記憶も記録もありません…全てを消された放浪者（わたし）は、わけもわからずスローライフしてます❗️

17話

第十七話: 優しさがもたらす奇跡

エルムウッド村での穏やかな日々が続く中、ライラは少しずつ自分の記憶を取り戻しつつあった。しかし、まだ多くの謎が解けていない。そんなある日、村に一人の旅人が訪れた。その旅人、フィオナはやせ細り、疲れ切った様子だった。

「こんにちは、旅人さん。大丈夫ですか？」ライラが心配そうに声をかけると、フィオナは弱々しく微笑んだ。「私はただ、少し休ませてもらいたいだけなんです。この村に来るまで、ずっと旅をしてきました」

村人たちは快くフィオナを迎え入れ、彼女に休息と食事を提供した。ライラもまた、彼女の世話を焼き、体調が回復するのを見守った。フィオナは感謝の気持ちでいっぱいだった。「本当にありがとう。あなたたちの優しさがなければ、私はもう立ち上がれなかったかもしれない」

フィオナが村に滞在する中で、彼女とライラは次第に親しくなっていった。フィオナもまた、記憶を失った過去を持っており、ライラは彼女の話に共感を覚えた。「私も同じような状況でした。記憶を失い、この村にたどり着いて…でも、この村の人々の優しさが、私を救ってくれました」

フィオナは涙を浮かべながら頷いた。「あなたの言葉に励まされます。私もここで少しずつ、自分を取り戻せるかもしれません」

ある日、フィオナが村の広場で手伝いをしていると、突然彼女の頭に強烈な閃光が走った。「何か思い出したの？」とライラが尋ねると、フィオナは震える声で答えた。「私…戦士だったような気がする…でも、その戦いが何のためだったのか、まだ思い出せない」

ライラはフィオナを支えながら、「大丈夫。少しずつ思い出していけばいいわ。私たちはここであなたを支えるから」と言った。フィオナは感謝の気持ちでいっぱいになり、ライラに深く頭を下げた。

その夜、ライラとフィオナは暖炉の前で語り合った。フィオナは少しずつ、自分の記憶の断片を話し始めた。「私は、誰かを守るために戦っていた…でも、その誰かが誰だったのか思い出せないんです」

ライラはフィオナの手を握りしめ、「きっと思い出すわ。あなたの心が準備できた時に、すべての記憶が戻ってくるはず」と優しく言った。フィオナはその言葉に励まされ、涙を流しながら微笑んだ。

次の日、村全体が一緒にフィオナを支えるために動き出した。村人たちは彼女のために特別な儀式を準備し、失われた記憶を取り戻すための手助けをした。その儀式は、古代の伝統に基づいたもので、心と体の調和を取り戻すためのものであった。

儀式が終わると、フィオナは感謝の気持ちでいっぱいになりながらも、自分の中に何かが変わったことを感じた。「皆さん、本当にありがとう。私は、少しずつ自分を取り戻している気がします」

ライラは微笑みながら、「私たちも同じです。あなたがここにいることが、私たちにとっても大切なこと」と言った。フィオナはその言葉に深く感動し、村の人々に対して心からの感謝を捧げた。

エルムウッド村での穏やかな日々の中で、ライラとフィオナは互いに支え合いながら、新たな生活を続けていくことを誓った。過去の記憶が少しずつ戻る中で、彼女たちは新しい未来を築いていく。優しさと絆がもたらす奇跡は、これからも続いていくのだった。