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悪役

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「キルテに命令してミネルバを傷つけたのを知られれば、俺の婚約者としての立場が危うくなるのぞ。」
「その前に、ミネルバがわたくしの席に座って、殿下と馴れ馴れしくしていた事を言及されるのではないかしら。そうならないために、報告するのは『殿下の命令でキルテが私を襲った』という事だけにして差し上げますわ。」
「……俺はシュナを襲う命令などしていない。キルテ、お前からシュナに説明しろ。」
「言い訳は結構よ。部下の失敗は上司である殿下の責任ですもの。」

ミネルバとキルテの嘘を見抜けない王太子、本当に情けないよね。

「ここで殿下が、私に頭を下げて謝ってくださるのなら、考え直しますわ。」
「何だとっっ!!」
「あら、私はどちらでも構いませんのよ。玉座からは遠退きますけどね。」

こういう時、扇を持っていたら悪役令嬢っぽいよね。明日から持ち歩くことにしよう。

「フェルト様、酷いです!それでもアレックス様の婚約者なのですかっ?」

これは、茶番第2幕の始まりかな。

今回は私から舞台に上がってやろうじゃない。最後に勝つのは私じゃない事は知ってるし、ミネルバが聖女だと解れば私は相手にされなくなる。
でも、今はアレックスより私の方が強いんだから。

周りの貴族はミネルバに不満を抱いてる。この状況なら、私を批判をする人はいない。

「アレックス様の婚約者の席にどうどうと座って、楽しくお話していた貴女は、私に対して酷い事をしたと思わないのかしら?」
「アレックス様が良いと仰ったのです!それに、お話をしていただけです!」
「でも、私はとても傷つきました。どう責任をとってくれるのか、お聞きしたいわ。」
「ミネルバのせいにするなっ!」

この場で庇う所がアレックスの馬鹿な所なんだよね。状況判断が出来てない。
…この単細胞に魔王を倒せるのか、ちょっと不安になってきた。
この男を成長させないと、役に立たない気がする。

「もう少し冷静に考えた方が良いのではないかしら。周りを見てください。誰一人として、ミネルバがこの教室にいる事を歓迎している人はいません。」

アレックスがまわりを見てちょっと驚いてる。
もしかして、今まで全く気づいてなかったの…?この冷ややかな視線に。

本当にまずい…。
私が小説通り魔王を復活させても、勇者が勝てないって可能性を考えてなかった。

「とにかく、真実が解るまでは私に近付く事を禁止します。」

今はこの場を離れよう。
『アレックス王太子が魔王を倒す』このあらすじまで変わってしまうのは困る。アレックスを追い詰めるのは簡単でも、名誉挽回させるのは難しいんだから。


呑気に茶番に付き合ってる場合じゃない!
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