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雫(残酷表現があります)

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「王都から港まで行く途中、ラッセンうちの馬車は進めなくなった。その境界線が、子爵邸へと繋がるブロック。何故同じ通りで劣化速度に大きな違いがでたと思いますか?」
「利用頻度の差でしょう。」
「面白い冗談ですね。港から王都まで、商人は大量に荷を運ぶ。そこまで差が出るはずがない。一部修繕をしているのは明らかだ。」
「偶然ですよ。」

フレッドが言ってたようにここが変態の巣窟なら、王都から貴族やある程度の金持ちが訪れる。
となると、その道だけは必ず修繕する。
この男が港の事件と関わっているなら、港へは船で移動しているんだろう。そうすれば、誰にも知られずに動ける。道が劣化してるのにも気付かないのは納得がいく。

「このまま喋っていたって埒があかない。今後はこちらで対処させてもらう。」
「対処って、侯爵に何の権限があってそんな事が出来るのですか?」
「助力を求めたのはそちらですよ。子爵の許可は既におりていると思いましたが、違いますか?」
「……」
「まず領地改革のために、狩り場は閉鎖します。」
「道の修繕と狩り場は何の関係もありません。」
「何故そう言い切れる?不景気の原因を調べても解らなかったんですよね?」
「…申し訳ありません。侯爵の手を煩わせる事は出来ませんので、こちらで全て進めます。助言、ありがとうございました。」

この反応、狩り場に何か証拠が残ってるのは確実だな。

「王都への荷運びが上手くいかないと、物価の上昇にも繋がる。子爵が領土の管理が出来ないせいで問題が起きれば、相談された私の能力も問われる。もう、子爵が何を言っても無駄です。指揮はこちらでとらせてもらいます。」
「いくら侯爵といえど、そんな勝手な事が許されるはずがない!!」
「では、訴えればいい。ラッセンに喧嘩を売るなら、いつでも買ってやる。」
「私にだって他にも友人がいます。」
「一緒にを楽しむ友人が、子爵を助けるとは思いませんが。」
「狩りの仲間ではありません。」
「なら、ここへ連れてきた子供達が助けてくれるとでも?」
「っ!?」

この男を雨が止むまでに捕らえるのは難しくはない。
だが、俺自身で確実な証拠を押さえたい。その方が、後々回ってくる仕事を減らせる。

だが、この邸の臭いの元を辿るのは正直に言えば怖い。

耐えられないくらいの不快な臭い。

昔、何かの本で読んだ事がある。一度こびりついた腐臭はなかなか消えないと。

『一生肉が食べられなくなる。』

考えたくはないが、フレッドの言葉と合わせれば、恐らく人肉だ…。

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