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お約束3
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私はそっとドアを開けた。
トーマがいないわ。さっきまで部屋の前にいたのに。
エメラルドを持って人気の無いところに長時間いるはずがないよね。部屋がいくつも並んでいる廊下にいて、どこかに引きずり込まれたりしたら大変だもの。
トーマかミランダに会えるまで、どこかに身を潜めておこう。
まわりに人がいないのを確認して、私は全速力で部屋から抜け出した。
「はぁはぁ…」
とりあえず、庭の片隅にいれば『新鮮な空気を吸いたかった』とか言い訳出来るはずよ。
木にもたれ掛かって座っていると、女の声が聞こえる。
見えたのは3人。
「あの女、本当に目障りですわ。」
そう言ったのは、私にワインをかけた女だった。
「アーロ様とも仲良さげに喋ってたのよ。」
「それに、アレン様とどういう関係なのかしら。」
ワイン女と一緒にいる2人も機嫌が悪そうだわ。
アーロ…ランスロット様…
話題に出てきた名前ですぐにピンときた。
確実に私の悪口だわ。でも、これはありがたいかも。社交界でのラッセン夫妻の評判をこっそり聞けるもの。
「あの女、トーマ様と本当に付き合っていたのかしら。どうしても男女の仲だったとは思えませんわ。」
「何度か関係をもったのをいいことに『妊娠したから責任をとれ』…とか言ったのかもしれませんわよ。実際は他の男との子供なのに。」
「まぁ、でしたら侯爵もお可哀想に。」
可哀想じゃなくて、それって2人とも最低よね。この人達、感覚が麻痺しているのかしら…。
「でも、さっき侯爵があの女に口づけしていたわ。それは、好きだからではないかしら?」
これは、上書き成功!?
「陛下の舞踏会ではしたないわ。昔のトーマ様ならそんな事しなかったはずよ。」
「あの女のせいで変わってしまったんだわ。」
濡れ衣…。
この噂、損しているのは私だけなんじゃ…。
私と同じ年頃の貴族令嬢で、トーマと結婚したかった子は沢山いたはず。そう考えると当然ね。
これ以上聞いても『ルーナが最低』という結論にしか至らなそうだし、見つからないうちに場所をうつろう。
こっそり立ち去ろうとした時、大きな声で名前を呼ばれた。
「ルーナ様っ!!」
「え…?」
私を呼んだのはエリーゼだった。
その声は今まで喋っていた女達にもバッチリ聞こえていたようで、一斉に視線が私へ向いた。
…盗み聞きしてたって絶対バレたよね。3人の顔がひきつってるし。まぁ、それはいいわ。
今はエリーゼをなんとかしなきゃ。
「どうしましたか?エリーゼ様。」
「お願い!私を助けて!」
「助ける…とは、一体どういう事でしょうか?」
辺境伯から…って事は聞かなくてもわかるけど、それを私に頼んでくるのはお門違いよ。
エリーゼは何を考えているのかしら。
「辺境伯と結婚したくないの!私、死にたくないの!」
「エリーゼ様、仰ってる事の意味が解りませんわ。」
これは人前では絶対にしてはいけない会話よ。なのに、この女は本当に馬鹿なのね…。
沢山の人に聞かれてしまう。そうなると、尻拭いは私がする事になるよね。私にさえ助けを求めだしてる、エリーゼにはきっと何も出来ないから。
踏んだり蹴ったりだわ。
トーマがいないわ。さっきまで部屋の前にいたのに。
エメラルドを持って人気の無いところに長時間いるはずがないよね。部屋がいくつも並んでいる廊下にいて、どこかに引きずり込まれたりしたら大変だもの。
トーマかミランダに会えるまで、どこかに身を潜めておこう。
まわりに人がいないのを確認して、私は全速力で部屋から抜け出した。
「はぁはぁ…」
とりあえず、庭の片隅にいれば『新鮮な空気を吸いたかった』とか言い訳出来るはずよ。
木にもたれ掛かって座っていると、女の声が聞こえる。
見えたのは3人。
「あの女、本当に目障りですわ。」
そう言ったのは、私にワインをかけた女だった。
「アーロ様とも仲良さげに喋ってたのよ。」
「それに、アレン様とどういう関係なのかしら。」
ワイン女と一緒にいる2人も機嫌が悪そうだわ。
アーロ…ランスロット様…
話題に出てきた名前ですぐにピンときた。
確実に私の悪口だわ。でも、これはありがたいかも。社交界でのラッセン夫妻の評判をこっそり聞けるもの。
「あの女、トーマ様と本当に付き合っていたのかしら。どうしても男女の仲だったとは思えませんわ。」
「何度か関係をもったのをいいことに『妊娠したから責任をとれ』…とか言ったのかもしれませんわよ。実際は他の男との子供なのに。」
「まぁ、でしたら侯爵もお可哀想に。」
可哀想じゃなくて、それって2人とも最低よね。この人達、感覚が麻痺しているのかしら…。
「でも、さっき侯爵があの女に口づけしていたわ。それは、好きだからではないかしら?」
これは、上書き成功!?
「陛下の舞踏会ではしたないわ。昔のトーマ様ならそんな事しなかったはずよ。」
「あの女のせいで変わってしまったんだわ。」
濡れ衣…。
この噂、損しているのは私だけなんじゃ…。
私と同じ年頃の貴族令嬢で、トーマと結婚したかった子は沢山いたはず。そう考えると当然ね。
これ以上聞いても『ルーナが最低』という結論にしか至らなそうだし、見つからないうちに場所をうつろう。
こっそり立ち去ろうとした時、大きな声で名前を呼ばれた。
「ルーナ様っ!!」
「え…?」
私を呼んだのはエリーゼだった。
その声は今まで喋っていた女達にもバッチリ聞こえていたようで、一斉に視線が私へ向いた。
…盗み聞きしてたって絶対バレたよね。3人の顔がひきつってるし。まぁ、それはいいわ。
今はエリーゼをなんとかしなきゃ。
「どうしましたか?エリーゼ様。」
「お願い!私を助けて!」
「助ける…とは、一体どういう事でしょうか?」
辺境伯から…って事は聞かなくてもわかるけど、それを私に頼んでくるのはお門違いよ。
エリーゼは何を考えているのかしら。
「辺境伯と結婚したくないの!私、死にたくないの!」
「エリーゼ様、仰ってる事の意味が解りませんわ。」
これは人前では絶対にしてはいけない会話よ。なのに、この女は本当に馬鹿なのね…。
沢山の人に聞かれてしまう。そうなると、尻拭いは私がする事になるよね。私にさえ助けを求めだしてる、エリーゼにはきっと何も出来ないから。
踏んだり蹴ったりだわ。
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