「聞いた聞いた？？ お前なんて産まれてこなければ良かった！と言われ続けた無能な非行少年！？ 実は、神の末裔の生まれ変わりだったんだって！？」

2話

第2話：導かれる始まり

朝の薄明かりが差し込む中、楠本蓮は目を覚ました。昨夜、老人から受け取った古びた書物を読みふけったことで、彼の心には何か新しい決意が芽生えていた。これまで感じたことのない希望と不安が入り混じった感情だった。

蓮はベッドから起き上がり、書物を再び手に取った。ページをめくりながら、彼はそこに描かれた古代の神々とその末裔たちの物語に引き込まれていった。特に、「神の血を受け継ぐ者」という一節が彼の心に深く刺さった。まるでそれが自分自身の運命を示唆しているかのように感じたのだ。

学校に向かう道すがら、蓮の頭の中は老人の言葉と書物の内容でいっぱいだった。いつものようにクラスメートたちの冷たい視線を感じながらも、彼の心はどこか別の場所にあった。授業中もぼんやりと窓の外を眺めながら、自分の運命について考え続けた。

放課後、蓮は再びあの老人に会うために町外れの場所へ向かった。老人はまるで彼を待っていたかのように、同じ場所に座っていた。

「来てくれたか、蓮。」老人は微笑みながら蓮に声をかけた。

「昨日の話、本当なんですか？僕が神の末裔だって…。それに、この書物の内容も…。僕にはまだ信じられません。」蓮は戸惑いながら問いかけた。

老人は静かに頷いた。「君が信じるかどうかは、これからの君自身の行動次第だ。だが、まずは自分の力を知り、受け入れることが大事だ。さあ、これを。」老人は小さな袋を蓮に手渡した。中には古代の護符のようなものが入っていた。

「これを持って、町の外れにある神社へ行きなさい。そこで君は自分の力を確かめることができるだろう。」老人の言葉は重く、しかし確信に満ちていた。

蓮はその護符を握りしめ、神社へ向かうことを決意した。彼の心は期待と不安でいっぱいだったが、それでも自分の運命に向き合う覚悟が少しずつ固まっていった。

神社は町の外れにひっそりと佇んでいた。古びた鳥居をくぐり抜けると、静寂が彼を包み込んだ。蓮は護符を手に、神社の奥へと進んだ。そこには祠があり、古代の神々を祀る彫像が並んでいた。

「ここがその場所か…。」蓮は護符を祠の前に捧げ、静かに目を閉じた。すると、突然、彼の体が温かい光に包まれた。意識が遠のく中で、蓮は自分の内なる力が目覚めるのを感じた。

光が収まり、蓮は目を開けた。彼の周囲には、まるで時が止まったかのような静けさが広がっていた。身体が軽く、心が澄み渡るような感覚に包まれていた。

「これが…僕の力？」蓮は自分の手を見る。そこには微かな光が宿っていた。老人の言葉が現実のものとなり、自分が特別な存在であることを実感した瞬間だった。

その夜、家に帰った蓮は、母親の怒鳴り声にも以前ほど心が揺れることはなかった。彼の心には新たな決意が芽生えていた。「自分の力を受け入れ、運命に立ち向かうんだ。」

こうして、蓮の新たな旅が本格的に始まった。彼はまだ知らない、自分に待ち受ける試練や出会い、そして運命の真実に向かって、第一歩を踏み出したのだ。彼の心の中には、不思議なほどの静かな決意が宿っていた。これからの道のりは決して平坦ではないが、蓮はその一歩一歩を確実に進んでいくことを誓った。