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楽しい茶会

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「ラッセン侯爵、協力感謝致します。私はこのまま後ろに控えておりますので、お話を進めてください。」

レオン様がスッと頭を下げて、トーマの斜め後ろへ下がった。

「公爵、掛けて話しましょうか。短い話ではありませんので。」

そう言って、トーマは勝手にソファーに座ってしまった。
文句もいわず、シリウスとタヌキジジィが素直に従ったのは意外だった。
私も近くで話を聞きたいけれど、ミランダと一緒にドアの付近に立っている。何かあった時に、すぐにこの部屋から連れ出すためだと思う。1番の足手まといだし、仕方がないよね。

「ミランダ、トーマは危険じゃないかしら?2人がまだ銃を持ってる可能性はあるよね。」
「心配するなら相手の方よ。あやしい素振りを見せた瞬間に、レオンなら躊躇いなく撃ち殺すから。解ってるから2人ともおとなしく座ってるのよ。それを見越しての人選、侯爵も本気って事ね。」
「……」

それはそれで心配だわ…。


私の心配をよそに、トーマは話を進めた。

・・・・

「これが何かわかりますか?」

俺は内ポケットから出した手紙を公爵に渡した。

「カリオン公爵からです。至急お渡しするようにと、私は遣いに出されたんです。」

手紙を読んでマディソンが苛ついているのが手に取るようにわかる。封をする前に俺も確認したが、馬鹿にしたような内容だ。

「『楽しい茶会を。』と書いているだけで、彼自身の至急の用だとは思えないんだがね?」
「ええ、私がここに無条件で押し入る為に、協力頂きました。予想通り、この邸の門は簡単に開きましたよ。」

母を人質にされ、それを知った父は身動きがとれず結局殺された。両親の二の舞なんて冗談じゃない。

「相手がボルディアでもマディソンでも関係ない。私は貴方を潰します。」
「潰すだと?出来るものならやってみろ!」
「勿論、今から1つずつ逃げ道をなくしていきますよ。その第一歩が家宅捜索、夫人の逮捕はただのおまけです。」

今まで決め手にかけていたが、材料が揃った今、もう我慢する必要はない。


「公爵、貴方の弟を横領、武器の横流し、密輸等で訴えました。いくつかは既に受理されています。」
「なんだとっ!?馬鹿にするなっ!!そんな事をしなくても、うちには金など腐るほどある!」
「金があるかないか、そんな事は問題視していません。それに詳しく調べてみたところ、今やマディソン家より私個人の資産の方が上のようです。でなければ、王弟殿下を動かせる訳がないでしょう。」
「……」
「領土や事業の運営資金を、私兵集めやくだらない訓練に費やしすぎたのでは?最近鉱山を手放している。買ったのは私の叔父の出資会社です。売りに来たヴィンセントは知らなかったようで、間抜けにも程がある。」

俺には売買を持ちかけてこなかった。勘ぐられるのを避けたのと、ラッセン侯爵当主である俺が力を持つのを恐れたからだ。だが、提示金額で買ってくれる者はそういない。鉱山は当たり外れが大きい。下手に手を出せばマイナスにしかならないのがその理由だ。簡単に買い手がつかず、売れるならどこでもいい…と、考えなしに売ったんだろう。

後先考えず子供を作るし、仕事も同様だな。
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