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16話

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16話: 記憶の欠片

ライラはエルムウッド村での生活に慣れ、村人たちとも深い絆を築いていた。ある日、彼女は村の片隅にある古びた図書館で過ごしていた。図書館の管理人、マリオン婆さんはライラにとても親切で、いつも新しい本を紹介してくれる。

その日は、特に寒い日だった。図書館の暖炉の前で、ライラは一冊の古い本を手に取った。その本は、エルムウッド村の歴史について書かれたもので、彼女は興味深くページをめくっていった。

「この村にも、昔は大きな戦いがあったのね…」とライラは独り言をつぶやいた。ページの隅には、かすかに見覚えのあるシンボルが描かれていた。そのシンボルを見た瞬間、ライラの中で何かが弾けるような感覚が走った。

「このシンボル、どこかで見たことがある気がする…」

マリオン婆さんが暖炉に薪をくべながら、ライラの様子に気づいた。「どうしたんだい、ライラ?その本に何か面白いことでも書いてあったのかい?」

「ええ、このシンボル…何か思い出しそうなんです。でも、はっきりとは思い出せなくて…」

マリオン婆さんは優しく微笑みながら言った。「それはきっと、君の記憶の欠片かもしれないね。焦らずに、少しずつ思い出していけばいいさ。過去は過去、今は今。君がここにいることが大切なんだよ」

ライラはその言葉に深く感謝し、心が少し軽くなった気がした。彼女は再び本に集中し、シンボルに関する情報を探し続けた。ページをめくると、ある一節が目に留まった。

「このシンボルは、古代の戦士たちが使ったもの…。彼らは記憶を封じ込めるためにこのシンボルを用いたとされる」

ライラはその言葉に驚き、さらに詳しく調べることにした。図書館の奥にある書庫から、関連する他の本も引っ張り出し、日が暮れるまで熱心に読んでいた。

その夜、ライラは暖炉の火が揺れる中、ふと頭の中に浮かぶ映像を見た。自分がどこかの戦場に立っている場面だった。激しい戦いの中で、彼女は何か重要なものを守っているような感覚がした。

「これが、私の過去…?」

彼女の心は、少しずつ記憶の欠片が繋がっていくような気がした。エルムウッド村の穏やかな日常と、少しずつ蘇る記憶。ライラはその両方を大切にしながら、自分の過去を取り戻す旅を続けていく決意を新たにした。

翌朝、ライラは村の広場で、村人たちと一緒に朝食を囲んでいた。温かいパンと新鮮な果物、そして優しい笑顔に包まれていると、彼女は今の生活がとても大切に思えた。

「過去が何であれ、今ここにいることが大切なんだ…」

ライラは心の中でそう思いながら、エルムウッド村での新たな一日を迎えた。過去の記憶が少しずつ戻りつつある中で、彼女はこの穏やかな生活をもっと大切にし、心から楽しむことを誓った。

これからも、ライラの旅は続いていく。喪失された記憶と抹消された記録の中で、彼女は自分自身を見つけ、新たな未来を切り開いていく。その過程で、彼女は多くのことを学び、成長していくことだろう。
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