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シュート君

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「ねぇ、ミランダ。私、あのロイスって使用人、調べてみようと思うの。」

今のところ、情報が少なすぎるわ。

「ルーナ、それよりも子育て要員として頑張りなさい。トーマとの契約に『子育てをして給金をもらう』っていうのを提示してるんだから。」
「…その通りだわ。働かなければ給金を貰えないよね。エミリーには嫌われてるけど、頑張らないと。」
「そうしなさい。シュートが来たら王都に行くんだし、今しっかり働きなさい。」
「…シュート君!そうよっ!!シュート君はいつ来れるのっ?」
「来週からならいつでも、ルーナの予定に合わせるわ。」
「そうなの!?じゃあ、いつでも来てって手紙を…ううん、迎えに行くわ!」
「ルーナ…たった今、私が言った事を思い出しなさい。」
「…契約…子育て……給金……」
「よろしい。で、ルーナの予定は大丈夫なの?」
「うん。残念な事に、私に予定なんてないから。あるとしても、行きたくもないパーティーにだけだし。」

そこで陛下からの尋問。
昔の悪戯や喧嘩への謝罪まわり。
…悲しすぎるわ!!

「そうそう、そのパーティーに私も行く事になったのよ。」
「ミランダが?」
「女の衛兵が足りないから助っ人で頼まれたのよ。」
「そうなの!?やったーっ!!」

ずっと一緒にはいられないんだろうけど、それでも嬉しい!

「…それって、トーマは知ってるの?」
「さっき呼ばれたのはこの件よ。陛下主催の舞踏会の護衛に関しては、ラッセン侯爵だとしても反対は出来ないからね。」

それはそうよね。この国で誰を1番に守るかを考えれば、断るなんて出来ないもの。
陛下に呼び出されて不安がってるかもしれない…って考えて、私のためにトーマが頼んでくれたのかも。
…なんて、一瞬でも思ってしまった自分が悔しいわ。

それから暫くシュート君を王都のどこへ連れていくかを話して、ミランダは自分の部屋へかえった。


コンコン
ドアをノックする音がした。

「ルー!」
「イーサン?ちょっと待ってね。」

ドアを開けると、イーサンがにっこり笑って手紙を持っている。

「これ、ルーに手紙だぞ。」
「ありがとう。」

お礼をいっていると、慌ててメイドがやって来た。

「こらっ!イーサン!手紙を勝手に持っていっちゃ駄目でしょ!奥様、大変申し訳ございません。」
「ふふ、いいのよ。お手伝いしてくれたのよね。」
「うん!」
エッヘンと威張っているのが可愛い。

「もうすぐ夕飯でしょう?手紙を読んだら下りていくから呼びに来なくても大丈夫よ。」
「畏まりました。失礼致します。」

メイドは丁寧に頭を下げたあと、イーサンをガシッと抱えた。

「行くわよ、イーサン!」
「あ!オレはルーとあそぶんだっ!」
「駄目です!」

言い合いながら2人はあっという間に行ってしまった。

手紙は招待状で、差出人はソフィア・ネルソン。…トーマ狙いのあの人妻ね。
ネルソン伯爵の家系であっても三男。その妻が1度挨拶しただけの侯爵夫人に堂々とお茶会の招待状を送りつけてくるなんて、なかなか出来ないわよ。
これは『挑戦状』ね。

私に色々聞きたいご夫人達から総攻撃を受けるのは目に見えてるわね。

…あえて攻撃される状況に身をおけば、何か手がかりが出てくる可能性はあるかも…。私が知らないような噂は社交界で出回ってるはずだもの。
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