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秘密
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ルーナがアーロとルーベンを招待した日、トーマは早朝から登城し仕事をしていた。
「何故殆んど進んでないんだ…。」
俺がいないと仕事が進まないなんて事はありえない。やる気のない奴しかいないなら、それは大問題だ。
そういう奴は、自分のやった事に責任をとろうとしない。失敗した時、最善を尽くす前に隠蔽する率が高い。
……仕事をするのは嫌いではないが、俺じゃなくても出来る仕事がここにある時点で、今の陛下の力のなさが伺える。仕事を仕切れていないんだから。
苛ついても仕方がない。損にしかならない。
13時に陛下に報告に行く事になっているので、俺は急いで仕事に取りかかった。
気が付けば12時40分を過ぎていた。
俺に与えられた部屋から10分ほどの所に陛下の執務室がある。正直に言うと、もう少し近いところにしてほしい。3回呼び出されれば往復で1時間。仕事の効率を考えた事がないのか…。
陛下の部屋の前には何故か衛兵がいない。
最低でも2人は常時いるはずだ。
何かあったのか?
ノックをせずにドアを開けるのは非常識だが、ほんの少し執務室のドアを開けてみた。
…?
ドアは5cmほど開いたが、それ以上は力を入れなければ開かない。
ほんの少しの隙間から覗いてみると、剣を持つヘンリーが見えた。
バンッ
おもいっきり力を入れてドアをあけると、ゴロンと何かが転がった。
「…っ!?」
それは首のない人間の体のだった。
部屋を見回すと護衛の隊服を着た男があと2人血を流して倒れている。
壁際には陛下と側近のクレイン様がいる。
「ヘンリー、一体何があった…?」
「陛下が狙われた。ラッセン、お前は大丈夫だったか?」
「ああ…。…これは、護衛隊か?」
「いや、こんな男達は見た事がない。それに、武器は異国の物だ。」
ヘンリーが死体から抜き取った短剣は、湾曲している。
「長剣ならうちにもあるが、短剣で湾曲した剣はこの国にはない。俺の剣を受け流す為と、切れ味のよさで選んだんだろう。」
短剣にべっとり付いた血を拭きながら、ヘンリーが俺に言った。
「ラッセン、銃は使えるか?」
「ああ。」
「ならこれを。人に向けて撃てと言っても無理だろうけど、ないよりましだ。」
ヘンリーが陛下とクレイン様にも銃を渡してはいるが、多分震えていて撃てないだろう。
まぁ、自分が狙われた上に、この惨状を見ていたなら無理もない。
「陛下、窓の側には近寄らないで下さい。」
2人が頷いたのを見てから、ヘンリーがドアを開けて『陛下が狙われた』と叫んだ。
その声を聞きつけ、執務室に衛兵が集まってきた。
この中に刺客がいたら、陛下が危ない。俺が思っているのにヘンリーが思わないわけがない。
1番最後に来た衛兵を見たとたん、ヘンリーは剣の鞘で衛兵の鳩尾を突いた。
「ぐはっ!」
吐いてその場に踞った男の髪の毛を掴んで顔を確認した後、後ろ手に手錠をかけた。
「どこの誰の命令なのか聞き出せ。手段は問わない。」
「ハッ!」
そう冷たく命令しているのを聞いて、やはり護衛長の息子だ…と、そう思ってしまった。
「何故殆んど進んでないんだ…。」
俺がいないと仕事が進まないなんて事はありえない。やる気のない奴しかいないなら、それは大問題だ。
そういう奴は、自分のやった事に責任をとろうとしない。失敗した時、最善を尽くす前に隠蔽する率が高い。
……仕事をするのは嫌いではないが、俺じゃなくても出来る仕事がここにある時点で、今の陛下の力のなさが伺える。仕事を仕切れていないんだから。
苛ついても仕方がない。損にしかならない。
13時に陛下に報告に行く事になっているので、俺は急いで仕事に取りかかった。
気が付けば12時40分を過ぎていた。
俺に与えられた部屋から10分ほどの所に陛下の執務室がある。正直に言うと、もう少し近いところにしてほしい。3回呼び出されれば往復で1時間。仕事の効率を考えた事がないのか…。
陛下の部屋の前には何故か衛兵がいない。
最低でも2人は常時いるはずだ。
何かあったのか?
ノックをせずにドアを開けるのは非常識だが、ほんの少し執務室のドアを開けてみた。
…?
ドアは5cmほど開いたが、それ以上は力を入れなければ開かない。
ほんの少しの隙間から覗いてみると、剣を持つヘンリーが見えた。
バンッ
おもいっきり力を入れてドアをあけると、ゴロンと何かが転がった。
「…っ!?」
それは首のない人間の体のだった。
部屋を見回すと護衛の隊服を着た男があと2人血を流して倒れている。
壁際には陛下と側近のクレイン様がいる。
「ヘンリー、一体何があった…?」
「陛下が狙われた。ラッセン、お前は大丈夫だったか?」
「ああ…。…これは、護衛隊か?」
「いや、こんな男達は見た事がない。それに、武器は異国の物だ。」
ヘンリーが死体から抜き取った短剣は、湾曲している。
「長剣ならうちにもあるが、短剣で湾曲した剣はこの国にはない。俺の剣を受け流す為と、切れ味のよさで選んだんだろう。」
短剣にべっとり付いた血を拭きながら、ヘンリーが俺に言った。
「ラッセン、銃は使えるか?」
「ああ。」
「ならこれを。人に向けて撃てと言っても無理だろうけど、ないよりましだ。」
ヘンリーが陛下とクレイン様にも銃を渡してはいるが、多分震えていて撃てないだろう。
まぁ、自分が狙われた上に、この惨状を見ていたなら無理もない。
「陛下、窓の側には近寄らないで下さい。」
2人が頷いたのを見てから、ヘンリーがドアを開けて『陛下が狙われた』と叫んだ。
その声を聞きつけ、執務室に衛兵が集まってきた。
この中に刺客がいたら、陛下が危ない。俺が思っているのにヘンリーが思わないわけがない。
1番最後に来た衛兵を見たとたん、ヘンリーは剣の鞘で衛兵の鳩尾を突いた。
「ぐはっ!」
吐いてその場に踞った男の髪の毛を掴んで顔を確認した後、後ろ手に手錠をかけた。
「どこの誰の命令なのか聞き出せ。手段は問わない。」
「ハッ!」
そう冷たく命令しているのを聞いて、やはり護衛長の息子だ…と、そう思ってしまった。
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