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護衛隊長3

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さっきから既に試着は6着目。

「ルーナ様、これもとってもお似合いですよ。」
「まぁ、ありがとう。」

似合ってるかどうかよりも、高級な品から試着させてるだけよね…。服を見て楽しいという演技も疲れてきたわ。

隊長にブランデーを買うために服を売ったのに、隊長が来る日の為に服を買うなんて…本末転倒だわ。しかも、売ったものよりはるかに高額なものよ。

「ルーナ、気に入るものはあったか?」
「え、はい…」

この際、あまり高くなければ何でもいいのよ。
ここはトーマのお母様が気に入ってたお店…それを考えると『他のお店を見たい』なんて軽々しく言えない。もう、お亡くなりになってるから本人から文句を言われる事は無いけれど、店側のラッセン家の印象が悪くなると面倒だもの。

「ルーナ?疲れたのか?」

私の様子を見ていたトーマが、意外にも心配そうな顔で話しかけてきた。

「大丈夫よ。今着ているこれが欲しいと思って。あと、これ。」

私に似合うと用意してくれた服の中から、1番飾り気の少ない物を選んだ。
装飾が少なければ安いんじゃないか…っという、安直な考えで選んだだけ。

「…本当にそれがいいのか?」
「ええ。どうして?」
「何だか未亡人…みたいだぞ。」
「…いつ貴方は死んだの。」
「そういう事じゃなく…」

黒のロングワンピース。まぁ…地味なのは否めないし、そう言われても仕方がないけどね。


結局、私が希望した服を2着だけ買ってお店を出た。

「欲がないんだな。靴も宝石もあの店にはあったのに。」

きっとエリーゼならキャーキャー言って喜ぶんでしょうけどね。

「私は慎ましい女なのよ。」
「……」
「何か言いなさいよ。」

自分で言ったけれど、恥ずかしくなった。

「他に何か見たいものはないか?」
「他に…」

通りを歩いていると、大きなパン屋さんがある。窓から少し覗くと、お菓子も沢山おいてあった。

「なるほど、ルーナの場合は色気より食い気か。」
「…貴方、どんどん私への扱いが酷くなってきているわよ。」

私が軽く睨むと、フイっと視線をそらされた。

「仕返しだ。」
「…私が何をしたのよ。」
「辺境伯爵の事で陛下から厳重注意をうけた。アイリス様が騒ぎ立ててたらしい。」
「…それは…ごめんなさい。」
「あの時の状況をルーナ本人に聞くと陛下が言っていた。」
「いつ?」
「今度、一緒にいくパーティーで挨拶に行く。その時だ。」

ラッセン侯爵ともなれば、パーティーで陛下とお話する時間もあるよね。その辺、考えが甘かったわ…。

「嘘は駄目だが、全てを話さなくてもいい。」
「解った。」

あった事を全て正直に話してしまえば、辺境伯に睨まれる。あの男は農家弟子入りに邪魔だわ。関わらないのが1番よ!

「…服を買った後に言うのも気が引けるが、明日家に服が届く事になってる。」
「ええ!?じゃあ何故わざわざ買い物に…。」
「共通の話題、それに繋がる俺達の行動と証人がいないと、護衛長とヘンリーに疑われる。ランスロット・アレンもだが、あの親子の方が手強いぞ。」

確かに、そこまで考えてなかった。

「ミランダにどんな人なのか詳しく聞いてみるわ。」
「そうしよう。旦那が隊長直属の部下だったんだし、詳しいだろうから。」
「知ってたの?ミランダの事。」
「ああ。」
「………」

…詳しくは聞いていないけど、トーマのご両親は何故亡くなったのかしら。

今、何故こんな事を思ったのか解らないけど、トーマの表情を見て何となく胸騒ぎがした。
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