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35話

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 35:「光の先に待つ真実」

眩しい光に包まれながら、ライラとエルドは慎重に足を進めていました。その光は暖かく、どこか懐かしい感覚を伴っていましたが、次第に彼らの視界がゆっくりと開けていきます。

目の前に広がっていたのは、記憶の断片で何度も見たことがあるような光景でした。青空の下、無数の花が咲き乱れる広大な草原。その中心に一本の大樹がそびえ立ち、その幹には黄金の模様が刻まれていました。ライラはその光景に胸が締めつけられるような感覚を覚えます。

「ここ……知ってる……」ライラは呟きました。彼女の頭の中にまた断片的な記憶が浮かび上がります。


---

過去の記憶:
ライラは誰かと共にその草原を歩いていました。仲間らしき人々の笑い声が響き、皆が幸福そうにしていました。その中心に、今とは違い、緑豊かで力強い輝きを放つ大樹がありました。ライラはその木に手を触れ、何かを祈っていたようです。

だが、次の瞬間、空が赤く染まり、大地が揺れ始めます。彼女の仲間たちは次々に倒れていき、大樹も光を失っていきました。その時、彼女は手に持っていた石を掲げ――。


---

記憶がそこで途切れ、ライラは膝をつきます。
「やっぱり私のせい……?」震える声でそう呟く彼女に、エルドが寄り添います。

「ライラ、それはお前がそう信じ込んでいるだけかもしれない。俺たちがここに来た理由は、真実を知るためだろう?」

エルドの言葉に、ライラは頷きながら立ち上がります。そして大樹の根元に進むと、そこには小さな石碑がありました。その表面には古代文字が刻まれており、彼女の記憶にかすかに残る祈りの言葉と一致していました。


---

「命の石を掲げし者よ、この地を守るための犠牲を知るべし。」


---

その文字を目にした瞬間、ライラの頭の中にさらに鮮明な記憶が流れ込んできます。


---

完全な記憶:
大樹を中心にした世界は、かつて「命の柱」と呼ばれる場所でした。そこは世界の調和を保つための核であり、多くの人々がその恩恵を受けていました。しかし、ある日、外部から侵略者が現れ、その調和を壊そうとしました。

ライラはその時、この大地を守るために「命の石」と呼ばれる神器を使う決断をします。それは、大地の力を解放することで敵を退ける代わりに、この地の記憶と存在そのものを封じ込めるというものでした。彼女自身もその儀式により全ての記憶を失い、ただ一人生き残る運命を背負ったのです。


---

記憶を取り戻したライラの目には涙が溢れていました。「私が……この地を守った代わりに、全てを失ったんだ……仲間たちも、記憶も……」

エルドはその場で静かにライラを見つめました。彼の手が彼女の肩に触れると、彼は言います。「それでもお前は今ここにいる。そしてお前の選択は、この地を救ったんだ。それを忘れちゃいけない。」

ライラは涙を拭い、大樹を見上げました。「もう一度、この地を蘇らせたい……。でも、どうすれば?」

その時、大樹の幹から眩しい光が放たれ、二人の前に一つの輝く石が現れました。それは彼女がかつて掲げた「命の石」と同じものでした。

石に手を伸ばしたライラは、再び心に語りかける声を聞きます。


---

「選択せよ。この地を蘇らせるか、過去を解き放つか。どちらもお前の意思で未来を導く。」


---

選択の時が来たのです。ライラは深く息を吸い込み、迷いながらも自分の心に問いかけました。この旅の意味、そして自分がこれまで守ってきたものを。

そして彼女が選んだ答えは――。

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