「聞いた聞いた？？ お前なんて産まれてこなければ良かった！と言われ続けた無能な非行少年！？ 実は、神の末裔の生まれ変わりだったんだって！？」

4話

第4話：試練の訪れ

次の日、楠本蓮はいつもよりも早く家を出た。昨日の浮遊体験が忘れられず、もっと自分の力を試してみたいという衝動に駆られていた。朝の空気が冷たく澄んでおり、彼の心も同じように清々しい気持ちで満ちていた。

学校に着くと、蓮は授業が始まる前に校庭の隅で瞑想を始めた。周囲のざわめきから自分を切り離し、内なる力に集中する。その瞬間、彼の体が再び軽くなり、周囲の音が遠ざかるように感じた。しかし、授業の開始を知らせるチャイムの音で集中が途切れ、彼は現実に引き戻された。

授業中、蓮は自分の力について考え続けていた。教師の話が頭に入らず、ノートに描くのは古代の紋様や護符のデザインばかり。クラスメートたちは蓮を気にかけることなく、自分たちの世界に没頭していた。

放課後、蓮は再び神社へ向かった。老人に会い、昨日の経験を報告するつもりだった。神社に着くと、老人はすでに祠の前に立っていた。彼は蓮の姿を見ると、穏やかな微笑みを浮かべた。

「来たか、蓮。今日も訓練を続けよう。」

蓮は頷き、老人の指示に従って瞑想を始めた。内なる力に集中し、自分の中のエネルギーを感じ取る。しばらくすると、再び浮遊する感覚が戻ってきた。しかし、今日はそれだけではなかった。蓮の周囲に微かな光が現れ、彼の体を包み込んだ。

「良いぞ、蓮。その調子だ。」老人の声が遠くから聞こえる。

蓮は集中を続けながら、自分の中に新たな力が目覚めつつあることを感じた。しかし、その瞬間、突然周囲の空気が重くなり、異様な気配が漂い始めた。蓮は目を開け、光が消えるのを感じた。

「何かが来る…」老人は眉をひそめ、周囲を警戒するように見渡した。

蓮もその異変に気づき、身構えた。すると、森の奥から一人の男が姿を現した。黒いローブを纏い、鋭い目つきで蓮と老人を見つめている。その男の手には奇妙な杖が握られており、そこから冷たいオーラが漂っていた。

「こんなところで神の末裔に会えるとはな…」男は不気味に笑いながら言った。「お前がその力を持つ者か。手間が省けた。」

蓮は驚きと恐怖で立ちすくんだ。「あなたは誰ですか？何が目的なんですか？」

男は冷笑を浮かべ、「私はカナト。お前の力を奪いに来たのさ。神の末裔としての力を、我が主に捧げるために。」と答えた。

老人は蓮をかばうように前に出た。「カナト、ここで何をするつもりだ？」

カナトは杖を掲げ、冷たい光がその先端から放たれた。「お前には関係ない。さあ、蓮、力を見せてもらおうか。」

その瞬間、カナトの杖から放たれた光が蓮に向かって飛んできた。老人がすかさず盾となり、蓮を守ろうとするが、カナトの力は強力だった。老人はその一撃を受けて倒れ込んだ。

「老人！」蓮は叫びながら駆け寄ったが、老人はかすかに微笑んでいた。「蓮、君の力を信じなさい。君ならできる。」

蓮は震える手で護符を握りしめ、カナトに立ち向かった。彼の心の中で何かが弾け、内なる力が一気に溢れ出した。その瞬間、彼の体が再び光に包まれ、空中に浮かび上がった。

「これが…僕の力…」蓮は自分の中に宿るエネルギーを感じながら、カナトに向かって手を伸ばした。すると、彼の手から強烈な光が放たれ、カナトに向かって突き進んだ。

カナトは驚愕の表情を浮かべ、必死に防御しようとしたが、蓮の力はそれを突き破り、カナトを吹き飛ばした。男は地面に倒れ、しばらくして立ち上がると、苦々しい表情で蓮を見つめた。

「お前の力、確かに強いな。しかし、これで終わりではない。必ず再び会おう、神の末裔よ。」そう言い残してカナトは闇の中へと消えていった。

蓮は力を使い果たし、地面に降り立った。彼の体は疲れ切っていたが、心には新たな決意が宿っていた。老人に駆け寄ると、彼は微笑みながら蓮の肩に手を置いた。

「よくやった、蓮。君の力は本物だ。しかし、これからも多くの試練が待ち受けている。君はそれに立ち向かう準備をしなければならない。」

蓮は頷き、深呼吸をした。「はい。僕はもっと強くなります。自分の力を信じて、運命に立ち向かいます。」

こうして蓮は、未知なる力に目覚め、自分の運命に立ち向かうための第一歩を踏み出した。試練は始まったばかりだが、彼の心には強い決意と希望が満ちていた。これからの道のりは険しいものになるだろうが、蓮はその全てを乗り越える覚悟を決めたのだった。