192 / 295
関係ない
しおりを挟む
空気が冷たい。
王都を離れて5日、陛下が狙われたという伝令が入ってきた。陛下の直筆で『至急引き返せ』と書いてあったが、そんな事をすれば相手の思うつぼだ。
護衛長である俺や、マーフィー一族がわざわざ辺境に行く目的は1つ。
辺境伯…ボルディア家の血を絶やす為。
ここ数日、トーマ君が登城しなかったのは、俺にとっては好都合だった。
俺が動くのを知れば、最悪の事態を予想して、『子供は殺さないでくれ』と言いに来ていただろう。
それはそれでやりにくい。
公爵の件でラッセンの力と名は、他の貴族より更に拡大する。
解りやすい褒美を貰わなかったトーマ君は、よく考えている。
他と差がつきすぎると、今度は王よりも侯爵家を指示する者が増える。侯爵が王を支えても、それを不満に思う者が出てくる。突出した権力は平穏の妨げになる。
今の王太子が王になる時にトーマ君がいてくれて良かった。同世代に頭の切れる子がいると助かる。
その辺りはヘンリーでは役に立たないし、レオンは性格が俺より悪いからおすすめできない。
それにしても、王の殺害計画か…。
本来なら辺境伯は領内にいて白をきるのが一番だろうが、この時期に仕掛けてくるのを考えれば、辺境伯は領地にいないな…。まぁ、帰って誰1人世継がいなければ、結局何も得ないまま死んでいくのだからそれでいい。
雪が積もる前に、とりあえずボルディアの後を継ぐ男の首だけ持って、俺だけ先に帰ればいい。
辺境と隣国との状況がどのような物か、情報は入っている。
隣国シュガーテと辺境は確かに通じてはいるらしい。
だが、辺境伯の思惑通りにはいかないだろう。
シュガーテは辺境伯を上手く利用して、この国が弱った所へ侵略するつもりだったんだ。
辺境伯に直接手を貸すのは、シュガーテで謀反を起こしたとされる殺人一族の生き残り。その数、ほんの500人弱。
ようは辺境伯が失敗すれば、見て見ぬふりを決め込むつもりだ。だから自国の兵は動かさない。失敗した時に『関係ない』と言いきれる、捨てゴマだけを辺境伯につけた。
まぁ、これくらい考えればすぐに解りそうだけど、それが解らない可哀想なボルディア君だ。今でも、シュガーテが助けてくれると思っているだろう。
辺境伯の末っ子は何歳だっただろう。10か12だったな。どちらにしても助ける事は不可能だ。
トーマ君とルーナは人の恨みがどれ程恐ろしいものか、それを甘く見すぎてる。
まぁ、トーマ君は両親が殺されたと知っていても、家の事を考えて耐えていた子だ。頑張れば、誰でも家族の死を乗り越えられると思っているかもしれない。
だが、我が儘に育った馬鹿息子にそれは無理だ。
子供を殺す。残酷だと言われてもかまわない。その上で成り立つ平和があるからだ。
それから7日後、俺はボルディアの長子の首を、陛下のもとへ持ち帰った。
「ボルディア辺境伯はいませんでした。おそらく王都近辺に隠れているかと思われます。」
「雪が降れば帰れなくなるな。」
「はい。もう後がないと知れば、必ず行動に出るかと…。」
辺境伯の行き先だが、大体予想はつく。
延期されていた、ランスロットの開くパーティーだ。それまでに見つけられるかどうか…。
既に陛下を殺す事は不可能だ。
それでも誰かを殺して憂さを晴らそうとするだろう。
逆恨みをして、ラッセン夫妻を殺しに行くのは簡単に予想できる。
ルーナと都で口喧嘩をしてしまった事でかなり計画は狂っただろうし、もともと先代の侯爵夫妻が計画の邪魔をしていなければ、もっと早い段階で何かしら行動に出られたはずだからな。
パーティーまで20日ほどだ。
そこで待ち伏せるのが1番効率が良いが、辺境伯も正面から突っ込んでくるほど愚かでは無いだろう。
王都を離れて5日、陛下が狙われたという伝令が入ってきた。陛下の直筆で『至急引き返せ』と書いてあったが、そんな事をすれば相手の思うつぼだ。
護衛長である俺や、マーフィー一族がわざわざ辺境に行く目的は1つ。
辺境伯…ボルディア家の血を絶やす為。
ここ数日、トーマ君が登城しなかったのは、俺にとっては好都合だった。
俺が動くのを知れば、最悪の事態を予想して、『子供は殺さないでくれ』と言いに来ていただろう。
それはそれでやりにくい。
公爵の件でラッセンの力と名は、他の貴族より更に拡大する。
解りやすい褒美を貰わなかったトーマ君は、よく考えている。
他と差がつきすぎると、今度は王よりも侯爵家を指示する者が増える。侯爵が王を支えても、それを不満に思う者が出てくる。突出した権力は平穏の妨げになる。
今の王太子が王になる時にトーマ君がいてくれて良かった。同世代に頭の切れる子がいると助かる。
その辺りはヘンリーでは役に立たないし、レオンは性格が俺より悪いからおすすめできない。
それにしても、王の殺害計画か…。
本来なら辺境伯は領内にいて白をきるのが一番だろうが、この時期に仕掛けてくるのを考えれば、辺境伯は領地にいないな…。まぁ、帰って誰1人世継がいなければ、結局何も得ないまま死んでいくのだからそれでいい。
雪が積もる前に、とりあえずボルディアの後を継ぐ男の首だけ持って、俺だけ先に帰ればいい。
辺境と隣国との状況がどのような物か、情報は入っている。
隣国シュガーテと辺境は確かに通じてはいるらしい。
だが、辺境伯の思惑通りにはいかないだろう。
シュガーテは辺境伯を上手く利用して、この国が弱った所へ侵略するつもりだったんだ。
辺境伯に直接手を貸すのは、シュガーテで謀反を起こしたとされる殺人一族の生き残り。その数、ほんの500人弱。
ようは辺境伯が失敗すれば、見て見ぬふりを決め込むつもりだ。だから自国の兵は動かさない。失敗した時に『関係ない』と言いきれる、捨てゴマだけを辺境伯につけた。
まぁ、これくらい考えればすぐに解りそうだけど、それが解らない可哀想なボルディア君だ。今でも、シュガーテが助けてくれると思っているだろう。
辺境伯の末っ子は何歳だっただろう。10か12だったな。どちらにしても助ける事は不可能だ。
トーマ君とルーナは人の恨みがどれ程恐ろしいものか、それを甘く見すぎてる。
まぁ、トーマ君は両親が殺されたと知っていても、家の事を考えて耐えていた子だ。頑張れば、誰でも家族の死を乗り越えられると思っているかもしれない。
だが、我が儘に育った馬鹿息子にそれは無理だ。
子供を殺す。残酷だと言われてもかまわない。その上で成り立つ平和があるからだ。
それから7日後、俺はボルディアの長子の首を、陛下のもとへ持ち帰った。
「ボルディア辺境伯はいませんでした。おそらく王都近辺に隠れているかと思われます。」
「雪が降れば帰れなくなるな。」
「はい。もう後がないと知れば、必ず行動に出るかと…。」
辺境伯の行き先だが、大体予想はつく。
延期されていた、ランスロットの開くパーティーだ。それまでに見つけられるかどうか…。
既に陛下を殺す事は不可能だ。
それでも誰かを殺して憂さを晴らそうとするだろう。
逆恨みをして、ラッセン夫妻を殺しに行くのは簡単に予想できる。
ルーナと都で口喧嘩をしてしまった事でかなり計画は狂っただろうし、もともと先代の侯爵夫妻が計画の邪魔をしていなければ、もっと早い段階で何かしら行動に出られたはずだからな。
パーティーまで20日ほどだ。
そこで待ち伏せるのが1番効率が良いが、辺境伯も正面から突っ込んでくるほど愚かでは無いだろう。
応援ありがとうございます!
24
お気に入りに追加
1,778
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる