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製氷

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次の日もお菓子の採点。

順調に進んで、後は結果発表…のはずだったんだけど…。

「シュナお嬢様、こちらを食べていただけませんか?」

私にひっそりと声をかけてきたのはテノール・メイト。今回のトーナメントに参加しているパティシエの1人。

「お菓子の採点はもう終わったわ。後から追加は不公平になってしまうから駄目よ。」
「……見て貰う事だけでも出来ませんか?」

凄い真剣な顔をしてるけど、さっき出せなかったわけでもあるのかな。

「いいわ。」

部屋の片隅にある小さなテーブルに、ワイングラスに入ったオレンジジュースがおいてある。

「お菓子でなく、これは飲み物よね。」
「見ていてください。」

テノールがグラスに触れると、オレンジジュースはシャーベット状になった。

「…っ!?」

今のって魔法…だよね。

「すぐに溶けてしまいますのでお出しできなくて…」

そんな問題じゃないわよっ!

「テノール、貴方はこの能力を誰かに見せた事があるの?」
「いいえ。お見せしたのはお嬢様が初めてです。」

よかった。
この小説世界には、聖女の側にいなくても魔法が使える人が極稀にいる…って、そういう設定なんだよね。
重宝されるけど、魔王が登場した時に捨てゴマのように使われたのが、テノールのように魔法を使える庶民だった。

「この能力は私以外の前では絶対に見せては駄目よ。」
「…やはり、この菓子は採点には含まれませんよね。」
「……」

確かテノールは38才。妻子あり。
子供は3人、奥様は今妊娠中。
この邸にいると家族とは毎日会えないし、妊娠中の奥様も心配…って事だよね。

採点結果はテノールは2位。1位との差は1点。その内容は、見栄え。
お菓子だけで考えるなら順位は変えないけれど、食べ物を保存するのにはテノールの能力は最高だよね。
そうなると、順位は変わってくる。

これは、テノール採用決定かな。

正直にいうと、冷たいものが食べられない事にストレスは感じていたし、結局私の我が儘かも。


「結果を発表するわ。皆がいるところへ戻りましょう。」

家が欲しい、この邸で働くより喫茶店で好きなものを作りたい…って、皆そう思ってるよね。でも、勝者は1人。

「優勝はテノール・メイトよ。」
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