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「いやぁ、実に良いものを見せてもらった。」

アーロがニコニコしながら馬車を降りる。

「いいもの?」
「ルーナも謝る事が出来る女だったんだな。」
「失礼ね。私は礼儀正しいわよ。」
「……」
「……」

「何故2人して黙るのよ。」

「お前、昔俺の部屋にノックもなくいきなり飛び込んできて『勝負だっ!!』って言ったの憶えてないのか?」

何なのその伯爵の娘らしからぬ行動は…。
それはトーマも思ったみたいで、呆れ顔をして私を見ている。

「ラッセン侯爵、ブランデーは結婚と出産の祝いという事で受け取って下さい。では、私はこれで失礼致します。」

「アーロ、ルーナを助けてくれて感謝する。」

「放っておいても勝っていたと思いますが、一応女性ですので。それに、実際に助けたのは私でなく侯爵ですから。」

そういって、笑顔でアーロは行ってしまった。

「まぁ、一応女だしな。」
「嫌みな言い方ね。」
「嫌みだ。」
「………」

私は男の人にモテる要素を備えていないと実感してきたわ。
『守ってあげたい感』がないのよ、私には…。

「ブランデー、高かっただろう。気を使わせてしまった。」
「いいのよ。勝負に勝ったんだもの。」
「…一体なんの勝負なんだ…。」
「それは秘密よ。」

きっかけが『子供の頃ビー玉を奪ったから』だなんて言いたくないわ。しかもジャンケン勝負だなんて…。

「ルーナ、酒を買いに来た訳は?」
「護衛隊長が好きなのがヴォリオらしいの。どうせなら気分よく過ごしてもらいたいじゃない?だから買いに来たけど、お酒の値段を甘く見てたわ。」
「そうか。」
「そうよ。遊びに来てた訳じゃないわよ。」
「…マイセン、ルーナの持ってるお金を全て使って、アーロにお祝いのお返しを用意しておいてくれ。」
「全てって、それじゃ私の観光資金がっ!!」
「お酒は口実で、観光したかったんだな。」
「ついでよ…。」
「どっちが?」
「…………」
「ぷっ!ククク…わかった。ここまで来たんだし、好きな所へ連れて行く。」
「……」
「どうしたんだ?キョトンとして。」
「トーマがそんな風に笑ってるの、珍しいと思って。」

私のいないところでは笑ってるのかもだけどね。

「そう言えばミランダは何処へ行ったんだ?」
「休暇はプライベートよ。そこまで深くは聞かないわ。隊長が来る日には帰ってくる予定よ。『ミランダがいれば、今日はこんな事になってなかった』って言いたいんでしょうけど。」
「いや、いなくてよかった。いたら、ボルディアが拳銃を抜いた瞬間殴って気絶させてるか腕を折ってる。誰が相手でも護衛の任務を遂行してた。」

ミランダ格好いい!
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