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45・れ、れ、例のアレでした!
しおりを挟む『親愛なる、リリア様』
封筒を持つ手が硬直しました……いえ、硬直したのは手では無くて頭です。
一瞬真っ白になってしまいました。
(な、なんじゃ、こりゃあ! え! ちょっと待って、これエドの字だよね、そうだよね。それに、なに、この可愛いらしい封筒、おとぎの国からでも送られてきたの、カロ宛ならまだしも、リリアによ、おかしいでしょう。いやいや、落ち着け、私!)
もう、頭の中は大混乱で、『落ち着け!』とか、考えながらも、封筒を窓に向けて掲げて、見える筈も無いのに、懸命に中を透かして見ようとしているのですから、我ながら嫌になってしまいます。
この封筒をエドが買った?
この封筒にエドが字を書いた?
ちょっと想像がつきません。
『これは何?』と問われれば、どっからどう見たって『恋文』にしか見えません。
(『恋文』! 甘酸っぺー!)
私に宛てた物でもないのにドキドキしてきました。
そうですか、これが、かの有名な、絵物語の中の幻想世界にしか存在しないと思っていた、あの、『恋文』ですか。
しかし、それが何故この冊子の中に挟まれていたのでしょうか?
幾ら私宛に来た封書の中に入った物とはいえ、リリアの宛名が書いてあるものを、勝手に開ける訳にはいかない位の判断は出来たのですが、すげー気になります。
(いやいや、よーく考えろ、エレナ!)
エドの事です。
私の手元に届いた先の事も織り込み済みという事ですね。
私が真っ先に販売計画を読みだし、他の書類はリリアが手にすると見込んでいたのでしょう。
という事はですよ。
私には知られないように、この『恋文』がリリアに渡る様にエドが画策したのです。
当然、その書かれている内容は、単なる挨拶文や、礼状などではなく、正に『恋文』そのものという事です。
常に私と一緒にいるリリアに、私に分からないように、エドが直接封筒を手渡す機会は無いですが、他に渡す方法なら幾らでもあるのに、わざわざ私に見つかる不具合が生じる可能性があるというのに何故、このように大胆な事をしたのでしょうか?
ん~、という事は私に見られても、特に問題が無い内容? 疑問は深まるばかりです。
長い沈黙に耐えられなくなってしまったのか、リリアが、この世の終わりのような声を出します。
「良いですよ、お嬢、開けて下さい」
いや、いや、そんな悪趣味な事できる筈もありませんが、一体どうしたというのでしょうか、つい、先ほどまで真っ赤になっていた顔が蒼ざめ、見る影もなくなってしまったリリアが、そこにいました。
(死ぬな―! リリア!)
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