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演技力2

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捕まえる事を目的にすると、兵士はやりにくくなる。けれどラッセン侯爵夫人を護るという体なら問題ないわ。権力は時と場合で使い分けるもの。今はがっつり使う時。

「事件がこれ以上大きくなる前に、私達で止めるわよ。」
「……はい。」

4人の護衛から『止めたって無駄だな』…と、聞こえてきそうだわ。

「今から金貨を10枚落とすから、注意深く見ててね。」
「わかりました。」

護衛達はしぶしぶ了解してくれた。

「キャッ!!」

私はわざと躓いて転んだ。

「いったぁーい…」
「お怪我はございませんか?お嬢様。」
「大丈夫じゃないわよ!早く起こしてちょうだいっ!」

こんな女にはなりたくない…という女を演じるのは、結構辛いわね。

「お金が落ちちゃったわ。拾ってきて。」

落ちた金貨を拾って私の元へ届けてくれた人は5人。8枚返ってきたけれど、2枚は拾って逃げられた。

「荷物をおいて2人1組でそれぞれ後をつけて。金貨を取り返したら、20mくらい離れた場所から私の近辺を監視して。カスターナが帰ってきたから行って大丈夫よ。」

私の指示に従って、皆動いてくれた。

「ちょっ、あんた達!」
「いいのよ、カスターナ。私が指示したの。」
「どういう事ですか?」
「振り向かずに聞いて。カスターナの少し後ろにいる灰色のキャスケットの男の子、あの子はさっきからずっと私達についてきてるの。」
「まぁ、そうですね。」

やっぱり、護衛達は気づいてるよね。

「あの子、お金持ちを探して薬を売りたいのよ。」
「オッサン4人が怖くて近付けなかったという事ですか?」
「そう、だから少し離れて貰ったの。あの子は私が金貨を沢山持ってるのも知ってるから、確実に声をかけてくるわ。」
「こんな事をして、怒られますよ。」
「バレなければ問題もないわ。」
「それは、犯罪者の心理です。」

カスターナと話していると、キャスケットの男の子が近付いてきた。

「ケガはありませんか?」
「足から血が出たわ。」
「ボク、薬持ってるのでよかったら買ってくれませんか?」

薬って言っちゃうところが子供なのよね。捕まるのは当たり前だわ。

「効くの?」
「はい、痛みもなくなるんです。」
「へぇ、凄いわね。いくら?」
「20コンガ(2千円)です。」

最初は安く売って、中毒にしてから高値で売る。まぁ、常套手段ね。
金貨を10枚、ばらまいた効果はあったわ。
私を金蔓だと思い込ませる事が出来た。きっと、私達のやり取りを見てる大人はいる。それを探さないと。
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