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辺境伯4

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走り出してから後悔した。

体も足もヌルヌルまみれの私は、おもいっきり前のめりに転んでしまった。

「うぅっ…」

上手く受け身が取れなかった。
もう蹴るのは無理だわ。今からじゃ間に合わない。
トーマは銃を握れないし、作戦失敗よ。

「…この小娘っ」

鬼のような形相で私を睨む辺境伯は、胸元から銃を出した。

やっぱりもう一丁くらい持ってるわよね。

何とか、さっき辺境伯か落とした銃を掴んだけれど、私は撃てる体勢にない。

「死ねっ!」

駄目、避けられない!!

パンパンパンパンッ

「ぐっ……」

銃声がして、辺境伯が胸元を押さえて倒れた。

「ルーナっ!!怪我はっ!?」

トーマが銃を捨てて私の元へ走ってきた。

「私は大丈夫よ。トーマは!?」
「よかった!!」

私はトーマにぎゅっと抱き締められた。

「貴方が撃ったのよね…?」
「ああ。」

何だかおかしいわ…。右手にべっとり血が付いていたのに、どうして今右手で銃を撃てたの…?それに、トーマの顔が真っ青だわ。

とりあえず考えるのは後よ。

「城が爆破されるんでしょう?早くここから出ましょう!」

フレッド君には来た道を戻るように伝えないと。

「ルーナ、先に行け……」

そう言って、トーマは倒れてしまった。

「トーマっ!!貴方…」

鏡越しではわからなかったけど、袖口から血が流れてたんじゃない。脇腹を撃たれて、傷口をおさえてついた血だったんだわ。

「待ってて!」
「ルーナ、俺に構わず逃げろ」
「駄目よ!」
「お互い、助け合わないって、約束だ。…そうだろう」

そうよ、私が言った事だけど…

「嫌よ。貴方とここを脱出するわ。」

脇腹を見るけれど、弾はかすっただけに見える。

「トーマ、どこを撃たれたの?おしえてっ!!」

全身をみると、べっとりとズボンの生地が脚に張り付いていた。
立ってるのだってやっとだったはずなのに、銃を撃ってから私の所まできたのよね。
歩けるんだから、神経が切れてたりはしない。きっと、きっと大丈夫よ!

私はテーブルの上にあるナプキンをトーマの足に巻き付けてから、廊下に出て叫んだ。

「誰かきてーーーっ!!」

どうして、何故トーマが1人でここにいるのよ!
ヘンリーは、護衛達はどうしたのよっ!!

もし皆が死んでいたとしたら、ここに来てくれる人はいない。私が何とかするしかない。
時間を掛ければ私でも運び出す事はできるかもしれない。でも、それじゃ間に合わない!

せめて、応急処置出来る人に……

そうだ!フレッド君ならきっと出来る!
護衛長の息子なんだから、他の兵士よりもきっと体の事を知ってるはずよ!

「トーマ、頑張って!」
「早く逃げろ…」
「絶対に嫌よ。」
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