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ずれてる2

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これが小説にあったワンシーンなら、ここにアレックスを連れてきたのはミネルバだ。確かめよう。

「ミネルバ、あなたでしょう?殿下をここに連れてきたのは。一体、何がしたかったのかしら?」
「フェルト様が護衛を沢山連れているのを見て、何か大変な事が起こるかもしれないと心配で。いてもたってもいられず、アレックス様に伝えたのです。」
「心配ねぇ…。」

やっぱり、この流れは小説のシーンと一致する。

「護衛を連れて来ていると聞いて俺達は心配して来たというのに、その態度は何なんだ。」
「心配している者の第一声が『何をした?』とは、辻褄があわないように思いますが。『何かあったのか?』であればまだしも。」

明らかに私が何かをしたような言い方をしておいて心配って…。

「もしかして、そのミネルバという女から聞いたのですか?『フェルト様が何か問題を起こしてる』…と。」
「問題を起こしているのは間違いなかっただろう。」
「どうしてわたくしが原因だと言いきれるのですか?」
「何だと?」
「あの男達は違法な金利で金を貸す、高利貸しよ。このお店のマスターは必要な額を返済したのに、さらに取り立てに来たわ。」
「そのマスターが金を借りたのだから、返すのは当たり前だ。返せないなら借りなければ良いだけの事。」

う~ん、この出来損ないは、私の言葉が理解できなかったのかな。
『違法な金利』と言ったのに、王子が法を破った人間の味方をするなんて。

わたくしが立て替えようと思って来たのです。ですが、相手が手荒な事をしないとは言い切れないので、身の安全を考慮して護衛を連れて来たのです。そして案の定、あの者は私を侮辱した上に傷をつけた。」

私は前髪を上げて、額の傷を見せた。

「この傷をあの者達がつけたのだとお父様に言ったのです。そして今日護衛達は悪党を捕まえた。わたくしが本当の事をお父様に伝えていたら、今頃捕まっていたのは、別人だったかもしれませんわね。」

小説のシーンがこれと同じ状況だったとしたなら、これは非常事態だ。

どこかで何かがずれてる気がする。
だって、小説とこのシーンが同じなのであれば、キルテがいるのはおかしい。


私がこうしてアレックスと口論している時、小説通りなら学校に魔物が出る。それをキルテが退治する。そういう筋書きのはず。

なのに、そのキルテがここにいてどうするの。
私の勘違いで、この場面は小説とは関係ない…?

「アレクっ!学校に魔物がっ!」

そう叫びながら、昨日剣術の稽古をしていた栗色の髪の男が馬で駆けてきた。

「早く何とかしないと、怪我人が出てるぞ!」

怪我人って、本来ならキルテがいるから死傷者はいないはずなのに。

「そこの栗色の髪の人、その馬をキルテ様へ渡して。」
「シュナ!勝手な事を言うな!」
「そうです!キルテ様に何かあったらどうするんですかっ!フェルト様の命令じゃ、逆らえないじゃないですか!」

アレックス、ミネルバ…、この2人本当に邪魔だわ。

「キルテ様1人で殺せる魔物だし、のらりくらりと全員で行く必要なんてないわ。彼はこの国で1番剣術の腕を持っているの。」

この魔物の事件を経て、キルテは更に出世する事になるのに、こんな所にいたら小説の流れにも影響が出てしまう。

「早く行ってっ!!」
「畏まりました。失礼致します!」

私の言葉に頷いて、キルテは学校へ向かった。

「キルテだけで敵うはずないだろう!」
「だったら、すぐに後を追うべきではないでしょうか?けれど、王太子である貴方と護衛のスクリューは学校へは戻れないでしょう。となると、キルテしかいないわよね。」


…意味がわからない。

まわりが小説と違う行動をとる場合もあるなんて考えなかった。

まわりが…というか、異常な行動をしているのはキルテだよね。

あの人が私にやたらと話しかけてくる事が、1番違和感がある。

もしかして、あの人も小説の中の人でない…とか?

色々ありすぎて解らないけど、キルテがいれば魔物は問題ないし、今は落ち着いてお茶を飲みながら考えよう。
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