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この小屋での時間も勿体ないから、弟子入りの初歩として色々育ててみる事にした。鉢に苗やお野菜の種を植えて、観察日記までつけようと企んでいる。
「何故ここに来てすぐに始めなかったのかしら。」
暇な時間にこれをしていれば、知識を手に入れられたのよ。
「1ヶ月程でここを出ていく事になるのに無駄じゃない?」
「でも鉢植えにしてれば持って帰れるもの。」
「まぁそうね。」
「……ねぇミランダ。愛人は邸で一緒に暮らすと思う?」
「それはさすがに無いでしょう。それじゃルーナで偽装工作した意味がなくなるし。」
「私としては同居して欲しいんだよね。私は子育てはするけど母親になる訳じゃないから。母親になるとしても期間限定の代替え品。だから愛人と過ごした方がいいと思うの。」
「……」
「子供からすればこれは全て親の勝手な訳だし。」
「愛人も子育て要員として邸にくるのを進めてみたら?トーマも喜ぶかもよ。」
「それは素晴らしいアイデアよっ!次にトーマに会ったら早速話をつけるわ。」
小屋でやる事を見つけてから、充実した毎日をおくっていたのに、1週間たってマイセンさんが来た。
「あの、心配しなくても逃げませんから。」
「子が産まれるかもしれませんので、急いで来て下さい。」
「……え?もうですか?」
めちゃくちゃ早いわ。本当に10ヶ月目だったの!?
私とミランダは呆れてそれ以上何も言えなかった。
私達はラッセン邸に帰るのかと思ったら、また別の場所へ連れていかれた。
「マイセンさん、ここに移動する意味はあるのかしら。」
「トーマ様からの命令です。この邸からも部屋からも出ないようにお願いします。食事も全てここへ運びますので。」
「ええ。けれどこちらからも1つ。子が産まれた日は必ず教えて。来年のその日が離縁成立の日になるので。1日も誤魔化されたくないわ。」
私がわざとらしく笑うと、マイセンさんが目を細めた。
「……では、失礼致します。」
パタン
静かに扉がしまった。
「まさか本当に予定日が1ヶ月ほど狂ってるなんて…。マイセンさんの今の落ち着きから見れば大変な事態になってる訳でもなさそうよね。」
「結婚する時にルーナが細くて妊婦の雰囲気がないから本当の事は言えなかったんでしょ。」
…ヒョロヒョロの小枝女だしね。
「…何にしても、結婚して小屋に閉じ込めてる私にくらい伝えればいいのに…。そうじゃなければ後1ヶ月は帰ってこなかったわよ。」
何でも秘密にしておけばいいものではないわ。
山小屋からこの家に移って2週間…。
「ミランダ…暇すぎて死んでしまいそうよ。」
「山小屋にいた方が楽だったわね。」
「ほんと、その通りだわ。」
この部屋から出るな…という事で、真面目なな私はいう事をきいているのだけど、さすがに辛いわ。…もう少しで我が儘ルーナが出てくるわよ…。
「ねぇ、この建物に愛人がいるのかしら?いたら乗り込むわ。」
「子供の泣き声も聞こえないからこの家にはいないでしょうけど、近くにはいるはずよ。」
コンコン
「マイセンです。」
ここに来てから、1度も来る事がなかった執事長がきた。
「産まれたんですか?」
ここに来るとすればそれしかないよね。
「私に付いてきてください。」
何も答えないけど、『産まれた』という事よね、これは。
馬車に詰め込まれて500メートルほど離れた家に連れてこられた。
「これくらい歩けばいいのに。」
「距離じゃなくてルーナを隠したいって事。」
…なるほど。
「あの山小屋ほどではないけど、この辺りも人が少ないから誰も気が付かないと思うけど…。」
馬車から見た様子じゃ、ポツンポツンと家があるだけで人が住んでる様子もあまりなかった。
「ミランダ、家に入りましょう。」
「……」
「ミランダ?」
馬車をおりたミランダは鋭く何かを見ていたけど、すぐに私の方を向いた。
「行こうか。」
「うん。」
何を見ていたんだろ?
案内された部屋にある小さなベッドには赤ちゃんが寝ている。
「…小さい。……女の子?」
「そうみたいね。」
……手も足も顔もプクプクしてて可愛い。もぉ全体的に可愛い…!これがあの男の子供だなんて、あってはならない事よ!
トーマに似ている要素がいくつあるかが心配…。私にもトーマにも似てなかったら『愛人の子』ってすぐに分かるもの。そうなれば、くだらない偽装の意味もなくなる。
「いつ産まれたんですか?」
これは大切な事よ。
「奥様な小屋を出た次の日の夜に。」
離縁の日は決まったわね。1つ前進よ。
「…この子の母親は?」
「ここにはいません。」
「何故?別に今はいいじゃない。まだ目も見えない、耳も聞こえない。暫くここにいたとしても大丈夫だわ。」
「既にこの子はラッセン家の子、トーマ様とルーナ様の子です。手続きもすませております。」
「手続き…それは仕方が無い事だけど、それとこれとは別だわ。」
何もわからない間に母親と引き離そうとしてるのね。
酷い人達だわ。
マイセンさんがいなくなって5分ほどすると、女性が2人部屋に入ってきた。
「今日から子育てのお手伝いをいたしますカルラです。」
「私は乳母のアナです。よろしくお願いします。」
カルラさんは私を師匠の家に迎えに来た人だわ。
「こちらこそ。」
ミランダも私の後に挨拶にして、私達が使う部屋に案内してもらった。
「何故ここに来てすぐに始めなかったのかしら。」
暇な時間にこれをしていれば、知識を手に入れられたのよ。
「1ヶ月程でここを出ていく事になるのに無駄じゃない?」
「でも鉢植えにしてれば持って帰れるもの。」
「まぁそうね。」
「……ねぇミランダ。愛人は邸で一緒に暮らすと思う?」
「それはさすがに無いでしょう。それじゃルーナで偽装工作した意味がなくなるし。」
「私としては同居して欲しいんだよね。私は子育てはするけど母親になる訳じゃないから。母親になるとしても期間限定の代替え品。だから愛人と過ごした方がいいと思うの。」
「……」
「子供からすればこれは全て親の勝手な訳だし。」
「愛人も子育て要員として邸にくるのを進めてみたら?トーマも喜ぶかもよ。」
「それは素晴らしいアイデアよっ!次にトーマに会ったら早速話をつけるわ。」
小屋でやる事を見つけてから、充実した毎日をおくっていたのに、1週間たってマイセンさんが来た。
「あの、心配しなくても逃げませんから。」
「子が産まれるかもしれませんので、急いで来て下さい。」
「……え?もうですか?」
めちゃくちゃ早いわ。本当に10ヶ月目だったの!?
私とミランダは呆れてそれ以上何も言えなかった。
私達はラッセン邸に帰るのかと思ったら、また別の場所へ連れていかれた。
「マイセンさん、ここに移動する意味はあるのかしら。」
「トーマ様からの命令です。この邸からも部屋からも出ないようにお願いします。食事も全てここへ運びますので。」
「ええ。けれどこちらからも1つ。子が産まれた日は必ず教えて。来年のその日が離縁成立の日になるので。1日も誤魔化されたくないわ。」
私がわざとらしく笑うと、マイセンさんが目を細めた。
「……では、失礼致します。」
パタン
静かに扉がしまった。
「まさか本当に予定日が1ヶ月ほど狂ってるなんて…。マイセンさんの今の落ち着きから見れば大変な事態になってる訳でもなさそうよね。」
「結婚する時にルーナが細くて妊婦の雰囲気がないから本当の事は言えなかったんでしょ。」
…ヒョロヒョロの小枝女だしね。
「…何にしても、結婚して小屋に閉じ込めてる私にくらい伝えればいいのに…。そうじゃなければ後1ヶ月は帰ってこなかったわよ。」
何でも秘密にしておけばいいものではないわ。
山小屋からこの家に移って2週間…。
「ミランダ…暇すぎて死んでしまいそうよ。」
「山小屋にいた方が楽だったわね。」
「ほんと、その通りだわ。」
この部屋から出るな…という事で、真面目なな私はいう事をきいているのだけど、さすがに辛いわ。…もう少しで我が儘ルーナが出てくるわよ…。
「ねぇ、この建物に愛人がいるのかしら?いたら乗り込むわ。」
「子供の泣き声も聞こえないからこの家にはいないでしょうけど、近くにはいるはずよ。」
コンコン
「マイセンです。」
ここに来てから、1度も来る事がなかった執事長がきた。
「産まれたんですか?」
ここに来るとすればそれしかないよね。
「私に付いてきてください。」
何も答えないけど、『産まれた』という事よね、これは。
馬車に詰め込まれて500メートルほど離れた家に連れてこられた。
「これくらい歩けばいいのに。」
「距離じゃなくてルーナを隠したいって事。」
…なるほど。
「あの山小屋ほどではないけど、この辺りも人が少ないから誰も気が付かないと思うけど…。」
馬車から見た様子じゃ、ポツンポツンと家があるだけで人が住んでる様子もあまりなかった。
「ミランダ、家に入りましょう。」
「……」
「ミランダ?」
馬車をおりたミランダは鋭く何かを見ていたけど、すぐに私の方を向いた。
「行こうか。」
「うん。」
何を見ていたんだろ?
案内された部屋にある小さなベッドには赤ちゃんが寝ている。
「…小さい。……女の子?」
「そうみたいね。」
……手も足も顔もプクプクしてて可愛い。もぉ全体的に可愛い…!これがあの男の子供だなんて、あってはならない事よ!
トーマに似ている要素がいくつあるかが心配…。私にもトーマにも似てなかったら『愛人の子』ってすぐに分かるもの。そうなれば、くだらない偽装の意味もなくなる。
「いつ産まれたんですか?」
これは大切な事よ。
「奥様な小屋を出た次の日の夜に。」
離縁の日は決まったわね。1つ前進よ。
「…この子の母親は?」
「ここにはいません。」
「何故?別に今はいいじゃない。まだ目も見えない、耳も聞こえない。暫くここにいたとしても大丈夫だわ。」
「既にこの子はラッセン家の子、トーマ様とルーナ様の子です。手続きもすませております。」
「手続き…それは仕方が無い事だけど、それとこれとは別だわ。」
何もわからない間に母親と引き離そうとしてるのね。
酷い人達だわ。
マイセンさんがいなくなって5分ほどすると、女性が2人部屋に入ってきた。
「今日から子育てのお手伝いをいたしますカルラです。」
「私は乳母のアナです。よろしくお願いします。」
カルラさんは私を師匠の家に迎えに来た人だわ。
「こちらこそ。」
ミランダも私の後に挨拶にして、私達が使う部屋に案内してもらった。
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