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44・ま、ま、まさかこれは例のアレですか!
しおりを挟む「な、な、なあ~んですか、お嬢!?」
そっと、リリアの後ろに回り込めば、この、声を盛大に裏返した、あからさまに怪しい反応です。
私がお茶を淹れようと席を立っても、我関せず、ただ一心不乱に書面を読み耽っていたというのにです。
しかも、リリアの頬が赤らんでいるではありませんか!
するとリリアは頬をヒクつかせて、顎を少し上げて、あらぬ方向に目を向け顔を逸らし、膝に両手をちょこんと乗せて、背筋を伸ばします。
それはもう忙しいこって、いや、まあ、その仕草は、とても愛らしく、ほんわかしてしまうのですが、そんな事では、もちろん誤魔化されません。
「な、何でも無いです!」「な、何でも有るです!」
つい先程のお返しに、電光石火で答えます。
それにしても、私が問い掛ける前に慌てて言い訳するとは、益々怪しく、何でも無い訳が有りません。
今度はリリアの正面に回り込み、机越しに手のひらを叩きつけ、身を乗り出して、鼻先を付けんばかりに、顔を合わせました。
リリアの顔は真っ赤です!
確信しました!
このリリアの反応を、目の当たりにして気づかぬ程、鈍くはありません。
今し方のリリアの動きを反芻してみると、多分右手が、こう、冊子に乗せた手が行きつ戻りつしたような、何か不自然な動き……。
「リリア! 動かないで!」
気合一閃、叫びました。
リリアは椅子から飛び上がらんばかりに腰を浮かせ、伸ばした背すじをさらに伸ばして固まりました。
その隙にすかさず、冊子を取り上げました。
すると、その下に一封の小さな封筒が置かれていたではありませんか。
大当たりです。
冊子の間に挟まっていた封筒を見つけ、下に差し込むようにして隠したのですね。
リリアは大慌てで身体全体を使って、覆いかぶさるようにして、その封筒を隠そうとしましたが、そうは問屋が卸しません。
リリアが動くより一瞬早く、その封筒を摘まみ上げます。
指に封筒を挟んだまま、半分、顔が隠れる位間近に掲げて、二度三度と振りかざしながら訊ねます。
「何、何、リリア。これ、な~に? な~に?」
リリアは肩を落とし、背を丸めて縮こまってしまいます。
「何で、何で、隠したの?」
「知りません!」
リリアは眦を吊り上げ、口先をとがらせ、ソッポを向いてしまいました。
(開き直りやがった!)
改めて見ると、普通より小さめですが、やたらと豪華で可愛らしい封筒です。
(え~~!)
封筒の宛名が、まるで生きているかのように、思わず眼をつぶってしまいそうになる位の勢いで、飛び込んできやがりました。
そこに書かれていたのは……。
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