記憶も記録もありません…全てを消された放浪者(わたし)は、わけもわからずスローライフしてます❗️

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31話

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 31話「心の葛藤」

翌朝、ライラは夜明け前に目を覚ました。昨夜のエルドとの会話が、彼女の心に新たな問いを投げかけています。彼と語り合う中で思い出しかけた断片的な記憶が、まるで靄のように浮かんでは消え、もどかしい気持ちを抱かせました。自分が一体誰だったのか、何をしていたのか――その答えを知るのが恐ろしくもあり、また待ち遠しくもあります。

「エルドが語る私と、今の私は同じ人なのだろうか?」と、ライラは思わず自分に問いかけます。

村の小道を一人で歩いていると、気づけばエルドが後ろから歩いてきていました。彼は穏やかな表情で「今朝も早いね」と声をかけ、二人で並んで歩き出します。彼の存在がどこか心を落ち着かせ、まるで長年の友人のように自然と安心感を与えてくれるのです。

エルドはふと、村の外れにある湖に向かう道を指し「ここは、君が好きだった場所だよ」と言いました。彼の言葉に促されるようにライラはその道を進み、湖のほとりにたどり着きます。静かに揺れる湖面を眺めながら、彼女は自分の胸の奥から湧き上がる感情を感じ取りました。

「ここで、何かを思い出せる気がする…」

湖のそばで、エルドはかつての二人の旅について少しずつ語り始めました。彼が語る冒険の記憶や困難な出来事は、ライラにとって新鮮でありながらもどこか懐かしく、心の中に温かさをもたらします。彼女は少しずつ、その話が自分の一部であると認めざるを得なくなっていました。

「ライラ、君は過去の記憶を取り戻しても、今のままでいられる。どちらも君の一部だから。」

エルドの言葉が、ライラの中で迷っていた感情を少しずつ癒していきます。彼の存在が、失われた記憶を受け入れる力を与えてくれるようでした。

二人は湖のほとりでしばらく静かに座り、ただその場の空気に包まれていました。ライラは自分がどのような過去を持っていたとしても、エルドがそばにいてくれるなら、前に進む勇気が出る気がしました。

静かに、でも確かに、彼女の心は一歩前に踏み出していく準備が整っていきます。

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