記憶も記録もありません…全てを消された放浪者(わたし)は、わけもわからずスローライフしてます❗️

Ⅶ.a 

文字の大きさ
上 下
18 / 39

18話

しおりを挟む
第十八話: 未来への一歩

エルムウッド村での穏やかな日々が続き、ライラとフィオナは村人たちの温かい支えの中で少しずつ記憶を取り戻しつつあった。ある日、ライラはフィオナに村の外にある丘に連れて行くことを提案した。

「フィオナ、この丘からの景色は本当に美しいの。行ってみない?」ライラが笑顔で誘うと、フィオナも微笑んで頷いた。「ぜひ、行ってみたいわ」

二人は手を取り合い、村の外れにある丘へと向かった。丘の頂上に到着すると、そこから見える風景は壮大で、広大な森と川が一望できた。ライラとフィオナはその美しさに感動し、しばらくの間、静かに景色を楽しんだ。

「ここに来ると、心が落ち着くわ」フィオナが穏やかな声で言った。「記憶を失っても、こんなに素晴らしい場所にいると、未来への希望を感じることができる」

ライラも同意しながら、「私も同じ気持ちよ。過去を失ったとしても、私たちはここで新しい未来を築いていけるわ」と優しく言った。

その時、フィオナの頭にまた閃光が走った。「ライラ、何か思い出したかも…」フィオナは苦しそうな顔をしながらも、必死にその記憶を掘り起こそうとした。

「大丈夫、フィオナ。ゆっくりでいいから」とライラが支えながら言うと、フィオナは深呼吸をして落ち着きを取り戻した。「私は、誰かを守るために戦っていた…その人は、とても大切な存在だった…でも、まだ思い出せない…」

ライラはフィオナの肩に手を置き、「きっとその記憶も戻ってくるわ。私たちは一緒にそれを見つけ出すから」と励ました。

その帰り道、二人は村の中で新しい冒険の計画を立てることに決めた。記憶を取り戻すための手掛かりを探しに、村の外にある古い遺跡を訪れることにしたのだ。村の古老によると、その遺跡には古代の記憶を呼び覚ます力があるという。

「その遺跡に行けば、私たちの記憶が戻るかもしれないわね」フィオナが期待に満ちた声で言った。「そうね。私たちの冒険はまだ始まったばかりだわ」とライラも同意した。

準備を整えた二人は、次の日の朝早くに遺跡へ向けて出発した。エルムウッド村の人々は二人を見送り、無事を祈った。彼女たちは村の人々の温かい言葉を胸に、未来への一歩を踏み出した。

遺跡への道中、ライラとフィオナはお互いのことをもっと深く知り合い、友情を深めていった。フィオナは戦士としての自分を少しずつ思い出し、ライラはその過程を支え続けた。

やがて、二人は古代の遺跡に到着した。その遺跡は壮大で神秘的な雰囲気を醸し出していた。フィオナはその遺跡に触れると、またしても強烈な記憶のフラッシュバックが起こった。

「ここだ…ここで私は…誰かを守っていた…でも、その相手が誰だったのか…」

ライラはフィオナを支えながら、「きっとその記憶も戻るわ。私たちはここで待つわ」と優しく言った。フィオナは深く頷き、遺跡の中に一歩一歩足を進めた。

遺跡の奥に進むと、そこには巨大な石碑が立っていた。その石碑には古代の文字が刻まれており、フィオナの記憶がさらに鮮明に蘇った。「ここに…私が守っていた人の名前が…刻まれている」

ライラはフィオナの手を握りしめ、「私たちはここでその名前を見つけるわ」と決意を込めて言った。フィオナもその決意に応じ、石碑を見つめながら名前を探し続けた。

その瞬間、フィオナの頭に全ての記憶が戻ってきた。「彼の名前は…アレン。私の弟だった…」

ライラは驚きながらも、フィオナの言葉に耳を傾けた。「私はアレンを守るために戦っていた。でも、その戦いで彼を失ってしまった…その記憶が、私の心を閉ざしていたんだ」

フィオナは涙を流しながら、ライラに抱きついた。「ありがとう、ライラ。あなたのおかげで、私は自分を取り戻すことができた」

ライラも涙を浮かべながら、「これからは私たちが一緒に未来を築いていきましょう」と優しく言った。

二人はエルムウッド村に戻り、新たな冒険を始める準備を整えた。過去の記憶を取り戻したフィオナは、ライラと共に新しい未来を描き始めるのだった。

次回は、ライラとフィオナが新たな冒険に挑む話が続きます。彼女たちの友情と絆が試される中で、どのようにして過去を乗り越え、未来を切り開いていくのか、その旅路が描かれるでしょう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。

あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。 「君の為の時間は取れない」と。 それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。 そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。 旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。 あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。 そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。 ※35〜37話くらいで終わります。

10年間の結婚生活を忘れました ~ドーラとレクス~

緑谷めい
恋愛
 ドーラは金で買われたも同然の妻だった――  レクスとの結婚が決まった際「ドーラ、すまない。本当にすまない。不甲斐ない父を許せとは言わん。だが、我が家を助けると思ってゼーマン伯爵家に嫁いでくれ。頼む。この通りだ」と自分に頭を下げた実父の姿を見て、ドーラは自分の人生を諦めた。齢17歳にしてだ。 ※ 全10話完結予定

危害を加えられたので予定よりも早く婚約を白紙撤回できました

しゃーりん
恋愛
階段から突き落とされて、目が覚めるといろんな記憶を失っていたアンジェリーナ。 自分のことも誰のことも覚えていない。 王太子殿下の婚約者であったことも忘れ、結婚式は来年なのに殿下には恋人がいるという。 聞くところによると、婚約は白紙撤回が前提だった。 なぜアンジェリーナが危害を加えられたのかはわからないが、それにより予定よりも早く婚約を白紙撤回することになったというお話です。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。

112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。 愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。 実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。 アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。 「私に娼館を紹介してください」 娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

処理中です...