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42・どの口が言っているのですか。

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『デキタ! クライヤガレ!』

 そう言って、メイドさん達と顔を合わさないようにして、ソッポを向いてマルゲリータとマリナーラ、マリスペシャル二品をテーブルに置いたのは、マリではありません、ウルちゃんです。
 言葉遣いはマリの真似をして乱暴なのですが、尻尾が揺れているのは誤魔化せません。照れ臭いのですね。

『ウル、この「ピザ」って、どういうお料理なの?』

 メイドさんの問い掛けに、

『すげーうめー料理っス!』

 と、怒ったように言い捨てて、逃げるように戻って行ったウルちゃんに、

『ウル、調理服が似合っているわよ』『ウル、恰好いい!』

 と、追い打ちをかけて、メイドさん達は明るい笑い声を弾ませます。

『さあ、皆さん。熱いから気を付けて召し上がれ。ちょっと辛いですけど、このピメントオイルを掛けると、もっと美味しくなりますよ』
『はい! ロキエル様!「イタダキマス!」』

 給仕長に教わったのでしょう、元気よく日本式食前の挨拶をして、メイドさん達がピザに手を伸ばします。
 お偉いさん方に囲まれて、肩をすぼませて委縮していたメイドさん達ですが、目の前に置かれたピザを見て、香りを嗅いで、好奇心と食欲には勝てなかったのでしょう、打って変わって誰はばかることなく、

『あつっ、うわー! おいしー!』
『辛っ! あーでも、この辛さが良いわ。もっと掛けちゃえ!』
『ねぇ、ねぇ、こっちのも美味しいよ。食べてみて』

 陽気な声を上げながら勢い良く食べ始めました。
 実に楽しそうなのですが、一番楽しんでいるのは……こういう時って給仕長は良い顔するんだよなぁ~。

『ロキエル様、お待たせしました』

 お! ラビちゃんがパーティサイズラビスペシャルを運んできて、私の目の前に置いてくれました。

『ありがとう、私は今日コレを一番楽しみにしていたの』

 私が小声でお礼を言うと、

『マリ様には内緒ですね』

 ラビちゃんがオーブンの前にいるマリを盗み見て、肩をすくめて含み笑いを漏らします。

『ロキ! 何をコソコソと。まさか貴女、それ全部一人で食べる訳ではありませんよね?』

 はあ~、ココ様の言い草に呆れてしまいます。

『はい、皆さん、コレ、ラビちゃん特製の「ラビスペシャル」お野菜たっぷりのピザです。ちょっと癖のあるチーズを使っていますけど、美味しいですから食べてみて下さい』

 ココ様に当て付けるように、メイドさん達に取り分けてあげました。

『ロキエル様、ありがとうございます』

 あ~癒されます。とっても素直な良い娘たちです。
 ラビちゃんと入れ替わるようにして、ウルちゃんがパーティサイズウルスペシャルを運んできて、ココ様の前に……何だかお肉の量がパワーアップしています!?

『ココ様、きっと、お気に召す、と、思いますので、是非、ご賞味、下さい』

 だから、ウルちゃんには似合わないって、その言葉遣いは。ほ~ら、メイドさん達も目を白黒させているじゃありませんか。

『まあ、何て美味しそうなのかしら、わざわざわたくしの為に……ありがとう、ウル』

 ココ様はウルちゃんの手を、両手で包み込んで胸元に宛がいます。

『とんでもございま、せん。身に余る、御言葉でござい、ます』

 ウルちゃん尻尾をピンと立たせ、プルプル震わせています。何だかなぁ。

『あ、ココ様……』『おい、ココ……』
『何ですか! 貴男方は、これはウルが、わたくしにと作ってくれたピザですよ』

 魔王様と勇者が揃って伸ばした手を、ココ様が乱暴に振り払い自分の事は棚の上に放り投げて、とんでもない事を言います。

『意地汚いのにも程があります!』

 何言ってくれちゃってんの、アンタ。
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