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延期

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落ち込んでる場合じゃないわ。
ランスロット様に『辺境伯に狙われてるかもしれない』と伝えないと。
私から言うよりトーマから言って貰った方がいいかしら。公爵とのやり取りを上手く話せる気がしないし、ランスロット様を心配させてしまうかもしれないしね。

トーマに視線をおくると、小さく頷いてくれた。今度は通じたよね。

「アレン様、パーティーの直前にこんな事を言うのは心苦しいのですが、延期は出来ませんか?」
「延期?何か理由があるのかい?」
「アレン様には手を貸して頂きましたので、現状をお伝えします。マディソン公爵が不正をしていた事を陛下に伝えました。一昨日捕らえて、今は城内にある東の塔に入れられてます。」
「…やはりそうなったのか。」
「はい。私とレオンが公爵を捕らえたのですが、その時に『アレン様が辺境伯に狙われている』と言ってたのが気になって。…何か心当りはありませんか?」
「…辺境伯なのかはハッキリしないが、私の乗る馬車をつけていた者はいた。」
「十中八九、辺境伯で間違いありません。本人でないにしても、関係者でしょう。」

やっぱり狙われてるんだ。
パーティーがある事を辺境伯が知らないはずないわ。

「アレン様、パーティーは延期してくださいっ!」

絶対に危険な目にあわせたくない。トーマの両親も、ミランダの旦那さんも殺すような男だもの、ランスロット様を殺すのだって躊躇ったりしないわ。

「わかった。そうしよう。招待客に被害が出てしまう可能性も考えれば、仕方がない。」
「え…」

アッサリ納得してくれたので、少し拍子抜けしてしまった。

「ふふ、意外かい?」
「はい…。」
「今回のパーティーは商人や投資家が多い。みんな成功者だ。万が一、招待客が人質にされれば、物凄い量の身代金が手に入る。辺境が危機的状況なら、今欲しいものはお金だろうからね。」
「なるほど…。」

辺境伯は背水の陣で無茶をする可能性があるし、お金持ちのが集まるのは危険よね。
けど、『中止する』と言わないって事は、必要なパーティーなんだよね。いつなら出来るのかしら…。

どうしようか悩んでいると、トーマが話を続けてくれた。

「辺境伯の件ではマーフィー護衛長が動いていますので、そう長くはかからないと思います。」
「侯爵は真面目だね。だが、マーフィーは悪知恵の塊だから、時々は仕返しはしなさい。」
「…仕返し……ですか。」
「友人としては悪い奴ではないんだが、仕事では無情だ。私は一度頭にきて、レオンとルーナの婚約を邪魔したよ。」

それを聞いて、私とトーマは顔を見合わせた。

護衛長はお父様に断られたって言ってたよね。

「そうなるように仕向けたんだよ。」

言いたい事が顔に出てたのかしら…。聞きたかった答えが返ってきたわ。

一体どうやって邪魔したのかしら…。軍人の家系に娘を嫁に出したくない…って言って断ったようだけど、他にも意味があるって事よね。

チラッとレオン様を見ると、可愛い笑顔が返ってきた。

レオン様と結婚してたら、即日離縁してると思うわ。私が何を話しても、まともに聞いてくれなさそうだもの。

ランスロット様が何をしたか解らないけど、邪魔してくれて感謝するわ。
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