侯爵夫人は子育て要員でした。

シンさん

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「ルーナ、そんなに無理しなくてもいい。」
「……」

無理はしたくないけど、私の良心がね…。それに結末を知る事が出来ないのは生殺しだわ。

「トーマ、裁判の結果はどれくらいで解るの?」
「相手は公爵だからな…。王族とも繋がりはあるし、すぐにとは言えない。」
「そうよね。」

公爵を擁護する人はいないと思うけど、子供達の事もあるから簡単じゃないよね。

「とりあえず、今度トーマの叔父様に会いに行くわ。」
「本当に離縁を延期するのか?」
「トーマが私とさっさと離縁したいと思ってるのは解ってるわ。けど、少し考えさせて。」
「考えるのは問題ない。それにさっさと離縁したいとは思ってない。」
「1年の約束を縮めたんだから、何が理由だとしても『早く離縁したい』って事だと思うけど…。」

離縁すると決まってから、ラッセンの人達に会う事は無いと思ってたのに、最悪だわ。初代侯爵夫人…侯爵が亡くなってから仕事を引き継いでいたなら、頭がよくて度胸もあった人なのは解る。そんな人を妻に求めているなら私は違うわ。

「トーマ、私は強くないのよ。度胸は他の子達より少しはあるとは思うけど、それくらいの事でラッセン侯爵夫人を決めては駄目よ。叔父様を説得して!」

ラッセン家は恐ろしい一族なのよ。私に何とか出来るはずもないわ。

順調に離縁へ向かっていたはずなのに、直前に最大の難関だわ。

「ん?どうしたの?」

トーマが何とも言えない顔をしている。

「少しどころではないと思うぞ。」
「何が?」
「度胸の話だ。」
「少しよ。ミランダに比べたら、私なんてお子様レベルよ。」
「退役軍人と比べてどうする…。貴婦人の中では群を抜いてるんだ。それに『投石の修行』とやらも積んでるしな。」
「……」

そんなくだらない事、さっさと忘れてくれればいいのに。

「『病弱なルーナ』の設定に、『ネガティブ』っていうのも付け加えていれば良かったわ。」
「農家に弟子入り希望でネガティブはない。」
「…とりあえず、トーマは私が役に立たない女だとアピールし続けてね。」

トーマと話していると、珍しくミランダが会話に入ってきた。

「ルーナ様、離縁についての詳細は後にしましょう。」
「そうね。まず、ランスロット様の事を考えるわ。」

・・・・

ルーナはレオンの事を甘く見すぎてるわね。この男に情報が漏れれば、すぐに次の手を打たれる。

既に『叔父様に会いに行く』というのを聞いて、邪魔する手立てを考えているはず。

『叔父様』も頭のいい人なら、ルーナの性格を見抜く。反発するなら相手が公爵でも躊躇いなく突っ込んで行くのに、弱い者相手にはとことん弱い。

ルーナが良い子すぎて、それが全て裏目に出てるわ。

それに、度胸なら私よりルーナが上よ。公爵の件では、トーマ・ラッセンが後から来る事をルーナは知らなかった。
どう考えても勝算の無い勝負に、たった一人で挑む勇気は私にはない。

私の考えを見通すように、レオンが笑っていた。


邸に帰ったら、とりあえずレオンを一発殴ろう…。
そう心に決めたミランダだった。
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