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結婚の相手

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「ルーナ、これをっ…!」
「コホコホっ…コホっ…」

隣に座るトーマがハンカチをくれて、暫く背を撫でてくれた。

「…ありがとう。ごめんなさい、驚いてしまって。服が少し濡れてしまったから着替えてくるわ。染みになったら困るしね。」

少し部屋に戻って落ち着こう。想定外だもの、こんなの。

「皆で話をしてて下さい。すぐに戻ります。」

客間を出て、私は急いで部屋に戻った。

どういう事…?
トーマの愛人であるエリーゼの婚約者は辺境伯という事?

アダムス伯爵のご息女…何人いるの?エリーゼだけ?『伯爵の娘』って事はアダムス家という事ではなくて、当主の娘よね。

エリーゼに子供がいるのがわかれば、大変な事になる…。
簡単に人に銃をむけるような暴力的なオジサンに、エミリーの存在が知れたらどうするの。
今は法的には私達の子として守る事は出来るけど、いい方向に話は流れない。

秘密は完璧に隠さないと。なのに何を温い事をしてるの、トーマとエリーゼはっ!
絶対にバレないようにするっていう、その気合いが足りなさすぎるわ。

一歩踏み外せばラッセン家で働く人やミランダに害が及ぶじゃない。
そして私の農家弟子入りの道も絶望的よ!


マーフィー護衛隊長が私を心配してるって事は、少なからず『変態ジジィ』の意識の中で、私は邪魔者として記憶されてるのよ。

国境に広大な領地を持っていて、防衛の為に軍事力もある田舎貴族…厄介だわ。
でも、これで筋は通る。部が悪い、トーマに破談させられない訳よね…。

王都で何があったのか、今度のパーティーで陛下に聞かれる…。
非常にまずいわ。何を言われても100%通用する言い訳を考えないと。

きっと陛下は困ってるのよ。アイリス様が騒いだ事で、他の貴族も事件を知ってしまった。『街の噂』ではおさまらなくなった。

辺境伯を気にくわない貴族が多ければ『トーマ・ラッセン侯爵の妻を殺そうとした』って、大々的に糾弾しだす可能性がある。

だから私の口から『問題ない』って聞きたいのよ。

ほんの少し予想しただけで、これくらい悪い事が浮かぶなんて…。


王都に行かなければこんな事にはならなかった。あの場で騒ぎを起こさなければ、問題なかったよね。
けど、親子を助けに入った事は後悔しない。人として当然の事をしたまでよ。

……とりあえず、2人が帰ってからトーマに聞くしかないわね。どうせ、詳しく教えてくれないだろうけど。

少し落ち着いたし、服を着替えて早くもどらないと!

マーフィー隊長とヘンリーに、私とトーマの関係がバレないように『楽しい会話』をする。

それが今日の最重要事項よ。
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