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兄嫁
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「リアム、もっとマロンちゃんに優しくしないと駄目だよ」
ライリーは俺の部屋のソファーで、靴を脱いで寝転がりながら言った。
「別に厳しくしていない」
「えー、絶対嘘だ」
「何故言い切れる」
「リアムって仕事以外はポンコツだから。よかれと思って行動しても、全部裏目に出るタイプ」
そんな事はない……と言いたいが、知らない間に人を怒らせる事が多いのは確かだ。
「今日、マロンちゃんが邸から脱走したのは、リアムが問題?それともハリー?」
「何故クレアの脱走を知ってるんだ?」
「俺、実は見張ってたんだよね。脱走するんじゃないかって予想してたんだ。当たるとは思ってなかったけど」
「本人は散歩だと言っていた」
「ハハハッ、まさかそんなの信じてるの?」
「……」
「マロンちゃんは、ハリーが女と逃げたの知ってるよ。リアムに少し怒られたくらいで、逃げるような子じゃなさそうだし」
「駆け落ちしたなんて、知りようがない」
「マロンちゃんは鹿狩りの名手ってのは知ってるよね。俺の集めた情報だと、視力は並大抵じゃないらしい。窓から見えてたっておかしくない」
そうなのだとしたら、傷付いているだろうか。『好きで結婚したのか』と聞いてもはぐらかされたし、俺には判断できない。
「リアム、これはチャンスだ。リアムが大好きなマロンちゃんと結婚するチャンス」
「は?」
「ハリーがどこでどうなろうが、どうでもいい。王家としてはリアムに伯爵家を継いで欲しかったけど、それが出来なくて困ってたんだ。だから、ハリーが消えて好都合なわけ」
そう言って、ライリーが体を起こした。
「あの男、3ヶ月もすれば帰ってくると思うよ」
「好きな人と暮らせるのに、わざわざこんな堅苦しい所へ帰ってくるはずがない」
「それは、リアムみたいに真面目で一途な男の考え方。仕事を弟に任せて遊び回ってた男が、貧乏な暮らしに耐えられるはずがない。結局、ヘラヘラ笑って帰って来る。そうなると、マロンちゃんはハリーの物になっちゃうね」
「クレアは兄の妻だ。もとに戻る、ただそれだけだ」
「俺なら、邪魔物がいない間に何とかするけどね。ハリーを死んだ事にすれば、死別で離縁届けを出せる。その後、マロンちゃんとリアムが結婚すればいい。死別の場合、財産や後継ぎでもめない為に、夫の血縁者と結婚する事は多々ある事だし、全然問題なし」
「彼女の気持ちの問題だ」
「そんな事ばっかり言ってるから、ハリーみたいなのにとられたんでしょ。リアムの気持ちを知ってたのにさ」
「兄の結婚に、俺の事は関係ない」
「そんなだから、いいように使われるんだよ。ハリーは昔から、頭の良いリアムに嫉妬してた。だから、リアムの欲しいものを奪って嫌がらせしてた。今回もそう」
ライリーが呆れている。
「リアム、ハリーを消そう」
何を言ってるんだ、この王子は……。
「真面目な顔で、物騒な事を言うな」
「消すって言っても、殺すって事じゃないよ。ハンストン家の家系図上から名を抹消するだけ」
そんな事をすれば、兄はハンストン家に帰って来れなくなる。性格は良いとは言えないが、それでも血の繋がった兄弟だ。そんな事はしたくない。
「死別で離婚だの再婚だの、俺は望んでない。だから、放っておいてくれ」
「ハリーの妻で居る事が、マロンちゃんにとって幸せだと思う?俺はそうは思わないけど」
「決めるのはクレアだ」
「はぁ…。そんなリアムには、俺の可愛いマロンちゃんを任せられない。任せられないよ」
俺の可愛いマロンちゃんて、この男はクレアの何なんだ……。今日初めて会ったばかりのくせに。
「何も出来ないリアムの代わりに、俺が動くしかないね」
「何もしなくていい」
「友の幸せを願う俺の気持ちが解らないなんて……」
「面白がってるだけだろ」
俺が言うと、ライリーは何も言わず満面の笑みで返してきた。
「とりあえず、マロンちゃんがこの邸から逃げ出さない為に、侍女は総取っ替えね」
「勝手に決めるな」
「王子様命令だよ。俺が何人か厳選して連れてきてるから、よろしく」
「は?連れてきてるって、俺は許可してない」
「伯爵代理に許可を貰えれば問題なし。んじゃ、言いたい事は言えたし、俺は帰るよ。これでも忙しいからね。見送りはいいよ、じゃね」
胡散臭い笑顔を振り撒いて、ライリーは邸から出ていった。
ライリーは俺の部屋のソファーで、靴を脱いで寝転がりながら言った。
「別に厳しくしていない」
「えー、絶対嘘だ」
「何故言い切れる」
「リアムって仕事以外はポンコツだから。よかれと思って行動しても、全部裏目に出るタイプ」
そんな事はない……と言いたいが、知らない間に人を怒らせる事が多いのは確かだ。
「今日、マロンちゃんが邸から脱走したのは、リアムが問題?それともハリー?」
「何故クレアの脱走を知ってるんだ?」
「俺、実は見張ってたんだよね。脱走するんじゃないかって予想してたんだ。当たるとは思ってなかったけど」
「本人は散歩だと言っていた」
「ハハハッ、まさかそんなの信じてるの?」
「……」
「マロンちゃんは、ハリーが女と逃げたの知ってるよ。リアムに少し怒られたくらいで、逃げるような子じゃなさそうだし」
「駆け落ちしたなんて、知りようがない」
「マロンちゃんは鹿狩りの名手ってのは知ってるよね。俺の集めた情報だと、視力は並大抵じゃないらしい。窓から見えてたっておかしくない」
そうなのだとしたら、傷付いているだろうか。『好きで結婚したのか』と聞いてもはぐらかされたし、俺には判断できない。
「リアム、これはチャンスだ。リアムが大好きなマロンちゃんと結婚するチャンス」
「は?」
「ハリーがどこでどうなろうが、どうでもいい。王家としてはリアムに伯爵家を継いで欲しかったけど、それが出来なくて困ってたんだ。だから、ハリーが消えて好都合なわけ」
そう言って、ライリーが体を起こした。
「あの男、3ヶ月もすれば帰ってくると思うよ」
「好きな人と暮らせるのに、わざわざこんな堅苦しい所へ帰ってくるはずがない」
「それは、リアムみたいに真面目で一途な男の考え方。仕事を弟に任せて遊び回ってた男が、貧乏な暮らしに耐えられるはずがない。結局、ヘラヘラ笑って帰って来る。そうなると、マロンちゃんはハリーの物になっちゃうね」
「クレアは兄の妻だ。もとに戻る、ただそれだけだ」
「俺なら、邪魔物がいない間に何とかするけどね。ハリーを死んだ事にすれば、死別で離縁届けを出せる。その後、マロンちゃんとリアムが結婚すればいい。死別の場合、財産や後継ぎでもめない為に、夫の血縁者と結婚する事は多々ある事だし、全然問題なし」
「彼女の気持ちの問題だ」
「そんな事ばっかり言ってるから、ハリーみたいなのにとられたんでしょ。リアムの気持ちを知ってたのにさ」
「兄の結婚に、俺の事は関係ない」
「そんなだから、いいように使われるんだよ。ハリーは昔から、頭の良いリアムに嫉妬してた。だから、リアムの欲しいものを奪って嫌がらせしてた。今回もそう」
ライリーが呆れている。
「リアム、ハリーを消そう」
何を言ってるんだ、この王子は……。
「真面目な顔で、物騒な事を言うな」
「消すって言っても、殺すって事じゃないよ。ハンストン家の家系図上から名を抹消するだけ」
そんな事をすれば、兄はハンストン家に帰って来れなくなる。性格は良いとは言えないが、それでも血の繋がった兄弟だ。そんな事はしたくない。
「死別で離婚だの再婚だの、俺は望んでない。だから、放っておいてくれ」
「ハリーの妻で居る事が、マロンちゃんにとって幸せだと思う?俺はそうは思わないけど」
「決めるのはクレアだ」
「はぁ…。そんなリアムには、俺の可愛いマロンちゃんを任せられない。任せられないよ」
俺の可愛いマロンちゃんて、この男はクレアの何なんだ……。今日初めて会ったばかりのくせに。
「何も出来ないリアムの代わりに、俺が動くしかないね」
「何もしなくていい」
「友の幸せを願う俺の気持ちが解らないなんて……」
「面白がってるだけだろ」
俺が言うと、ライリーは何も言わず満面の笑みで返してきた。
「とりあえず、マロンちゃんがこの邸から逃げ出さない為に、侍女は総取っ替えね」
「勝手に決めるな」
「王子様命令だよ。俺が何人か厳選して連れてきてるから、よろしく」
「は?連れてきてるって、俺は許可してない」
「伯爵代理に許可を貰えれば問題なし。んじゃ、言いたい事は言えたし、俺は帰るよ。これでも忙しいからね。見送りはいいよ、じゃね」
胡散臭い笑顔を振り撒いて、ライリーは邸から出ていった。
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