記憶も記録もありません…全てを消された放浪者(わたし)は、わけもわからずスローライフしてます❗️

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1話

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**第一話: 目覚めの朝**

ライラは目を覚ました。周囲は静寂に包まれ、鳥のさえずりだけが響いていた。彼女は柔らかな草の上に横たわっていたが、自分がここにどうやって来たのか全く覚えていなかった。頭を抱え込みながら、立ち上がると周囲を見回した。荒涼とした大地が広がり、彼女の目に映るのは遠くにそびえる山々と、その間を流れる小川だけだった。

「ここは…どこ?」

ライラの声は風に消され、答える者は誰もいなかった。彼女はしばらくその場に立ち尽くしていたが、やがて歩き出す決意を固めた。足元にある唯一の手がかり、古びた日記帳を手に取ると、それを慎重に開いた。ページのほとんどは破れ、読める部分は僅かしかなかった。しかし、その僅かな記述が彼女に方向を示してくれた。

「エルムウッド…村…?」

日記の破れたページに書かれていたその名前が、彼女の心に深く刻まれた。何も覚えていない彼女にとって、それは唯一の希望だった。

ライラは日記帳を大事に抱え、未知の村へと歩み始めた。彼女の足は重く、道中は険しかったが、進むごとに心にわずかな光が灯っていった。

数日が経ち、彼女は疲れ果てていた。食べ物もなく、水も尽きかけていた。そんな時、遠くに小さな村が見えてきた。ライラの目は希望に輝いた。その村こそが、エルムウッドだった。

村に入ると、住人たちは驚きの表情を浮かべた。しかし、彼女が倒れそうになった瞬間、優しい手が彼女を支えた。それは、村の長老であるエリオットだった。

「お嬢さん、大丈夫かね?」

ライラは力なくうなずき、エリオットに連れられて村の集会所へと向かった。そこでは村人たちが温かいスープを用意して待っていた。ライラはそのスープを一口飲むと、身体中に暖かさが広がり、安堵のため息をついた。

「ありがとう…」

彼女の声はかすれていたが、村人たちの笑顔が彼女の心を癒した。

エリオットはライラに質問を始めた。「どうしてこんなところに来たんだ?何があったのか、話せるかい?」

ライラは困惑した表情で首を振った。「わからないんです。何も覚えていなくて…ただ、この日記帳だけが手がかりなんです。」

エリオットは日記帳を手に取り、中を覗いた。「ふむ、これは興味深い。エルムウッドと書かれているが、他には何もわからないようだな。」

彼は少し考え込んだ後、にっこりと微笑んだ。「まあ、今はゆっくり休むといい。ここは安全だ。君はここで新しい生活を始めることができる。」

ライラはその言葉に安心し、深くうなずいた。彼女はその夜、村の家族の一員として迎え入れられ、村の家屋で初めて安らかな眠りについた。

翌朝、ライラは早く起きて村の様子を見て回った。村は小さく、木造の家々が並び、花々が咲き誇っていた。村人たちは皆、忙しそうに働いていたが、彼女を見ると温かい笑顔で挨拶をしてくれた。

ライラは感謝の気持ちを込めて、村の生活に積極的に参加しようと決意した。彼女はまず、エリオットの元を訪れ、村で何か手伝えることはないか尋ねた。

「お嬢さん、元気そうで何よりだ。さて、そうだな…まずは鶏の世話を手伝ってもらおうか。リリアが君にやり方を教えてくれるだろう。」

リリアというのは、村で鶏の世話をしている女性だった。彼女は優しくライラに鶏の世話の方法を教えてくれた。朝早く起き、鶏に餌をやり、卵を集める。単純な作業だが、ライラはその一つ一つに新鮮な喜びを感じていた。

村での生活はゆっくりとしたペースで進んでいった。ライラは村の人々とともに畑で野菜を育てたり、夕方には皆で夕食を囲んだりと、平和な日常を送るようになった。彼女は少しずつ、自分の心が癒されていくのを感じていた。

しかし、その穏やかな日々の中でも、彼女の記憶に関する手がかりを探すことを忘れてはいなかった。日記帳の断片的な記述を頼りに、彼女は自分の過去を取り戻すための旅を続ける決意を胸に秘めていた。

そんなある日、エリオットがライラに興味深い話を持ちかけた。「ライラ、古い伝説について聞いたことがあるかい?」

ライラは首を振った。「いいえ、どんな伝説ですか?」

エリオットは目を輝かせながら語り始めた。「昔、大きな戦争があったと言われている。その戦争の中で、多くの記憶と記録が意図的に抹消されたんだ。もしかしたら、君の記憶の喪失もその一環かもしれない。」

ライラの心に不安が広がったが、それと同時に一筋の光が差し込んだ。彼女の失われた記憶が、今まさに解き明かされようとしているのかもしれない。彼女は決意を新たに、エルムウッド村での新しい生活と、自分の過去を探る旅を続けることを誓った。

こうして、ライラの新たな生活が始まった。彼女の冒険はまだ始まったばかりだったが、村の温かい人々と共に、彼女は少しずつ自分を取り戻していくのだった。
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