9 / 11
紫電一閃 最後に咲くのは藤の花
秋華賞 古豪への足掛かり
しおりを挟む
秋華賞、秋の牝馬初戦。少女から大人へと成長した美しい乙女達が集うレースが今年もやってきた。ターフは青々とした芝生で秋を感じさせないが、風は涼しくなってきており季節の変化を感じる。一度しかレースに出られないクラシック戦。ティアラ路線は最後の冠、そして次は古豪と女王の証の奪い合いの勝負になる。
牝馬クラシック最終戦、秋の花型は誰となるのか。その答えはパドックを見れば一目瞭然だった。まだ勝負の行方は不明だと言うのに一際、輝く馬が2頭いる。鮮やかな夕焼けのように見栄えの良いシルキーモーヴと烏の濡れ羽色のように艶やかな光を放つニニアソネットだ。この2頭は春の頃からライバルで今回も名勝負を生むだろうとファンは確信に近い予感を漠然と胸に抱く。両者共に落ち着いているが闘志を溢れさせており、他の馬は近づくことすら出来ないだろう。
「やっぱり凄いな」
「だな、あの2頭が今年の世代代表だよ」
「オークス馬なら負けられないね!」
観客席ではそんな会話が交わされている。レース前のパドックには他にも人気どころの馬がおり、粒揃いである。しかし、競馬ファンの大半はあの2頭に釘付けだ。他の馬を応援している者達ですら、勝ち負けをするのはあの2頭のどちらかだろう、と認めざるを得ない。それほどまでに両者の仕上がりは素晴らしく、観客達はどちらが勝つか予想も出来なかった。
『今、各馬ゲートインが完了しました。最後に大外18番、シトリンアステールがゲートイン』
大きな音を立ててゲートが開く。それと同時に芝生と土を蹴り上げ走り出す。出遅れた者はおらず、綺麗にスタートを決めた。
まず先頭に立ったのは3番…と実況が各馬の名前を読み上げる。シルキーモーヴは現在、5番手と好位置に付けている。練習のかいがあって初めての先行策でも落ち着いた様子を見せている。それに解説の元騎手が言及する。
『今回シルキーモーヴは先行策。彼女はいつも逃げていたね。今回は控えて後ろに付けているから、これは作戦ではなく彼女の性格が落ち着いた証拠だろうね』
続いて6番、7番と続き最後方にニニアソネットがいる。後方待機は彼女の得意戦法であり、今日もそれを貫くつもりのようだ。そして1コーナーに入り、各馬は場所の良し悪しはあれど、ポジション争いを終わらせる。先頭集団は競り合うが後ろの方は比較的ゆったりとした展開となった。付かず離れず、各々の競馬をしながら向正面、4角へ向かって駆け抜ける。
残り600m付近、ここから一気にペースが上がる。今まで溜め込んでいたエネルギーを放出するかのように全力で走る。特に追い込み型の豪脚は見物である。
『団子状態の大接戦!ここで抜けてくるのはシルキーモーヴとニニアソネットの二強だ!』
アナウンサーの声が響き渡り、競馬場全体のボルテージが上がる。歓声が上がり、熱狂が渦巻く中、シルキーモーヴとニニアソネットはゴール前で大接戦。激戦の末、写真判定に持ち込まれるがそこでも審議が長引いてしまう。議論の末、勝ったのは
『シルキーモーヴ!二着にニニアソネット!!桜の女王はやはり強かった!』
アナウンサーの声が響くと同時に観客席から悲鳴のような歓声が上がる。一番人気と二番人気の決着となり、馬券を当てた者や応援していたファンの歓喜で地鳴りのように揺れる。掲示板には写真判定の結果が表示され、ニニアソネットにハナ差で勝利を飾ったことが告げられる。
牝馬クラシック最終戦、秋の花型は誰となるのか。その答えはパドックを見れば一目瞭然だった。まだ勝負の行方は不明だと言うのに一際、輝く馬が2頭いる。鮮やかな夕焼けのように見栄えの良いシルキーモーヴと烏の濡れ羽色のように艶やかな光を放つニニアソネットだ。この2頭は春の頃からライバルで今回も名勝負を生むだろうとファンは確信に近い予感を漠然と胸に抱く。両者共に落ち着いているが闘志を溢れさせており、他の馬は近づくことすら出来ないだろう。
「やっぱり凄いな」
「だな、あの2頭が今年の世代代表だよ」
「オークス馬なら負けられないね!」
観客席ではそんな会話が交わされている。レース前のパドックには他にも人気どころの馬がおり、粒揃いである。しかし、競馬ファンの大半はあの2頭に釘付けだ。他の馬を応援している者達ですら、勝ち負けをするのはあの2頭のどちらかだろう、と認めざるを得ない。それほどまでに両者の仕上がりは素晴らしく、観客達はどちらが勝つか予想も出来なかった。
『今、各馬ゲートインが完了しました。最後に大外18番、シトリンアステールがゲートイン』
大きな音を立ててゲートが開く。それと同時に芝生と土を蹴り上げ走り出す。出遅れた者はおらず、綺麗にスタートを決めた。
まず先頭に立ったのは3番…と実況が各馬の名前を読み上げる。シルキーモーヴは現在、5番手と好位置に付けている。練習のかいがあって初めての先行策でも落ち着いた様子を見せている。それに解説の元騎手が言及する。
『今回シルキーモーヴは先行策。彼女はいつも逃げていたね。今回は控えて後ろに付けているから、これは作戦ではなく彼女の性格が落ち着いた証拠だろうね』
続いて6番、7番と続き最後方にニニアソネットがいる。後方待機は彼女の得意戦法であり、今日もそれを貫くつもりのようだ。そして1コーナーに入り、各馬は場所の良し悪しはあれど、ポジション争いを終わらせる。先頭集団は競り合うが後ろの方は比較的ゆったりとした展開となった。付かず離れず、各々の競馬をしながら向正面、4角へ向かって駆け抜ける。
残り600m付近、ここから一気にペースが上がる。今まで溜め込んでいたエネルギーを放出するかのように全力で走る。特に追い込み型の豪脚は見物である。
『団子状態の大接戦!ここで抜けてくるのはシルキーモーヴとニニアソネットの二強だ!』
アナウンサーの声が響き渡り、競馬場全体のボルテージが上がる。歓声が上がり、熱狂が渦巻く中、シルキーモーヴとニニアソネットはゴール前で大接戦。激戦の末、写真判定に持ち込まれるがそこでも審議が長引いてしまう。議論の末、勝ったのは
『シルキーモーヴ!二着にニニアソネット!!桜の女王はやはり強かった!』
アナウンサーの声が響くと同時に観客席から悲鳴のような歓声が上がる。一番人気と二番人気の決着となり、馬券を当てた者や応援していたファンの歓喜で地鳴りのように揺れる。掲示板には写真判定の結果が表示され、ニニアソネットにハナ差で勝利を飾ったことが告げられる。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/contemporary.png?id=0dd465581c48dda76bd4)
体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
【ショートショート】おやすみ
樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
◆こちらは声劇用台本になりますが普通に読んで頂いても癒される作品になっています。
声劇用だと1分半ほど、黙読だと1分ほどで読みきれる作品です。
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【フリー台本】朗読小説
桜来
現代文学
朗読台本としてご使用いただける短編小説等です
一話完結 詰め合わせ的な内容になってます。
動画投稿や配信などで使っていただけると嬉しく思います。
ご報告、リンクなどは任意ですが、作者名表記はお願いいたします。
無断転載 自作発言等は禁止とさせていただきます。
よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる