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侯爵夫人2
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「そうか。話してくれて有り難う。」
「いいえ、こちらこそ申し訳ありません。」
おかしいわ。トーマは『同意してもらうのが難しい』と凄く悩んでいたのに、あまりにも事が上手く運びすぎてる。
「叔父様は、私とトーマ様の結婚に反対していましたよね?」
「まぁ、子が出来る前に紹介して欲しいとは思ったね。ラッセンを名乗る度胸がないなら妻に迎えるべきじゃない。」
「…仰る通りだと思います。」
まさに、叔父様が心配してた事は、私の言い訳と同じなのね。
これで、私はラッセン侯爵夫人に相応しくないと判断されるよね。
私には良い印象は残らなくてもいい、トーマの名誉を守れたもの。それは、私が勝利するための布石でもあるわ。シリウスや辺境伯の子を助けて、離縁を確実にするためのね。
トーマは絶対に叔父様の手を借りなければいけない時が来る。叔父様が培ってきた信頼や経験は、トーマと雲泥の差よ。それは時間をかけないと得られない物だから仕方がない。トーマが人を頼れないのも、その繋がりが築けてないからよ。トーマが人に頼れないぶん、叔父様の力を借りるわ。
損得勘定抜きでトーマを助けるほど、私もお人好しじゃない。そんな健気な女じゃないのよ。
「ルーナさんは頭の良い子だね。」
「……?」
どういう事かしら。この会話でこのお世辞は的はずれよね。
「成績はどうか知らないが、頭の回転の事を言っているんだよ。ルーナさんの状況判断は素晴らしい物だ。聞いていた以上にね。けど、やはりまだトーマもルーナさんも若いね。」
「どういう事でしょうか?」
「これからトーマが仕事に行き詰まった時、必ず私の助けが必要になる。それで君はこう思った。『トーマと叔父を仲違いさせるのは良くない』…と。勿論それは、トーマの為でもあるし、自分の為でもある。自分の目的を踏まえつつ、私を味方にするか敵にするか、君は選んだ。違うかな?」
何て事なの、完璧に見透かされてるじゃない。
叔父様は何をどこまで知っていて、こんな事を言うのかしら。
「トーマ様に責任はないとお伝えしたかっただけで、それ以外は何も考えていません。」
侯爵夫人の重圧に耐えられないという言葉を、信じてくれた訳ではないのね。
「ルーナさん、君は我が儘だと言われた事はないかい?自分が望んだ事は、必ずその通りにしてみせる。公爵の孫を助ける事も離縁の事も、1番上手くいきそうな道を選んだ。」
「私にそんな大それた決断は出来ません。」
上手くはめられたわ。叔父様は、優しい対応をして様子を伺っていたのよ。
「君がトーマの嘘を否定しないままなら、延期は許さず離縁させていたよ。延期は叶わなくても、離縁は確実に出来た。」
「何故、トーマ様が嘘をついてたと思うのですか?」
「トーマの嘘を、私が見抜けないと思うかい?私の兄にそっくりな性格をしている甥っ子だよ。」
物凄く単純な理由だけど、叔父様からすれば兄の思考回路を予想すればトーマの答えに行き着くという事ね。
「離縁は延期する。それは許可するし、サインもしよう。ルーナさんの目的は達しただろう?私の本題はここからだよ。2人が結婚した本当の理由が何か、教えてくれないかな?」
「……」
…最初から叔父様が聞きたいのは、『離縁したい理由』じゃなく『結婚の理由』なのね。
トーマの嘘が叔父様に通用しないなら、兄夫婦の事故死を不信に思っていたはずだわ。結婚だって、不自然だと思っていたのよ。
けど、トーマから聞き出す事は無理だと判断した。
だから、私に標的を絞った。
『離縁させてやるから結婚の意味を答えろ』と言えば早いのに、そうしなかった。
離縁を許す許さないは後でも変更出来るんだから、叔父様にとって然程重要じゃないんだわ。
私を品定めしつつ、上手く話を誘導されたのよ。
恐れ入るわ…。
「いいえ、こちらこそ申し訳ありません。」
おかしいわ。トーマは『同意してもらうのが難しい』と凄く悩んでいたのに、あまりにも事が上手く運びすぎてる。
「叔父様は、私とトーマ様の結婚に反対していましたよね?」
「まぁ、子が出来る前に紹介して欲しいとは思ったね。ラッセンを名乗る度胸がないなら妻に迎えるべきじゃない。」
「…仰る通りだと思います。」
まさに、叔父様が心配してた事は、私の言い訳と同じなのね。
これで、私はラッセン侯爵夫人に相応しくないと判断されるよね。
私には良い印象は残らなくてもいい、トーマの名誉を守れたもの。それは、私が勝利するための布石でもあるわ。シリウスや辺境伯の子を助けて、離縁を確実にするためのね。
トーマは絶対に叔父様の手を借りなければいけない時が来る。叔父様が培ってきた信頼や経験は、トーマと雲泥の差よ。それは時間をかけないと得られない物だから仕方がない。トーマが人を頼れないのも、その繋がりが築けてないからよ。トーマが人に頼れないぶん、叔父様の力を借りるわ。
損得勘定抜きでトーマを助けるほど、私もお人好しじゃない。そんな健気な女じゃないのよ。
「ルーナさんは頭の良い子だね。」
「……?」
どういう事かしら。この会話でこのお世辞は的はずれよね。
「成績はどうか知らないが、頭の回転の事を言っているんだよ。ルーナさんの状況判断は素晴らしい物だ。聞いていた以上にね。けど、やはりまだトーマもルーナさんも若いね。」
「どういう事でしょうか?」
「これからトーマが仕事に行き詰まった時、必ず私の助けが必要になる。それで君はこう思った。『トーマと叔父を仲違いさせるのは良くない』…と。勿論それは、トーマの為でもあるし、自分の為でもある。自分の目的を踏まえつつ、私を味方にするか敵にするか、君は選んだ。違うかな?」
何て事なの、完璧に見透かされてるじゃない。
叔父様は何をどこまで知っていて、こんな事を言うのかしら。
「トーマ様に責任はないとお伝えしたかっただけで、それ以外は何も考えていません。」
侯爵夫人の重圧に耐えられないという言葉を、信じてくれた訳ではないのね。
「ルーナさん、君は我が儘だと言われた事はないかい?自分が望んだ事は、必ずその通りにしてみせる。公爵の孫を助ける事も離縁の事も、1番上手くいきそうな道を選んだ。」
「私にそんな大それた決断は出来ません。」
上手くはめられたわ。叔父様は、優しい対応をして様子を伺っていたのよ。
「君がトーマの嘘を否定しないままなら、延期は許さず離縁させていたよ。延期は叶わなくても、離縁は確実に出来た。」
「何故、トーマ様が嘘をついてたと思うのですか?」
「トーマの嘘を、私が見抜けないと思うかい?私の兄にそっくりな性格をしている甥っ子だよ。」
物凄く単純な理由だけど、叔父様からすれば兄の思考回路を予想すればトーマの答えに行き着くという事ね。
「離縁は延期する。それは許可するし、サインもしよう。ルーナさんの目的は達しただろう?私の本題はここからだよ。2人が結婚した本当の理由が何か、教えてくれないかな?」
「……」
…最初から叔父様が聞きたいのは、『離縁したい理由』じゃなく『結婚の理由』なのね。
トーマの嘘が叔父様に通用しないなら、兄夫婦の事故死を不信に思っていたはずだわ。結婚だって、不自然だと思っていたのよ。
けど、トーマから聞き出す事は無理だと判断した。
だから、私に標的を絞った。
『離縁させてやるから結婚の意味を答えろ』と言えば早いのに、そうしなかった。
離縁を許す許さないは後でも変更出来るんだから、叔父様にとって然程重要じゃないんだわ。
私を品定めしつつ、上手く話を誘導されたのよ。
恐れ入るわ…。
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