45 / 63
44・ま、ま、まさかこれは例のアレですか!
しおりを挟む「な、な、なあ~んですか、お嬢!?」
そっと、リリアの後ろに回り込めば、この、声を盛大に裏返した、あからさまに怪しい反応です。
私がお茶を淹れようと席を立っても、我関せず、ただ一心不乱に書面を読み耽っていたというのにです。
しかも、リリアの頬が赤らんでいるではありませんか!
するとリリアは頬をヒクつかせて、顎を少し上げて、あらぬ方向に目を向け顔を逸らし、膝に両手をちょこんと乗せて、背筋を伸ばします。
それはもう忙しいこって、いや、まあ、その仕草は、とても愛らしく、ほんわかしてしまうのですが、そんな事では、もちろん誤魔化されません。
「な、何でも無いです!」「な、何でも有るです!」
つい先程のお返しに、電光石火で答えます。
それにしても、私が問い掛ける前に慌てて言い訳するとは、益々怪しく、何でも無い訳が有りません。
今度はリリアの正面に回り込み、机越しに手のひらを叩きつけ、身を乗り出して、鼻先を付けんばかりに、顔を合わせました。
リリアの顔は真っ赤です!
確信しました!
このリリアの反応を、目の当たりにして気づかぬ程、鈍くはありません。
今し方のリリアの動きを反芻してみると、多分右手が、こう、冊子に乗せた手が行きつ戻りつしたような、何か不自然な動き……。
「リリア! 動かないで!」
気合一閃、叫びました。
リリアは椅子から飛び上がらんばかりに腰を浮かせ、伸ばした背すじをさらに伸ばして固まりました。
その隙にすかさず、冊子を取り上げました。
すると、その下に一封の小さな封筒が置かれていたではありませんか。
大当たりです。
冊子の間に挟まっていた封筒を見つけ、下に差し込むようにして隠したのですね。
リリアは大慌てで身体全体を使って、覆いかぶさるようにして、その封筒を隠そうとしましたが、そうは問屋が卸しません。
リリアが動くより一瞬早く、その封筒を摘まみ上げます。
指に封筒を挟んだまま、半分、顔が隠れる位間近に掲げて、二度三度と振りかざしながら訊ねます。
「何、何、リリア。これ、な~に? な~に?」
リリアは肩を落とし、背を丸めて縮こまってしまいます。
「何で、何で、隠したの?」
「知りません!」
リリアは眦を吊り上げ、口先をとがらせ、ソッポを向いてしまいました。
(開き直りやがった!)
改めて見ると、普通より小さめですが、やたらと豪華で可愛らしい封筒です。
(え~~!)
封筒の宛名が、まるで生きているかのように、思わず眼をつぶってしまいそうになる位の勢いで、飛び込んできやがりました。
そこに書かれていたのは……。
0
お気に入りに追加
123
あなたにおすすめの小説

悪役令嬢カテリーナでございます。
くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ……
気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。
どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。
40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。
ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。
40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。
望まれない結婚〜相手は前妻を忘れられない初恋の人でした
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【忘れるな、憎い君と結婚するのは亡き妻の遺言だということを】
男爵家令嬢、ジェニファーは薄幸な少女だった。両親を早くに亡くし、意地悪な叔母と叔父に育てられた彼女には忘れられない初恋があった。それは少女時代、病弱な従姉妹の話し相手として滞在した避暑地で偶然出会った少年。年が近かった2人は頻繁に会っては楽しい日々を過ごしているうちに、ジェニファーは少年に好意を抱くようになっていった。
少年に恋したジェニファーは今の生活が長く続くことを祈った。
けれど従姉妹の体調が悪化し、遠くの病院に入院することになり、ジェニファーの役目は終わった。
少年に別れを告げる事もできずに、元の生活に戻ることになってしまったのだ。
それから十数年の時が流れ、音信不通になっていた従姉妹が自分の初恋の男性と結婚したことを知る。その事実にショックを受けたものの、ジェニファーは2人の結婚を心から祝うことにした。
その2年後、従姉妹は病で亡くなってしまう。それから1年の歳月が流れ、突然彼から求婚状が届けられた。ずっと彼のことが忘れられなかったジェニファーは、喜んで後妻に入ることにしたのだが……。
そこには残酷な現実が待っていた――
*他サイトでも投稿中
勘違い妻は騎士隊長に愛される。
更紗
恋愛
政略結婚後、退屈な毎日を送っていたレオノーラの前に現れた、旦那様の元カノ。
ああ なるほど、身分違いの恋で引き裂かれたから別れてくれと。よっしゃそんなら離婚して人生軌道修正いたしましょう!とばかりに勢い込んで旦那様に離縁を勧めてみたところ――
あれ?何か怒ってる?
私が一体何をした…っ!?なお話。
有り難い事に書籍化の運びとなりました。これもひとえに読んで下さった方々のお蔭です。本当に有難うございます。
※本編完結後、脇役キャラの外伝を連載しています。本編自体は終わっているので、その都度完結表示になっております。ご了承下さい。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

【完結済み】婚約破棄致しましょう
木嶋うめ香
恋愛
生徒会室で、いつものように仕事をしていた私は、婚約者であるフィリップ殿下に「私は運命の相手を見つけたのだ」と一人の令嬢を紹介されました。
運命の相手ですか、それでは邪魔者は不要ですね。
殿下、婚約破棄致しましょう。
第16回恋愛小説大賞 奨励賞頂きました。
応援して下さった皆様ありがとうございます。
リクエスト頂いたお話の更新はもうしばらくお待ち下さいませ。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない
曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが──
「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」
戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。
そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……?
──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。
★小説家になろうさまでも公開中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる