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辺境伯3

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銃声…

フレッド君の方を見ると、『下りて来て、早く!』と口を動かして私に手を伸ばしている。
下りた方がいい、そう思うけど出来なかった。

「久しぶりだな、ラッセン」

辺境伯の声!?
答えはないけど、話しかけてる相手はトーマだ。

トーマはどうして攻撃しないの?さっきの銃声、もしかして撃たれてるの?
辺境伯は喋れる余裕があるんだから、トーマの方が不利な状況なのはわかる。

フレッド君は上って来れない。それが出来るなら私より先に上ってたはずだもの。

何とかしないと、ここに敵を誘き寄せたのは私なんだから。

壁を5㎝ほど押して様子を伺うと、辺境伯の姿が見えた。よく見るとその斜め奥にある鏡台には、うっすらとトーマがうつってる。

どうして銃をかまえていないの?

「っ!?」

トーマの右手の袖口から血が滴ってる。撃たれてる。もしかしたら、腕だけじゃないかもしれない。

「貴様の親父のせいで、計画は失敗した。」
「父はお前と違って頭の良い人だから、当然の結果だ。」
「だが、死んだ。俺が殺したんだ。妻を殺す所を見せてから、殺してやった。『妻だけは助けてくれ』と、泣いて頼まれたな。」
「……っ」

許せない…
何て非道な男なの。

「ルーナ・ラッセンも死んだ。」
「ルーナが…?」
「さっきの爆発で跡形もなく消し飛んだ。貴様と結婚などしなければ、悲惨な最後を迎える事はなかったのに。」

辺境伯がクスクスと笑っている。

トーマ!騙されちゃ駄目よ!そんな男に私が殺されるわけないじゃない!!

「そろそろだ。」

辺境伯が懐中時計を取り出してニヤリと笑った。

「この城に時限式の爆弾を仕掛けてある。あと5分で爆発する。貴様を探しに来た奴等も全滅だ。」
「お前は5分でこの城から逃げられるのか?そのブクブクに肥えた体じゃ無理そうだが。」
「ああ、心配は無用だ。絶対に崩れない通路がある。」

そう言って辺境伯がトーマに銃を向けたのを見て、私は思わず外へ出た。

お願いっ!間に合って!!
引き金を引こうとする辺境伯の手に、エメラルドのイヤリングを全力で投げた。

「痛っ!?」

見事命中!

「こっちよ!!」
「っ!?」

声に反応して、辺境伯が私の方を向いた。
その時を狙って、左耳のイヤリングを辺境伯の眼球めがけて全力で投げ付けた。
エメラルドのまわりには尖ったゴールドの装飾がついてる。あれが目に当たればただじゃすまない!

私のいる方は暗闇だから、辺境伯からはよく見えない。月明かりの中、暗闇から飛んでくるイヤリングを避けられるわけがないわ!

ガツッ
「グアッ…!?」

辺境伯は痛みで膝をついた。

よし!
踞った辺境伯の顔を蹴りあげて、銃を奪って脚を撃てば私の勝ちよ!!
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