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シュート君3
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邸の扉の前で止まった馬車。
イーサンと手を繋いで2人を待っているけど、なかなか降りてこない。
「シュート、さっさと降りなさい。」
「わ…わかってるけど、ドアの開け方わかんねぇし」
「ああ、そうね。ごめんごめん。」
カチャンと中から鍵をあける音して、馬車から先に出てきたのはミランダ。その後に続いてシュート君が出てきたけど、口をポカンと開けて固まっている
この白くて立派な邸と手入れされた広い庭を見ればそうなるよね。私でも最初は呆然としたもの。
「シュート君、久しぶりだね。」
「……」
返事が返ってこない…。
「シュート、いつまでも呆けてないで挨拶。」
「…久しぶり…」
「『お招き頂きありがとうございます』でしょう。まぁ、驚いてそれどころじゃないのは解るけど。」
「…なぁミランダ、これ本当に個人の家なのか?うちの領主の家と比べもんにならねぇくらいデカいぞ。」
「当たり前でしょ。ここは侯爵邸なんだから。王候族は他の貴族と規模が違うの。」
「…侯爵?…小枝は侯爵なのかっ!?」
「私は侯爵夫人…かな。」
あまり知られたくないけど、いつまでも隠し通せるものじゃないしね。
「ルー…」
「ん?」
イーサンが私の後ろに隠れて、チラチラとシュート君を見ている。
「シュート君、この子はイーサン。メレブ君と同じ年なの。仲良くしてね。イーサン、シュートお兄ちゃんに挨拶して。」
「うん。シュート兄ちゃん、…こんにちわ。」
「こんにちは、イーサン。」
頭をペコっと下げるイーサンに、シュート君が目線をあわせて挨拶してるのが、少し大人びて見えた。
「さぁ、2人とも疲れたでしょう?飲み物もおやつも用意してあるから、早く入って。」
案内しようとするけれど、何故かシュート君が入ってこない。
「……このままでいいのかよ?」
「ん?勿論よ。」
『このままでいい』…って、どういう質問なのかしら?
シュート君の質問の意味がミランダには理解できたのか、後ろでクスクス笑っている。
「何笑ってんだよ。」
「あんたがいちいち面白い反応するからよ。ほら、邸に入りなさい。」
躊躇っているシュート君の背中をミランダが押して邸に入った。
イーサンとはまた後で遊ぶ事にして、私はシュート君をゲストルームへ案内する。
「今日はこの部屋をミランダと使ってくれる?王都へは明日出発しようと思ってるから。……シュート君?」
「…この部屋を、俺とミランダだけで使っていいのか?」
「うん。初めて来た家だと解らない事も多いだろうし、一緒がいいかなと思って。」
この部屋ならベッドも2つあるし、一通り揃ってるしね。
「あ、そうだ。小枝、母さんがこれ」
ゴンッ
鞄から何か取り出そうとしていたシュート君の頭を、ミランダがおもいっきり殴った。
「イテェ…何すんだよっ!人が喋ってんのに!」
「侯爵夫人に『小枝』は止めなさい。」
「小枝は小枝だろ。」
「あんたね、相手がルーナじゃなかったら今頃大変な事になってるわよ。」
「うるさい、うちに弟子入りしたらそんなの関係ねぇし。」
「なら『小枝』扱いは弟子入りしてからにしなさい。今は駄目よ。」
ミランダ、小枝扱いを認めないで…。
「何て呼べばいいんだよ。」
「私の事は『ルーナ』でいいよ。」
「それは駄目よ。」
ムスっとしたシュート君に私が答えると、ミランダに厳しく言われた。
「少なくとも、トーマ様と執事長の前では『ルーナ様』って呼びなさい。」
「ミランダは『ルーナ』って呼び捨てにしてるじゃねぇか。」
トーマの事も私の前では呼び捨てにしてるよね。今は『トーマ様』って言ってたけど。
ミランダなりの処世術を伝授して貰っておく事もシュート君の未来には役に立つと思うから、あえて言わないけどね。
イーサンと手を繋いで2人を待っているけど、なかなか降りてこない。
「シュート、さっさと降りなさい。」
「わ…わかってるけど、ドアの開け方わかんねぇし」
「ああ、そうね。ごめんごめん。」
カチャンと中から鍵をあける音して、馬車から先に出てきたのはミランダ。その後に続いてシュート君が出てきたけど、口をポカンと開けて固まっている
この白くて立派な邸と手入れされた広い庭を見ればそうなるよね。私でも最初は呆然としたもの。
「シュート君、久しぶりだね。」
「……」
返事が返ってこない…。
「シュート、いつまでも呆けてないで挨拶。」
「…久しぶり…」
「『お招き頂きありがとうございます』でしょう。まぁ、驚いてそれどころじゃないのは解るけど。」
「…なぁミランダ、これ本当に個人の家なのか?うちの領主の家と比べもんにならねぇくらいデカいぞ。」
「当たり前でしょ。ここは侯爵邸なんだから。王候族は他の貴族と規模が違うの。」
「…侯爵?…小枝は侯爵なのかっ!?」
「私は侯爵夫人…かな。」
あまり知られたくないけど、いつまでも隠し通せるものじゃないしね。
「ルー…」
「ん?」
イーサンが私の後ろに隠れて、チラチラとシュート君を見ている。
「シュート君、この子はイーサン。メレブ君と同じ年なの。仲良くしてね。イーサン、シュートお兄ちゃんに挨拶して。」
「うん。シュート兄ちゃん、…こんにちわ。」
「こんにちは、イーサン。」
頭をペコっと下げるイーサンに、シュート君が目線をあわせて挨拶してるのが、少し大人びて見えた。
「さぁ、2人とも疲れたでしょう?飲み物もおやつも用意してあるから、早く入って。」
案内しようとするけれど、何故かシュート君が入ってこない。
「……このままでいいのかよ?」
「ん?勿論よ。」
『このままでいい』…って、どういう質問なのかしら?
シュート君の質問の意味がミランダには理解できたのか、後ろでクスクス笑っている。
「何笑ってんだよ。」
「あんたがいちいち面白い反応するからよ。ほら、邸に入りなさい。」
躊躇っているシュート君の背中をミランダが押して邸に入った。
イーサンとはまた後で遊ぶ事にして、私はシュート君をゲストルームへ案内する。
「今日はこの部屋をミランダと使ってくれる?王都へは明日出発しようと思ってるから。……シュート君?」
「…この部屋を、俺とミランダだけで使っていいのか?」
「うん。初めて来た家だと解らない事も多いだろうし、一緒がいいかなと思って。」
この部屋ならベッドも2つあるし、一通り揃ってるしね。
「あ、そうだ。小枝、母さんがこれ」
ゴンッ
鞄から何か取り出そうとしていたシュート君の頭を、ミランダがおもいっきり殴った。
「イテェ…何すんだよっ!人が喋ってんのに!」
「侯爵夫人に『小枝』は止めなさい。」
「小枝は小枝だろ。」
「あんたね、相手がルーナじゃなかったら今頃大変な事になってるわよ。」
「うるさい、うちに弟子入りしたらそんなの関係ねぇし。」
「なら『小枝』扱いは弟子入りしてからにしなさい。今は駄目よ。」
ミランダ、小枝扱いを認めないで…。
「何て呼べばいいんだよ。」
「私の事は『ルーナ』でいいよ。」
「それは駄目よ。」
ムスっとしたシュート君に私が答えると、ミランダに厳しく言われた。
「少なくとも、トーマ様と執事長の前では『ルーナ様』って呼びなさい。」
「ミランダは『ルーナ』って呼び捨てにしてるじゃねぇか。」
トーマの事も私の前では呼び捨てにしてるよね。今は『トーマ様』って言ってたけど。
ミランダなりの処世術を伝授して貰っておく事もシュート君の未来には役に立つと思うから、あえて言わないけどね。
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