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48・ニョキニョキ生えてきました。
しおりを挟む「誰が乙女ですか!」
心の声が漏れてしまっていました!
「まあ、乙女なのですけれど」
リリアは呆れ、放り投げるように言い捨てると、鼻先に押し花をかざして、片手でその押し花ごと鼻を覆い、目を固く閉じて、深く息を吸い込みました。
いや、その押し花が良い香りがするのは分かりますが、ずいぶんな念の入れようです。
「凄いですね」
リリアは、さも、感心したかのように、首を二度三度と横に振りながら言いました。
愛しい殿方から贈られた、一点の押し花ですから、感情移入するのも当然とは思いますが、大袈裟すぎませんか?
「お嬢? 何か勘違いしていますね」
こちらにチラリと視線を送っただけで、人の頭の中を覗き見たような言い草に、あわてて、両手で顔を覆ってしまいました。
「お嬢、この香り、花からではないのです」
「花からではない?」
意味も分からずオウム返しに答えると、リリアは弾かれたように向きを変え、私の鼻先に手を伸ばし、押し花を突き付けてきました。
その押し花を、顎をクイッと上げて指し示します。
『無礼です!』と、言いたいところですが、リリアの顔が、やたらと真剣で怖いですから、止めておいた方が無難のようです。
有無を言わせぬ無言の圧力に止むに止まれず、身を乗り出して、押し花の香りを吸い込みました。
先ほど封を開けた時と同じ、甘い蜜のような香りがして、リリアがいったい何を言いたいのか分かりませ……ん!?
「リリア!? この香り、花からではないわ」
「だから、そう言っているではありませんか」
「うん、そう言っている」
またまた、ただオウム返しに答える事しかできませんでした。
甘い蜜のような香りですので、頭から花の香りだと思っていたのですが、違います。
この独特な香りは、葉の香りなのです。
赤鬼の巷の評判を聞こうと、城館外の仕事に従事する給仕達を、招集させた『最愛のお母さまが手ずから整えられた花壇に囲まれ、四季折々で姿を変える美しさに彩られた、私のお気に入りの場所』である中庭の四阿の側には、最愛のお母さまが調理長と共に、花壇と同じように手ずから整えられた菜園が有り、数々の香草を主にお育てになっていました。
花壇がお気に入りなのは、むろん嘘では無いのですが、どちらかと問われれば言うまでも無く、花より香草、菜園の方に興味津々でした。
香草というと繊細な印象がありますが、一度根をつけると手間をかけずとも、後は勝手に生えて来るような逞しさがあり、まだ幼い私でも育てることができ、収穫も摘み取るだけですので、最愛のお母さまのお手伝いができて、嬉しかったのは良く覚えています。。
香草については、お菓子作りに必要不可欠ですし、お茶好きもあって詳しいつもりでいたのですが、この、押し花の正体は分かりませんでした。
(コレは、一体……?)
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