28 / 39
製氷
しおりを挟む
次の日もお菓子の採点。
順調に進んで、後は結果発表…のはずだったんだけど…。
「シュナお嬢様、こちらを食べていただけませんか?」
私にひっそりと声をかけてきたのはテノール・メイト。今回のトーナメントに参加しているパティシエの1人。
「お菓子の採点はもう終わったわ。後から追加は不公平になってしまうから駄目よ。」
「……見て貰う事だけでも出来ませんか?」
凄い真剣な顔をしてるけど、さっき出せなかったわけでもあるのかな。
「いいわ。」
部屋の片隅にある小さなテーブルに、ワイングラスに入ったオレンジジュースがおいてある。
「お菓子でなく、これは飲み物よね。」
「見ていてください。」
テノールがグラスに触れると、オレンジジュースはシャーベット状になった。
「…っ!?」
今のって魔法…だよね。
「すぐに溶けてしまいますのでお出しできなくて…」
そんな問題じゃないわよっ!
「テノール、貴方はこの能力を誰かに見せた事があるの?」
「いいえ。お見せしたのはお嬢様が初めてです。」
よかった。
この小説世界には、聖女の側にいなくても魔法が使える人が極稀にいる…って、そういう設定なんだよね。
重宝されるけど、魔王が登場した時に捨てゴマのように使われたのが、テノールのように魔法を使える庶民だった。
「この能力は私以外の前では絶対に見せては駄目よ。」
「…やはり、この菓子は採点には含まれませんよね。」
「……」
確かテノールは38才。妻子あり。
子供は3人、奥様は今妊娠中。
この邸にいると家族とは毎日会えないし、妊娠中の奥様も心配…って事だよね。
採点結果はテノールは2位。1位との差は1点。その内容は、見栄え。
お菓子だけで考えるなら順位は変えないけれど、食べ物を保存するのにはテノールの能力は最高だよね。
そうなると、順位は変わってくる。
これは、テノール採用決定かな。
正直にいうと、冷たいものが食べられない事にストレスは感じていたし、結局私の我が儘かも。
「結果を発表するわ。皆がいるところへ戻りましょう。」
家が欲しい、この邸で働くより喫茶店で好きなものを作りたい…って、皆そう思ってるよね。でも、勝者は1人。
「優勝はテノール・メイトよ。」
順調に進んで、後は結果発表…のはずだったんだけど…。
「シュナお嬢様、こちらを食べていただけませんか?」
私にひっそりと声をかけてきたのはテノール・メイト。今回のトーナメントに参加しているパティシエの1人。
「お菓子の採点はもう終わったわ。後から追加は不公平になってしまうから駄目よ。」
「……見て貰う事だけでも出来ませんか?」
凄い真剣な顔をしてるけど、さっき出せなかったわけでもあるのかな。
「いいわ。」
部屋の片隅にある小さなテーブルに、ワイングラスに入ったオレンジジュースがおいてある。
「お菓子でなく、これは飲み物よね。」
「見ていてください。」
テノールがグラスに触れると、オレンジジュースはシャーベット状になった。
「…っ!?」
今のって魔法…だよね。
「すぐに溶けてしまいますのでお出しできなくて…」
そんな問題じゃないわよっ!
「テノール、貴方はこの能力を誰かに見せた事があるの?」
「いいえ。お見せしたのはお嬢様が初めてです。」
よかった。
この小説世界には、聖女の側にいなくても魔法が使える人が極稀にいる…って、そういう設定なんだよね。
重宝されるけど、魔王が登場した時に捨てゴマのように使われたのが、テノールのように魔法を使える庶民だった。
「この能力は私以外の前では絶対に見せては駄目よ。」
「…やはり、この菓子は採点には含まれませんよね。」
「……」
確かテノールは38才。妻子あり。
子供は3人、奥様は今妊娠中。
この邸にいると家族とは毎日会えないし、妊娠中の奥様も心配…って事だよね。
採点結果はテノールは2位。1位との差は1点。その内容は、見栄え。
お菓子だけで考えるなら順位は変えないけれど、食べ物を保存するのにはテノールの能力は最高だよね。
そうなると、順位は変わってくる。
これは、テノール採用決定かな。
正直にいうと、冷たいものが食べられない事にストレスは感じていたし、結局私の我が儘かも。
「結果を発表するわ。皆がいるところへ戻りましょう。」
家が欲しい、この邸で働くより喫茶店で好きなものを作りたい…って、皆そう思ってるよね。でも、勝者は1人。
「優勝はテノール・メイトよ。」
10
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした
犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。
思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。
何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…
【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。
【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。
樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」
大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。
はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!!
私の必死の努力を返してー!!
乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。
気付けば物語が始まる学園への入学式の日。
私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!!
私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ!
所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。
でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!!
攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢!
必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!!
やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!!
必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。
※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。
※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~
白金ひよこ
恋愛
熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!
しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!
物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?
婚約破棄されたので王子様を憎むけど息子が可愛すぎて何がいけない?
tartan321
恋愛
「君との婚約を破棄する!!!!」
「ええ、どうぞ。そのかわり、私の大切な子供は引き取りますので……」
子供を溺愛する母親令嬢の物語です。明日に完結します。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる