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伏兵5

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パンッ

バルコニーの窓ガラスを撃つと、『ガシャーン』っと大きな音を立てて砕け散った。

銃声と硝子の割れた音で、この部屋に誰かいるのは気付くわ。最初に誰が来るかは解らないけど、辺境伯ではないはずよ。
あの男は絶対にトーマに執着してるもの。

バスルームに繋がるドアを開け背をつけて歩いていると、ガコっと少し飛び出た何か踏んでしまった。
「へ?」
壁がクルリと回転して、私はそこに転がり落ちた。

「痛たた……」

なだらかな傾斜だったから助かったけど、階段だったら死んでいたわ。
結構深くまで落ちたよね。
ランプもないから真っ暗だし、何も見えない。銃も落としてしまった。敵を誘き寄せておいて武器がないなんて、最悪。

とにかくここから出ないと…とは思うけど、部屋に戻るのは無理そう…。斜面がヌメヌメしてるもの。臭くはないし油では無さそうだけどね。
這い上がれないようにしてあるなら、これは隠し通路じゃなく敵を陥れる為の罠なのかも…。

とりあえず、手探りで進んでいくしかないよね。

・・・・

ルーナを隠し通路まで見送って5分ほどだった時、ドーンと大きな音がして床が震えた。

「爆発かっ?」
「みたいだな。」
「ルーナはっ!?」

あの隠し通路が崩れてしまえば逃げられなくなるし、最悪生き埋めになる。

「まぁ、焦るな。今行ったところで、もうあの場所にはいない。」
「…わかってる。」

心配だが、今は辺境伯を殺す事を考えよう。それが1番のルーナを護る手段だ。

「爆発は建物の地下からだ。」
「地下に誰も見張りはいないのか?」
「そんなわけ無いだろう。ただ、この城と環境を熟知してたのは、俺達より辺境伯だったって事だ。どこからか、ここに繋がる道がある。」

パンパンッ

「ラッセン、考えるよりまわりを見てろ。」
「…そうだな。」

ヘンリーが男を2人撃ち殺した。どちらも港の警備兵に似ている気がする。

「北の港の警備兵は、全員辺境伯が意図してあの場所に配置してたのか…。そりゃ、フレッドが左遷理由を探すのに苦労するはずだ。」

ヘンリーが死体を蹴ると、黒髪のウィッグがとれた。

「変装してはいるが、どっちも双子だ。この顔の警備兵には右手に黒子がある。だが、こいつにはない。」

思わぬ伏兵、フレッドの言う通りだ。

「……ヘンリー、この辺りの水源は全部調べてあるのか?」

城への隠し通路が、必ずしも歩ける道とは限らない。

「水源じゃなくても、下水でもどこでも良い。そこを泳いで入ってこれる。」

王都にいる兵士で、泳法訓練を受けてるのは一握りだろう。けど、漁師や海沿いに住んでいる人は泳げる。北の港で働いていた兵が混じっていたなら可能性はある。
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