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鷹狩2

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「もしよかったら、2ヶ月後に王家主催の狩猟大会に出場してみませんか?それは鷹狩りではないので、楽しめると思いますよ」
「男性が出場するものでしょう?」
「女性の出場も許可されていますよ。地元の大会には毎年出場していましたよね?」
「ええ、無理矢理にね」
「もしかして、狩りは嫌いですか?」
「いいえ、好きよ」

 私を大会に出場させてた理由が、気に食わないだけ。
『流れ弾に当たって死ねばいいのに』って、父が大会出場者に言ってたのを聞いてしまったのよね。暗に『私を殺せ』と命令してたのよ。だから私は、誰にも追って来れないような山奥に入って、狩りをするようになった。

「リアム様は出場するの?」
「はい、ライリー王子に命令されるので」

 私とリアムが話していると、鷹匠のおじさんが教えてくれた。

「ライリー王子はこの国1番の狩りの名手で、それに肩を並べるのがハンストン様なのです」
「それは凄いわね」

 ライリーはリアムがいないと張り合いがない。それくらい2人は回りと差があるって事だよね。
 けど、私も狩りには結構自信はあるのよね。――これは使えるかもしれない。

「リアム様、私と勝負しませんか?」
「勝負?」
「狩猟大会で私が1位になったら、ハリーに会わせてください」
「それは出来ません」
「病がうつるからですか?」
「そうです」

 その嘘には、しっかり騙されてあげるわよ。
 別に、ハリーに会いたくてもちかけた勝負じゃない。これは、伯爵代理の期限が決まらなかった時のための保険だもの。

「わかりました。では、私が勝ったらハリーと離婚させてください」
「は……?」
「ハリーに会えないまま、伯爵家で1人寂しく仕事だけをして生きていくなんて耐えられません。離婚してくれないのであれば、私は今すぐ家を出て、修道女になります」
「……」

 すぐに『駄目です』って言われると思ったのに、リアムからは返事がない。

「……兄が好きなんですか?」
「ええ。だから会わせてと言ってるのよ」
「ですが、離婚したら兄には二度と会えませんよ」
「病の間、ハリーに会えないのだから、いっそ離婚した方が諦めがつきます。財産も、何も要求しません」
「女性が1人で生きていけるはずがないでしょう」
「それはリアム様が気にする事ではありません。答えはこの勝負を受けるか否かです」
「……解りました。その勝負、受けます」
「ありがとうございます」

 この勝負に勝てば、私は確実に伯爵邸から逃げられるわ。

「受けますが、こちらも条件を課します」
「何でしょう?」

 どうせ、『二度とハリーに会いたいと言うな』とか『真面目に働け』だよね。

「私が優勝したら、結婚してください」

 ……聞き間違いかしら。今『結婚』って聞こえたのだけど。

「リアム様も冗談が言えるのですね」
「冗談ではありません」

 冗談であるべきでしょ……。

「重婚は重罪です。私は捕まりたくありません」
「もちろん、兄と離婚して貰います」
「……」

 何を言ってるの、この人……。

「私が優勝してハリーと離婚。それを止める為に勝負を受けるのですよね?」
「はい」
「リアム様が優勝して、私が誰かと結婚した場合でも、ハリーと離婚するのは変わらないと思いますが……」

 勝負をする意味がなくなるよね?

「私の条件は『クレアの結婚』です」

 もしかして、リアムは私を追い出したいのかしら。でも、理由があって追い出せない。私がハリーのいない間に別の男と浮気をして、離婚させられて再婚…って事にしたいのかも。伯爵家には出来るだけ汚名を着せないためにね。

「もし負けた場合、私の次の結婚相手は誰になるのですか?」
「……え?……今ので解りませんか?」
「相手のお名前、言いましたか?」
「言ってませんが……」

 ボソボソ言いながら、リアムが少し悄気しょげてるように見えるのは気のせいかしら。
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