記憶も記録もありません…全てを消された放浪者(わたし)は、わけもわからずスローライフしてます❗️

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38話

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 38:「静かな覚醒」

ライラとエルドはグレインヒル村での新しい生活を始めて数日が経った。村の人々は二人を受け入れ、穏やかな日常の中でライラは少しずつ記憶を失った自分自身を見つめ直す時間を得ていた。

ある日の朝、ライラは村の広場で古びた看板を見つける。それは、この村の遥か昔の出来事を記録したもので、かすれて読めなくなった文字が多いものの、ところどころに興味深い内容が残されていた。

「……この村は、過去に多くの旅人を救ってきたんだね。」ライラは看板を見つめながらつぶやく。

「この村はただの小さな村じゃない気がする。」隣にいたエルドが静かに言った。「何か、大きな秘密が隠されているのかもしれないな。」

不思議な発見
その日の午後、ライラは村の子どもたちと一緒に遊ぶ約束をしていた。彼らに誘われ、村の裏手にある森の中へ向かう。森の奥には小さな洞窟があり、そこは子どもたちにとっての「秘密基地」だという。

「ここ、すごいね! 隠れるのにぴったり。」ライラは子どもたちに微笑みながら洞窟の中を覗き込んだ。

すると、洞窟の奥に一つの石碑が立っているのが目に入った。その石碑には古代文字が刻まれており、ライラがかつて命の大樹で見た文字と同じものだった。

「これは……?」ライラは思わず石碑に近づき、文字を指でなぞる。

その瞬間、彼女の中に一瞬だけ閃光のような記憶が蘇る。広大な大地を旅する自分と、多くの仲間たち。そして、同じような石碑をいくつも訪れていたこと――。

「ライラ、大丈夫か?」エルドの声が現実に引き戻す。

「……この石碑、何かを思い出させる。きっと、私の旅の一部だったんだ。」

村の古老の話
ライラとエルドはその石碑について村の古老に尋ねることにした。古老は、石碑の存在を知っているかのように頷きながら話し始めた。

「それは、この地に古くから伝わる『再生の巡礼』に関係しているのだよ。」

「再生の巡礼?」ライラが首を傾げると、古老は静かに続けた。

「失われた記憶や魂を癒すための旅。それは、この世界の各地に存在する石碑を巡ることで成し遂げられるという伝説だ。だが、その詳細を知る者は今は誰もいない。」

「じゃあ、その巡礼を終えたら、私は記憶を取り戻せるのかな?」ライラの目には希望の光が宿っていた。

古老は微笑みながらも慎重に答えた。「それはわからない。だが、その石碑が何らかの導きになることは確かだろう。」

新たな旅路の決意
その夜、ライラはエルドと共に村の広場で静かに星空を眺めていた。

「巡礼か……。これが私の失われた記憶を取り戻す手がかりになるかもしれない。」ライラは遠くの星を見つめながら呟いた。

「お前が決めたことなら、俺はついていく。」エルドは力強く答えた。「でも、無理はするなよ。この村で少しずつ準備を整えてからでもいい。」

「ありがとう、エルド。でも、この石碑を見た時、私は確信したんだ。この巡礼は私が生きる意味を見つけるためのものだって。」

彼女の声には揺るぎない決意が込められていた。

次なる目的地
翌朝、ライラとエルドは村の人々に感謝を伝え、次なる石碑を探すために旅立つ準備を始めた。村の子どもたちが作ってくれたお守りや、古老が渡してくれた古びた地図――どれもが新たな旅への心強い支えとなった。

「さあ、行こう。今度こそ、私自身を見つけるために。」

ライラは笑顔でエルドを振り返り、大きく一歩を踏み出した。その背中には、過去を恐れず、未来を切り開こうとする彼女の強い意志が映し出されていた。

(次回へ続く)

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