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32話

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32「小さな光」

湖のそばで感じた穏やかな時間を胸に刻みながら、ライラとエルドは村へ戻りました。日の光が差し込む小道を歩きながら、二人の会話は軽やかで、どこか安心感に満ちていました。しかし、ライラの心には一つの決意が芽生えていました。

「私、もっと知りたい。」
村に着くと、ライラはエルドに向き合いそう言いました。過去の断片的な記憶が浮かび、消えるたびに心が揺れ動く。それでも彼女は、自分自身と向き合うために、さらに前進する必要があると感じたのです。

エルドは少し驚いたようでしたが、すぐに柔らかな笑みを浮かべました。
「君が決めたことなら、僕はどんなときも手伝うよ。」
その言葉に、ライラはほっと息をつきました。


---

数日後、ライラはエルムウッド村の外れにある古い図書館を訪れました。この図書館は村の歴史を収めた場所であり、住人たちがほとんど利用しないため、静かで落ち着ける場所でした。ライラはここで、自分の記憶と過去に関する手掛かりを探すことを決めました。

「村に残された記録に、私に関する情報があるかもしれない。」
そう思いながら、本棚の一角をじっくりと見回します。埃をかぶった分厚い本、色あせた紙――どれも長い年月を経てきたようです。

本の中には、エルムウッド村の創設当時からの伝承や、近隣の地にまつわる神話が記されていました。その一部には、どこか聞き覚えのあるような内容が含まれていることに気づきます。

「古代の扉……?」
ふと開いた一冊に記された言葉が、ライラの記憶の奥底で小さな光を灯しました。そこには、古代に封印された秘密について語られており、それを守るために何者かが記憶を封じられたという伝説が書かれていました。

「もしかして、私……?」
ライラはその一文に釘付けになり、心臓が高鳴るのを感じました。


---

その夜、ライラはエルドの家を訪ねました。ランプの灯りに照らされた部屋で、彼に図書館で見つけた内容を話します。エルドは真剣な表情で聞き入った後、静かに頷きました。
「その伝説、実は僕も聞いたことがある。君と旅をしていた頃、ある賢者から聞かされた話だ。でも、その時は君がそれに関係しているとは思わなかった。」

ライラは自分の胸に手を当て、深呼吸をしました。
「私……その扉に関係があるなら、もっと知りたい。もし私の過去がそこに繋がっているなら、向き合わなきゃいけない気がする。」

エルドはしばらく考え込んだ後、力強く頷きました。
「それなら、次はその扉の場所を探すことだね。きっと村の外れに、手掛かりがあるはずだ。」

ライラは彼の言葉に感謝しながら、再び心に決意を固めました。失った記憶の断片が少しずつ繋がり始めた今、彼女は自分の過去と未来を見つける旅に出る準備を進めていくのでした。

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