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お手伝い

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叔父に会いに行った日の夜、トーマは悩んでいた。


俺はルーナが好きなのか…。
離縁をすると言っておいて、手放したくないと思ってる。それを叔父に言い当てられて、何も言えなかった。結局、そういう事なんだろう。

レオンが俺を利用したくて、離縁させないよう行動していたのは知っている。俺はそれに腹を立てていたんだ。
だが、今考えれば違うな。
俺と離縁したら、ルーナはレオンと再婚させられる可能性がある。そこに腹を立てていたんだ。

…マイセンもミランダも、気付いてるだろう。となると、俺が1番自覚していなかった事になる。

今はルーナを大切に思っているが、それは家族へ向けるものと同じ感覚だと思っていた。だが、親子の愛情と妻への愛が、全く同じであるはずがない。それに気付かない自分が情けない。

父親に性格がそっくりだと言われるのも、女性の好みが似ているのも何だか恥ずかしい。

俺の気持ちはさておき、ルーナに『トーマと一緒にいたい』と言わせるのは不可能な気がする。
まず、今の俺には時間がない。
公爵の件で先陣を切ってしまった事で、やたらと俺に事後処理がまわってくる。

今じゃ侯爵家の仕事さえ完璧にこなせていない。
視察を叔父と従兄弟に任せられた事で、スケジュール的には楽になった。
ルーナに言われた通り、全てを話して良かった。そうでなければ、仕事が進まなかった。


「はぁ…」

不安な時に背を押してくれる存在がいる事、それがどんなに大切なのか今はよく解る。
侯爵夫人に求めるものが『度胸』なのも、今なら納得だな。

時間も問題だが、今さら俺はルーナにどう接すればいいんだ。この特殊な関係を打破して、好きになって貰う…。全く手段が思い付かない。

とりあえず、今日やるべき仕事をしよう。考えるのはそれからだ。



翌朝7時

寝たのが4時を過ぎていたから、殆んど眠れていない。流石に疲れた。

「トーマ、顔色が良くないけど、具合が悪いの?」
「いや、ただの寝不足だ。」
「今日は城に行かなくてもいいんでしょう?少し休んだ方がいいわ。」
「ああ、けど仕事は山ほどあるから、寝てるわけにもいかない。」
「…じゃあ、私も何か手伝うわ。」

心遣いは嬉しいが、多分無理だ。
資料や報告書には、俺が目を通してサインをしなければいけない。今ルーナに任せられる事は限られている。

「ルーナは、計算は得意か?」
「…苦手ではないわ。」
「自信はないんだな。」
「国語は得意よ。」
「ひたすら計算だ。」
「…ごめんなさい、お手伝いしたくありません。」

したくないのか…。

まぁ、素直なところは可愛いと思う。
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