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 リアムとライリーが出ていってすぐ、私の部屋に女が2人入ってきた。

 1人は私より年上、黒髪を1つに束ねた茶色い瞳の長身の女性。20代前半くらい。着ている服は、どう見ても軍服……。もう1人はまだ10才くらいの女の子。髪の色は違うけど、瞳の色はライリー様とよく似た碧色。

「貴女達は、ライリー様のご友人かしら?今、義弟と大切なお話をしてるようだから、終わったらお伝えしておきます。別室でお待ち下さい」
「私達はクレア様の侍女として、この邸に参りました」
「侍女?」
「はい」
「貴女は、兵士ではないのですか?」
「今日付けで、伯爵代理の侍従となります」

 そんなの聞いてないわよ……。

「そちらの女の子は……違いますよね?」
「彼女もです」
「ライリー王子からの命令ですか?」
「はい」
「そう……」

 これって、断っても良い領分なの?
 王子からの命令でも、正式なものでなければ断ってもいいの?……判断できない。

「先ほどライリー様は何も仰らなかったので、少しお話を伺います。返事はそれからでないと……」
「ライリー王子からは『マロンちゃんの伯爵代理の期間を出来るだけ短くする為に協力したい』と言付かっております」

 ライリー様は陛下との話し合いでも伯爵代理の期限を決めようとしてくれてたし、信じても損はないかもしれない。

「解りました。頼りない代理だから迷惑をかけると思うけど、これからよろしくね。2人の名前を教えてくれる?」
「私はイエナ・キャドルと申します。もう1人は、スフィー・カーセル。至らぬ点もあるかとは思いますが、精一杯仕えさせて頂きます」
「……」

女の子の方はさっきから何も話さないけど、無理矢理連れて来られたのかしら。

「年齢はいくつ?無理してここにいる事はないのよ?」

 視線が合うように屈んで言ったけれど、プイっとそっぽを向いてしまった。

 人見知りなら、侍女は向いていないよね。というか、普通は私より年上をつけると思うんだけど。

「イエナ、少しいい?」

 私はイエナを部屋の角へ連れて行った。



「ねぇ、スフィーは何才なの?」
「13才です」
「そう」

 私より身長は15㎝くらい低いからもう少し年下かと思った。どちらにしろ、侍女で13才は驚きだけど。

「イエナは軍人でしょう?」
「はい」
「スフィーは?」
「行儀見習いで城に奉公している、男爵家の娘です」

 軍人と行儀見習いを伯爵代理の侍女にするなんて、あの王子は何を考えてるの。代理の期限の件では助けて貰うけど、それ以外はあまり関わらない方がいいかも。

「クレア様、こちらが明日からの予定になります」

 イエナが胸ポケットから丸めた紙をとりだして、広げて私に見せた。

 嘘でしょ。朝6時起床から始まって、夕食迄の予定がビッシリ詰まってるなんて……。
 仕事はいいわ。期限までは無理矢理にでも働かされるんだから。
 けどね……
 何で、『リアムと二人きりのお茶』とかいう、無駄な時間が入っているの?食事も仕事もリアムと一緒なのに、休憩時間くらい一人でいさせて欲しいわ。

「この予定表は誰が作ったの?」

 リアムだったら、即抗議よ!

「ライリー様です。」

 またしても、王子命令……。

 私はどこまでなら断ってもいいの?王子の言う事には逆らっちゃ駄目なの?そんな事すら解らない私に、伯爵代理なんて無理な気がする。

「今日は1日お休みですので、昼から狩りに出掛けませんか?」
「……この辺に狩場なんてあるの?」
「はい。鷹狩りの経験は?」
「無いわ。けど、やってみたい!!」
「では、まず昼食を済ませてください」

 昼食、リアムと一緒に……だよね。

「リアム様と一緒に食事をとるのは、苦痛ですか?」
「私だけでなく、お互いにそう思ってるはずよ」
「何故そう思うのですか?」
「リアム様は『伯爵家の仕来たり』に従ってるだけで、私と食事をとりたいなんて微塵も思っていないのが伝わってくるわ。貴方達も、見ていればそう感じるわよ」

 ハリーが好きな人と幸せになる為に、私が結婚相手として選ばれただけ。たとえリアムが兄の為に納得したのだとしても、好意的に接する必要はないもの。

 私だって、利用されてるのを知った上で、仲良くするほど出来た人間じゃないしね。
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