伯爵代理なんてやりたくないので、私を捨てた夫を見つけてください。

シンさん

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二人きり

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「……」
「……」

 王子と話をしてから執務室へ戻ってお仕事。それだけでも苦痛なのに、何なの、この部屋の雰囲気は……。空気が重い!

「リアム様、眉間にシワが出来ていますが、何かありましたか?」
「いいえ」
「そうですか」

 絶対に何かあったよね。
 私がハリーを追い出すのに協力するって言ったの、筒抜けなのかもね。それなら、怒ってる理由も解るし……。

「疲れているようですし、今日はこれくらいにしましょう。明日の視察に支障をきたすとよくありませんから」
「いえ、問題ありません」

 貴方に無くても、私にはあるの。この空気の中にいるのは限界なのよ。

「リアム様、私の事が嫌いでも構いませんが、顔に出さないでください」
「嫌いではありません」
「では、何故そんなに不機嫌なのですか?私といる時、殆ど喋らないし無表情ですよね」
「そうてしょうか…。貴女の前ではよく喋るし、笑ってる方だと思いますが」

 もしかして、自覚がないの?
 普段はこれ以上に無表情で口数が少ないって事?

「食事中、私と話をする事もないのにですか?」
「困りませんか?食べている時に話しかけられると」

 困る?一体どんな会話をするつもりなのかしら。

「母は食事中に父に話しかけられて、いつも辛そうだったので……。まぁ、母は父に萎縮して、食事も殆ど食べていませんでしたが」

 両親はあまり仲が良く無かったのね。
 何だかとても辛そうな顔をしているし、これ以上聞くのは止めた方がよさそうだわ。

「そうですか。では、無理をしないで今まで通りに…」
「いいえ、話しかけても構わないようなら、話します」
「……はい」

 リアムって、私が嫌いという訳でもないのかしら。ハリーと仕事以外の事なら、意外と素直に答えてくれるし。

「クレア……義姉さん」
「はい」

 何故か解らないけど、リアムがとても真剣な顔をしている。

「……2人きりの時は『クレア』と、そう呼んでもいいですか?」

 ……真剣な顔をして何を言うかと思えば、それだけ?

「クレアでもマロンでも、好きに呼んで下さい」
「いいんですか?」
「ええ。2人きりの時であれば、咎める人もいませんし、変な噂も立てられないと思いますから」
「変な噂?」
「リアム様と私が、夫のいない間に男女の仲になっている…とか言われると、リアム様の結婚に支障をきたす可能性もありますから」

 リアムには出来るだけ早く結婚してもらいたいし、こんな噂は絶対に駄目!
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