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食えないやつ

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 15時、ライリー王子と楽しいお茶会中……
 リアムが同席すると思っていたのに、部屋には王子と私とスフィーだけ。

「マロンちゃん、お仕事はどう?」
「全くはかどりません。栗頭の無能なわたくしに、何が出来ると言うのでしょう?」
「栗って中身つまってるから、頭がいいでしょ?」

 皮肉に嫌味で返してくるとは、さすがね。リアムは直球過ぎるし、この王子は変化球過ぎるわ。

「伯爵代理の期限は決めて頂けましたか?」
「リアムが結婚するまで…って話だけど、もう遅いかな?」
「どういう意味でしょうか?」
「狩りで負けたら、マロンちゃんは結婚するでしょ」

 勝負の話は昨日決まったばかりなのに、何で伝わっているの。

「そうです。リアム様の希望するお相手と結婚します」
「じゃ、相手はリアムだよ」
「ふふ、リアム様の希望する方と結婚するのであって、リアム様と結婚ではありませんわ」
「だから、リアムでしょ」

 違うと言ってるのに、何故納得しないの。

「リアム様に『伯爵家の恥』と言われているわたくしが、妻になる事など絶対にございません」
「……じゃあ、こうしよう。俺が狩猟大会で優勝したら、リアムと結婚」

 そんなの、私が不利になるだけじゃない。

「この勝負を受けなかったら、損をするのはマロンちゃんだよ」
「何故ですか?」
「絶対に俺が優勝するから。そうなった時、マロンちゃんはハリーと離婚出来ない。リアムが結婚するまで代理は続く」
「もともと、その条件だったので、文句はございません」
「最悪なのは、リアムが結婚する前に、ハリーが帰ってきた時だよね」
「……」

 病が治って帰ってきたハリーに対して『最悪』なんて、おかしくない?
 この人、ハリーが駆け落ちした事、知ってるんだわ。

 王子の予想では、ハリーは帰ってくるって事?それなら私は伯爵代理ではなくなるし、問題ないよね。

「マロンちゃんはさ、ハリーが帰ってきたら伯爵代理をしなくていいし、楽になると思ってるかもしれないけど、そんな簡単じゃないよ」
「どうしてですか?」
「正直に言うと、ハリーなんていなくても、伯爵家の仕事は滞りなく進むんだよね。あの男は、殆どリアムに仕事を押し付けてたから。やってた事は、社交界で酒を煽って女と楽しむだけ。子供だっているよ」
「……子供?」
「そんな男が帰って来て、仕事をすると思う?面倒が増えるだけじゃない?」

 王子の言う事が本当なら、ハリーが帰って来ると私はこの家に縛られる。今までリアムがやっていた仕事を、私に押し付けるよね。

「これから先、ハリーのいいように使われたままでいいの?マロンちゃんの人生は、マロンちゃんの物なのに」

 そんなの、冗談じゃないわ……。
 何で私を捨てた男の為に、働かないといかないのよ。本当にハリーに子供がいた場合、リアムに爵位を継がせて逃げる事は出来なくなる。

 本当に好きにな人と駆け落ちしたわけじゃなく、ハリーは結婚で縛られるのが嫌だったから逃げた。それはいい。
 けれど、その皺寄せが私に来るなんて、絶対に嫌よ。
 働かざる者食うべからず。
 好き放題して女と遊び呆けてる男に、権力も金もいらないでしょ。

「あの男を見つけ出して、伯爵家から追放しようよ」

 追放……。ハリーが全ての元凶なのだから、それくらいはしてもいいわよね。

「もちろん、協力いたします」
「それは嬉しいよ」

 これで狩猟大会に優勝すれば、私は2ヶ月で伯爵家とは縁が切れるし、最高だわ。

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