幻想神話戦記 クロスワールド

神域編

10話

【神域編 - 第10話：裁きの間】

神々の幻影が動きを止めたのも束の間、その場を満たす緊張感は一層高まっていった。突然、祭壇が激しく揺れ始め、涼太たちの足元から大地が裂けるような轟音が響いた。

「まだ終わりじゃないみたいね…！」アンジュリータが警戒の目を周囲に向ける。

「いや…むしろ、これからが本番かもしれない」レオンが低く呟く。

巨大な石板が光を放ちながら宙に浮き、周囲の空間が異様にねじれ始めた。そして次の瞬間、涼太たちは奇妙な空間に引き込まれていた。そこは、暗闇の中に無数の光る文字が浮かぶ異次元のような場所だった。

「ここは一体…？」美紀が不安げに辺りを見渡す。

「裁きの間だわ…ここで神々は、私たちが試練にふさわしい者かどうかを最終的に判断するのよ」とアンジュリータが静かに答えた。

暗闇の中から声が響いた。

「神々の記憶に触れる者よ。我々の問いに答えよ。その答え次第で、お前たちの運命を決める。」

その声はまるで空間全体から聞こえるようで、正体を掴むことはできなかった。

「問いだと…？」涼太は剣を握り直しながら前方を睨む。

「第一の問い。我々が人間を見守る理由とは何か。」

涼太たちは驚きながら顔を見合わせた。攻撃や魔法ではなく、問いに答える試練が始まるとは予想外だった。

「人間を見守る理由か…？」美紀が眉をひそめる。

「神々が人間を見守る理由…それは、彼らが創造主だから、というのが一般的な答えだけど…」アンジュリータが呟いたが、その答えには確信がなかった。

涼太は目を閉じ、過去の旅や試練の中で感じたことを思い返した。そしてゆっくりと口を開いた。

「神々が人間を見守る理由…それは、人間が希望を持ち続ける存在だからだと思う。たとえどんな困難があっても、人間はそれを乗り越えようとする。その姿が、神々にとって特別だからじゃないのか？」

その言葉が空間に響くと、しばらくの静寂の後、再び声が聞こえた。

「第一の問い、合格。」

暗闇がわずかに明るくなり、光の文字が一部消えた。しかし、その瞬間、涼太たちの前に神々の幻影が再び現れ、今度は剣を振り下ろしてきた。

「答えたのに、攻撃だと!?」レオンがとっさに剣を構え、一撃を受け止めたが、その衝撃で大きく吹き飛ばされた。

「試練は問いだけじゃないのね！」アンジュリータが叫びながら魔法を放つが、幻影にはまるで効いていないようだった。

「くそっ、こっちも力を出し切るしかない！」涼太が叫び、剣を振りかざして神々の幻影に突進した。

激しい戦いが始まり、涼太たちは全力で応戦した。しかし、神々の力は圧倒的で、彼らは次第に追い詰められていった。

「まだ…負けない…！」涼太が必死に剣を握り直し、再び立ち上がる。

「第二の問い。我々が封印された理由とは何か。」

再び声が響き渡った。その問いが投げかけられると同時に、空間全体がさらに揺れ動き始めた。

「神々が封印された理由…？」美紀が疲れた表情で呟く。

「それは…人間が神々の力を恐れたから？それとも、神々自身が力を封じた？」アンジュリータが思案するが、確信は持てない。

涼太はふと思い出した。これまでの試練や戦いの中で、神々が力だけでなく意志や心を試しているように感じていた。

「もしかして…神々が封印されたのは、自分たちが力に溺れることを恐れたからじゃないか？」涼太が静かに言った。

「第二の問い、合格。」

またしても答えが認められると同時に、さらに強力な幻影が涼太たちを襲ってきた。圧倒的な力の前に、彼らは次々と地に伏せられていく。

「負けない…俺たちはここで終わらない！」涼太が再び剣を握りしめ、立ち上がる決意を示した。

この戦いの先に何が待つのかはまだ分からない。しかし、涼太たちは神々の記憶に触れるため、そして真の試練を乗り越えるために、最後まで立ち向かう覚悟を固めるのだった。