転生してスローライフ？そんなもの絶対にしたくありません！

高利貸し

やっと待ちに待った放課後！

この世界で放課後って言葉が使われているかはしらないけどね。

「シュナ様、こちらです。」

ネロが門の前で、私に手を振っている。

「ネロ、今から行きたい所があるの。」
「お買い物ですか？」
「いいえ、そこの喫茶店よ。」
「きっさてん…」

この辺にあるお店をシュナが利用した事は無さそうだよね。高級なお店しか行かないなら、あのレトロな純喫茶の良さがわかるとは思わないし。

学校の隣に大きな建物がある。
あれが寮だとすれば、生徒達の心を射止めれば喫茶店の集客率はかなり上がる。
美味しいお菓子があるお店だと広まれば、必ずお客は増える。

マスターに『店を閉めよう』なんて思わせないようにするには、客が来なくては始まらない。
混雑するのは嫌だけど、シュナ専用テーブルを用意して、カーテンでもつけて隔離すればいいよね。

私の憩いの場をキープするためなら、売上がマイナスでも構わない。それくらい補填すれば良い。マスターのモチベーションさえ下がらなければ、それで良いわ。


「ネロ、この近辺で空き家を探してくれる？」
「すぐに手配しますが、何にご利用ですか？それに応じて部屋数なども変わりますので。」

大きさ…
ここに連れてくるパティシエに家族がいるとしたら、一緒に暮らしたいかもしれないよね。家探しはパティシエを決めてからにした方がいいかな。

喫茶店に入ると、ガラの悪いお客が２人いた。

「マスター、今朝はご免なさい。お支払に来たわ。」

「姉ちゃん、このジジィの知り合いか？」
「ええ。」
「じゃあ説得してくれねぇか。早く店を出ていけってな。」
「それはどういう事かしら？」
「このジジィが借金を返さねぇから、困ってだよ。」
「関係ないお嬢さんを巻き込むんじゃない！それに、借りた分は返した！」

男２人に強く言い返すと、私に話しかけていた男の子分っぽい男がマスターを突き飛ばした。

「利息を返して貰ってねぇんだよっ。」

「マスター！大丈夫ですか!?」
「ああ、お嬢さんは危ないから早く帰りなさい。」
「……」

この男達は、日本でいうと闇金の取立てってやつかな。高利貸しってやつ。
違法なのに、何を堂々と…。

「その借金はおいくらなのかしら？」
「は？姉ちゃんが払ってくれるってのか？」
「ええ、全額ね。で、証文は？」
「証文？」
「金貸しでしょ？それがないなら返す義務もないし、取り立てる権利もないわ。」
「今日は持ってきてねぇだけだ。」

もしマスターがお金を持っていたら、証文を渡さずお金だけ奪おうとしてたって事だよね。

自分も裕福ではないのに私の無銭飲食を笑顔で許してくれた心優しいマスター。それを追い詰める闇金は許すまじ。

私の気分を害するものは、問答無用で排除する。何もかも思い通りにしてこそ悪役令嬢シュナ・フェルトだからね。