで適当な名前を言ってもいいが私はそうはしなかった

「私は名前が無いんだ」
「え、そうなんですか」
「だから君が名前をくれないかい?初めて会ったばかりで申し訳ないが」
「い、いいんですか」
「構わない、それにここに私を運んできてくれたのは君だろう?確か昨日は森の中で倒れたからな」
「わかりました、その代わり!さっきも言ったようにゼシカって呼んでください!」
「初対面の、ましてや私を保護してくれた者を呼び捨てにはできんからな」

しばらく考えて

「ゼシカ嬢、なんてのはどうだろうか」
「そっ、そんなの恥ずかしいです…」
と、赤面しながら言う

「でも、なんだか嬉しいです」
と、微笑む

彼女の笑顔は素敵だと思った

「名前ですが…ジス!ジス・フィーナスと言うのはどうでしょう?」

うむ、ジス…か
いい響きだ

「ああ、とても気に入ったよありがとう
ところでフィーナスっていうのは…」
「はい、私と一緒ですよ。もしかして嫌…ですか…」
「いや、そういう訳ではない。少し気になっただけだ」
「そうだったんですか。あ、そうそうジスさんに聞きたいことが」
「なんだ?それと呼び捨てで構わない」
「ではジス、なんであんな森の深層付近で倒れていたのですか?目立った外傷はなかったですから魔物に襲われた訳ではないでしょうし…」
「ああ、それは


ぐぅぅぅぅぅぅぅ


「…ふふっ」
「…まぁそういうことだ」
「わかりました。それじゃあご飯にしましょう」
「何から何までありがとう」
「いえいえ」

そうして出てきたのは、パンと温かなスープであった

「あぁ~、美味しい」
「それは良かった」

決して豪華とは呼べない食事、だがそれでも腹を満たすのには十分だった


出された食事を食べながらいろんなことを聞いた、この森をグィーネの森ということ、周りの国々のこと、ゼシカ嬢がギルドという組合に入っていること、ギルドの仕組みのこと、この家がギルドの作ったってセーフハウスと呼ばれるものだということなどだ

ちなみに私達がいる国をアドミナス王国というそうだ

そしてギルドとは、
住民などが依頼を出しギルドに属する者、冒険者達がそれを解決し報酬を貰うということを行う場所だそうだ。ギルドは国には属さず独立した存在らしい。うむ興味深いな


そんな話をしているうちに食べ終わった
「「ご馳走様」」
「ところでジスに聞きたいことがあるんだけど」
「なんだ」
「ジスはなんであんなところにいたの?グィーネの森は浅い場所なら危険は少ないけど深くなるほど魔物も強くなり危険なんだ。もう一度聞くけどなんで深層近くにいたの?」
「私にもわからない。気づいたら暗い森の中だった。そして歩いているうちに明るい場所へ出たんだが腹が減ってしまって現在に至るという訳だ」
「ジスも分からないんじゃ仕方ないね」
「そんなんでいいのか?」
「わからないことを聞いたって仕方ないしね」
「なるほど、ところで私からも質問をいいか?」
「もちろん」
「なんでゼシカ嬢は私を助けてくれたんだ?私が悪人かもしれなかったのに…何故?」
「私なんとなくわかるんだ、いい人と悪い人の違いが。まぁ乙女の勘ってやつよ。それに…」
「それに?」
「困っている人がいたら助けるのは当たり前でしょ?」
と、笑顔を見せながら言った

その時私は決めた

ゼシカ嬢は私を助けてくれたから恩を返そうと

ゼシカ嬢の笑顔を守るために力を使おうと

ゼシカ嬢が恐れないよう私の正体を隠しておこうと、決めたのであった


ヒロインのゼシカちゃん登場です
今後の展開に期待です


設定などガバガバかもしれないですが大目に見てもらえれば幸いです
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