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罠3

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「ルーベン、何でここに?」

私の質問にルーベンは答える事なく続けた。

「最近うちの系列店の前で『人拐いがあった』…とか、あらぬ噂をたてられてて困ってるんだけど。お前のせい?」

長い前髪の隙間から見えるルーベンの目が物凄く怖い…。

「私は彼女に道をたずねて、食事に誘っただけ。悪い事はしていませんよ。」
「黙れ。とりあえず話は警察できく。」
「…っ嘘だと思うなら、その女に聞けばいい!!」

警察という言葉に焦ったお爺さんは、勢いよく私を指差した。

どうしよう。何が起こっているのかよく解らないから、どちらの援護も出来ないわ…。

「ルーナ、俺達は行くぞ。」

シュート君が私の手を軽く引っ張った。

「でも…」
「大丈夫だよ。ミランダとヘンリーさんが来たから。」
「え?」

シュート君の言う通り、ミランダとヘンリーが歩いてくるのが見える。他にも男の人が私達の所へ2人。

「ミランダ、どういう事?」
「馬車で話すから、私達は帰りましょう。」
「うん…。」

状況がつかめない私に、馬車の中でミランダが説明してくれた。

「最近、ホイットマン様のお店に出入りした旅行客にばかり声をかける輩がいて、探してたのよ。」

ホイットマン…って
国中に様々なお店を展開してたりする実業家の名前だよね。

「ルーベンって…ホイットマン家の子なの?」
「そう。営業妨害みたいな事をされて困ってたらしいのよ。」
「あのお爺さんに?…でも、私達は道をたずねられて食事に誘われただけよ。」

少しあやしい人だとは思ったけど…。

「みんなそうよ。ただ、噂に尾ひれが付き始めてるから早めに収束させたかっただけ。奴らの狙いは悪評それだから。」

『誘われてる』がどこかで『拐われてる』になり始めたのね。

「私達は偶然声をかけられたって事?」
「いいえ、ルーナに目をつけるだろう…って昼に話してたのよ。だから、ルーナとシュートだけわざと店の前に置いていったら見事に食いついたわ。」
「…何故、私に声をかけると思ったの?」
「小枝は『おのぼりさん』って言っただろ。」

旅行客が目一杯着飾って王都ではしゃいでる…と思われたのね。

「…私は3人で旅行っていうのが嬉かっただけよ。」

お友達とも疎遠になってしまって、どこかへ行く事もなかったし…。

「よしよし、ルーナは可愛いわね。」

ミランダに頭を撫でられて、髪がクシャクシャになった。

「安全だってわかってても、私達から離れないでほしかったわ。シュート君に何かあったらどうするの。」
「シュートが手伝うって言ったのよ。」
「え?」
「騎士団の演習場を見せてやるってヘンリーに言われたら二つ返事よ。」

チラっとシュート君を見ると珍しくニコニコしている。

「明後日だったら護衛隊も練習に参加してんだ。凄いだろ?」

シュート君が喜んでいるから、それ以上何も言えなくなってしまった。


邸に帰るとトーマはいなかった。

本邸に帰ったのかしら。それともエリーゼに会いにいったとか?どっちにしろ、これで気を使わなくてすむわね。

これから楽しい旅行になるはずと浮かれている私に、招かれざる客がやって来たのは、この2日後だった。
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