上 下
231 / 303

雨上がりの夜

しおりを挟む
結局誰にも助けてもらえなくて、トーマと私は2人で別の部屋に移った。

色々聞かれる前に、こちらから質問攻めにするわ!

「トーマは何をしにここへ来たの。仕事があるから視察には来れないって言ってたのに。」
「ルーナがまたよからぬ事に首を突っ込んでる予感がしたからだ。」
「予感って……、何故『巻き込まれてる』という発想じゃないのよ。」
「巻き込まれたのか?」
「ええ。」

これは良い方向へ話が流れてるかもしれないわ。当初の計画通りに言い訳できるもの。

「今日、散歩をしていたら襲われたの。けど、護衛が護ってくれたわ。その犯人た」
「大丈夫なのか!?」
「…ええ」

そう返事をすると、ギュっとトーマに抱き締められた。

「はぁ…、怪我がなくて良かった。」
「……」

ここから本格的に言い訳スタートだったのに、こんなに心配されると心が痛むわ…。

「心配しなくても大丈夫よ。」
「大丈夫だとしても心配はする。笑顔で見送って、2度と帰ってこない事だってあるのが現実だからな…。」
「…そうね。」

両親が殺されてるんだし、同じような事になったらどうしようって不安になるのは当然よね。
少し無神経だったかもしれない。
仕方ない、今回は諦めて怒られよう…。

トーマに説明しようとした時、激しくドアを叩く音がした。

ドンドンドンッ
「2人とも急いで出てきてくださいっ!火事ですっ!!」

パウロが焦って私達を呼んでいる。

「ルーナ、逃げるぞ!急げっ!!」
「うん!」

私達が急いで部屋を出ると、バシャッと勢いよく水を頭から浴びせた。
普通なら驚くところだけど、天井を這う真っ黒な煙を見て私は声すらでなかった。

「お二人とも失礼します!!」
「っ!?」
「何を…っ」

パウロは私達に濡れた厚い布をかぶせてから、右腕でトーマ、左腕で私を抱えた。

「目を閉じて、息はしないでください。」

私達が返事をする間もなく、パウロは真っ黒な煙の中に突っ込んで行った。

水に濡れた布をかぶってるからましだけど、それでも熱い。もしかしたら逃げられないかもしれない。

暫くすると体の揺れが止まった。

「もう大丈夫です。」

パウロに言われ目を開けると、既に宿の外にいた。

「2人とも怪我はありませんか?」
「私は大丈夫よ。」
「俺もだ。パウロは?」
「問題ありません。それより、早くここから移動しましょう。」

沢山の兵士に囲まれて歩いていると、マイセンが泣きそうな顔で駆け寄ってきた。

「トーマ様!奥様!ご無事でよかった!!」
「大丈夫だ。それより、すぐにここを離れる。」
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

隠密スキルでコレクター道まっしぐら

たまき 藍
ファンタジー
没落寸前の貴族に生まれた少女は、世にも珍しい”見抜く眼”を持っていた。 その希少性から隠し、閉じ込められて5つまで育つが、いよいよ家計が苦しくなり、人買いに売られてしまう。 しかし道中、隊商は強力な魔物に襲われ壊滅。少女だけが生き残った。 奇しくも自由を手にした少女は、姿を隠すため、魔物はびこる森へと駆け出した。 これはそんな彼女が森に入って10年後、サバイバル生活の中で隠密スキルを極め、立派な素材コレクターに成長してからのお話。

最恐魔女の姉に溺愛されている追放令嬢はどん底から成り上がる

盛平
ファンタジー
幼い頃に、貴族である両親から、魔力が少ないとう理由で捨てられたプリシラ。召喚士養成学校を卒業し、霊獣と契約して晴れて召喚士になった。学業を終えたプリシラにはやらなければいけない事があった。それはひとり立ちだ。自分の手で仕事をし、働かなければいけない。さもないと、プリシラの事を溺愛してやまない姉のエスメラルダが現れてしまうからだ。エスメラルダは優秀な魔女だが、重度のシスコンで、プリシラの周りの人々に多大なる迷惑をかけてしまうのだ。姉のエスメラルダは美しい笑顔でプリシラに言うのだ。「プリシラ、誰かにいじめられたら、お姉ちゃんに言いなさい?そいつを攻撃魔法でギッタギッタにしてあげるから」プリシラは冷や汗をかきながら、決して危険な目にあってはいけないと心に誓うのだ。だがなぜかプリシラの行く先々で厄介ごとがふりかかる。プリシラは平穏な生活を送るため、唯一使える風魔法を駆使して、就職活動に奮闘する。ざまぁもあります。

異世界転移した町民Aは普通の生活を所望します!!

コスモクイーンハート
ファンタジー
異世界転移してしまった女子高生の合田結菜はある高難度ダンジョンで一人放置されていた。そんな結菜を冒険者育成クラン《炎樹の森》の冒険者達が保護してくれる。ダンジョンの大きな狼さんをもふもふしたり、テイムしちゃったり……。 何気にチートな結菜だが、本人は普通の生活がしたかった。 本人の望み通りしばらくは普通の生活をすることができたが……。勇者に担がれて早朝に誘拐された日を境にそんな生活も終わりを告げる。 何で⁉私を誘拐してもいいことないよ⁉ 何だかんだ、半分無意識にチートっぷりを炸裂しながらも己の普通の生活の(自分が自由に行動できるようにする)ために今日も元気に異世界を爆走します‼ ※現代の知識活かしちゃいます‼料理と物作りで改革します‼←地球と比べてむっちゃ不便だから。 #更新は不定期になりそう #一話だいたい2000字をめどにして書いています(長くも短くもなるかも……) #感想お待ちしてます‼どしどしカモン‼(誹謗中傷はNGだよ?) #頑張るので、暖かく見守ってください笑 #誤字脱字があれば指摘お願いします! #いいなと思ったらお気に入り登録してくれると幸いです(〃∇〃) #チートがずっとあるわけではないです。(何気なく時たまありますが……。)普通にファンタジーです。

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

底辺おっさん異世界通販生活始めます!〜ついでに傾国を建て直す〜

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 学歴も、才能もない底辺人生を送ってきたアラフォーおっさん。  運悪く暴走車との事故に遭い、命を落とす。  憐れに思った神様から不思議な能力【通販】を授かり、異世界転生を果たす。  異世界で【通販】を用いて衰退した村を建て直す事に成功した僕は、国家の建て直しにも協力していく事になる。

異世界道中ゆめうつつ! 転生したら虚弱令嬢でした。チート能力なしでたのしい健康スローライフ!

マーニー
ファンタジー
※ほのぼの日常系です 病弱で閉鎖的な生活を送る、伯爵令嬢の美少女ニコル(10歳)。対して、亡くなった両親が残した借金地獄から抜け出すため、忙殺状態の限界社会人サラ(22歳)。 ある日、同日同時刻に、体力の限界で息を引き取った2人だったが、なんとサラはニコルの体に転生していたのだった。 「こういうときって、神様のチート能力とかあるんじゃないのぉ?涙」 異世界転生お約束の神様登場も特別スキルもなく、ただただ、不健康でひ弱な美少女に転生してしまったサラ。 「せっかく忙殺の日々から解放されたんだから…楽しむしかない。ぜっっったいにスローライフを満喫する!」 ―――異世界と健康への不安が募りつつ 憧れのスローライフ実現のためまずは健康体になることを決意したが、果たしてどうなるのか? 魔法に魔物、お貴族様。 夢と現実の狭間のような日々の中で、 転生者サラが自身の夢を叶えるために 新ニコルとして我が道をつきすすむ! 『目指せ健康体!美味しいご飯と楽しい仲間たちと夢のスローライフを叶えていくお話』 ※はじめは健康生活。そのうちお料理したり、旅に出たりもします。日常ほのぼの系です。 ※非現実色強めな内容です。 ※溺愛親バカと、あたおか要素があるのでご注意です。

異世界王女に転生したけど、貧乏生活から脱出できるのか

片上尚
ファンタジー
海の事故で命を落とした山田陽子は、女神ロミア様に頼まれて魔法がある世界のとある国、ファルメディアの第三王女アリスティアに転生! 悠々自適の贅沢王女生活やイケメン王子との結婚、もしくは現代知識で無双チートを夢見て目覚めてみると、待っていたのは3食草粥生活でした… アリスティアは現代知識を使って自国を豊かにできるのか? 痩せっぽっちの王女様奮闘記。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

処理中です...