記憶も記録もありません…全てを消された放浪者(わたし)は、わけもわからずスローライフしてます❗️

Ⅶ.a 

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30話

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「断片的な記憶」

ライラは目の前の男性としばらくの間、言葉もなく立ち尽くしていました。彼の瞳に映る自分の姿に、どこか懐かしさと説明できない感情が湧き上がってきます。記憶を失っているライラにとって初めて会うはずの人なのに、心の奥底で何かが反応するような感覚がありました。

「…あなたは誰?」と、ライラがようやく口を開くと、彼は少し戸惑いながらも答えました。「俺はエルド。君の…昔の仲間だった者だ。君をずっと探していた。」

その言葉に驚きと戸惑いを覚えながらも、ライラは温かな何かが胸にこみ上げてくるのを感じました。エルドが語る過去の出来事や、二人の思い出は、ライラの失われた記憶の一部を揺さぶり始めます。しかしその記憶は霧の中に隠されているようで、はっきりとは思い出せません。

エルドは彼女に「君が扉を開けたことがあるのか?」と問いかけました。ライラは思わず頷き、「…でも、私が扉の向こうで何を見たのか、覚えていないの」と答えます。エルドの表情が少し曇りますが、優しく微笑んで「大丈夫だよ、少しずつ思い出せばいい」と励ましました。

夕暮れ時、二人は村の小道を歩きながらゆっくりと語り合いました。エルドは、ライラがかつてどれほど勇敢で仲間にとって大切な存在であったかを話します。それを聞く中で、ライラの中で少しずつ忘れていた自分が蘇るような気がしました。

しかし、同時に不安も芽生えます。もし過去の自分が今の穏やかな生活と繋がらないものであったなら、どうすればいいのかと――。

その夜、ライラは久しぶりに眠れない夜を過ごします。過去の自分と今の自分の狭間で揺れる彼女は、次に目覚めるとき、どんな決断をするのでしょうか。

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