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雫4(残酷表現があります)

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「トーマ様。こちらを。」
「ああ。」

マイセンが俺にハンカチを差し出した。
強く殴りすぎたのか、手に傷がついて血が出ていた。

「侯爵、雨が降っている間にこの男に問い質したい事はありませんか?子供の体は見つかりません、だからそれ以外で…。」

体…、それは邸の中に生きていた子供はいないという事か。

「1つある…」
「どうぞ。」
「さっき言ってた『あいつ』とは誰だ?」

もし、主犯が別にいるなら、この男を捕まえてもまたどこかで同じ事が起きる。

「答えろ。」
「侯爵、ここからはのではなく、んです。メグさんマフさん、この男を少し押さえつけてくれますか。」

フレッドに言われてメグとマフと呼ばれる2人は、床に子爵を押し付けた。

「侯爵は席をはずした方がいいかもしれません。」
「いや、問題ない。」

俺の斜め後ろにいた護衛が心配して話しかけてきたが、フレッドがまともな聞き方をするとは思っていないし、今はそれでいいと思っている。

フレッドが笑顔で取り出したのは、さっきドアの鍵を開けた金属の棒。そこからもう一本、太い針のようなものが出てきた。

「メルフス子爵、自己紹介が遅れて申し訳ありません。僕はフレッド・マーフィーと申します。マーフィー伯爵家の三男坊、ただの冷飯食いです。」
「……護衛長の息子がどうして…」
「そんな事はどうでもいいですよ。さぁ、ラッセン侯爵の質問に答えてください。」
「……」

可愛い笑顔て話すフレッドだが、16才の子の威圧感じゃない。

「僕、同じ質問を2度するのは好きじゃないんですよ。」

フレッドは子爵の左手を掴むと、中指の爪と肌の間に針を押し込んだ。

「ぎゃぁぁっ!!」
「これ、ちょっと痛いでしょ。爪はあと19枚あるし、もう少し我慢してみますか?今答えるなら、一先ずこれで終わりだけど。」
「あぁあああっ!!……言うっ!言うから止めてくれ!!」
「誰?」
「セレンティスっ!セレンティス…クリムだ!」

クリム…
ソフィア・ネルソンの兄弟か…。

「その男とはどんな関係?」
「狩りの事がバレて…脅された。狩り以外は全部あいつの命令だっ!」
「ふーん。まぁ、今は信じてあげるよ。」

子爵を押さえつけていた2人が子爵に手錠をかけた。

「メルフス子爵、もしレオン兄さんの拷問フルコースに耐えれたら無罪放免にしてあげる。僕、優しいからね。」
「子供を殺したくらいで、拷問なんて出来るわけがない!私は貴族だぞ!!」
「だから何?マーフィー家にそんなの通用しないよ。」

フレッドが子爵の爪に刺していた針をポイっと棄てた。

「どんな屈強な男でも、途中で『殺してくれ』…って、懇願するメニューだよ。僕は最後まで生きぬいた人間を見た事ないかな。まぁ頑張ってね。」

そう言ったあと、フレッドが窓の外を見た。

「侯爵、そろそろ雨があがります。俺達は港へ行きましょう。」
「ああ…」

この男を苦しめても、子供の命は帰ってこないと思うと遣る瀬ない。
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